「月並みな言い方ですが……」「月並みな感想しか思い浮かばない……」など、ありふれていることや平凡なことを指す表現に「月並み」というものがあります。

みなさんも普段何気なく使っているのではないかと思われるこの表現ですが、なぜ「月並み」なのか、ご存じですか?

調べてみると、以外にも日本文化との深いつながりが見えてきました。
また、この記事では、他にも「月」にまつわる慣用句などもご紹介します。

■「月並み」という表現の由来は?

「月並み」という言葉は、もともとは「毎月の恒例」「毎月」「月ごと」「毎月決まって行うこと」などを表すものでした。そこから俳句や和歌などを毎月詠む会のことを「月並みの会」「月並俳諧」と呼んでいました。

ちなみに、「月並み」は月次、月浪と書くこともあります。

■「月並み」が現代の意味になったのは正岡子規がきっかけ

では、「月並み」の意味がもともとのものから現代のものになったのは、どのような経緯があったのでしょうか?

先述のとおり、「月並み」は「毎月の恒例」という意味。俳諧においては「月並句合(つきなみくあわせ)」という興行が江戸時代の文化年間(1804~1818年)から明治中期まで続きました。

しかし、明治中期に俳人・歌人の正岡子規が月並句合で作られるような機知や風流振りを特徴とする旧態の俳句をありきたりだとして、「月並調」と呼んで批判しました。

「月並みな言い方ですが……」は、なぜ”月並み”なのか?月にま...の画像はこちら >>


正岡子規

現代の意味で使われるようになったのは、この正岡子規の用法がきっかけだったのです。

■まだまだある「月」にまつわる慣用句

みなさんは、「いつも月夜に米の飯」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか?こちらは、「苦労のない気楽な生活」のことを指し、またそれが「理想ではあるけれど、現実はなかなかそういかないこと」も指しています。

これは、昔の人は電気がなく、月夜の明かりが貴重な存在であり、庶民にとって白いごはんも限られた時に食べる貴重なものだったため、それが毎晩続けば申し分ないとされていたことに由来します。

また、「月夜に提灯夏火鉢(なつひばち)」という慣用句もあります。これは、月夜で明るいときに提灯を灯しても役に立たないどころか邪魔になる、ということから「無駄なこと」「役に立たたないこと」のたとえです。


ちなみに、「月夜に提灯も外聞(がいぶん)」という表現もあり、こちらは「無駄とわかっていても、外聞(世間体)のためにはやらなければならないことがある」という意味になります。これは、昔の商家では繁盛していることを人々に見せるために、わざと明るい夜でも提灯を灯していたことに由来します。

いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。

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