「なんか学校で『庶民に名字なんてなかったから、明治時代にテキトーに作った』みたいなことを聞いたけど?」
田んぼの中に住んでいるから「田中」、山の中に田んぼがあったから「山田」とか……
「江戸時代は、武士以外に名字なんてなかったんでしょ?」「どうせウチなんて、大した家柄じゃないから農民だったに決まってるよ」
今まで、そんなリアクションに数多く接して来ましたが、決してそんな事はありません。
渓斎英泉「木曽街道 上尾宿」
■名字=ファミリーネーム
まず、江戸時代だって、みんな名字を持っていました。
それじゃあ授業で習った武士の特権「苗字帯刀」と言うのは……という疑問が出てきますが、それはあくまでもフォーマルな場での話。例えば、公式文書に記載したり、公の場で名乗ったりするのは許されなくても、みんな名字を持っていて、必要な場面では使って(呼んで)いました。
名字はファミリーネームなので、どんな身分であろうと「どこの家の人か」くらいは判らないと困るからです。
■名字=苗地=名地
あるいは「屋号」といって、地名なんかで呼ぶこともありました。現代でも「東京の伯父さん」みたいに、人に地名をくっつけて呼ぶことがあるように、昔はそれが名字の機能を持っていました。
名字とは「苗地」つまり苗を植える田畑であり、あるいは「名地」つまり自分の名前となる土地が語源となっています(諸説あります)。
人間は誰でもどこかで生まれ、どこかで育ち、死ぬまでどこかで生き続けます。その住む場所が「家」となり、その土地を代々受け継いでいく営みの象徴として家名があり、それが現代の名字になっています。
身分は色々あるけれど、親から生まれていない人は一人もいません。父母にはそれぞれ祖父母がいて、祖父母にはそれぞれ曾祖父母がいて……その無数のつながりこそ、今あなたが名乗っている名字なんです。
あなたの名字は何ですか?どんな由来があるか、知っていますか?
ありふれた名字だから大した事ない……なんて決めつけないで、興味を持ってみると、実はスゴい人につながっているかも知れません。
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