健康経営優良法人の認定を目指す企業経営者にヒントを――。そんな思いのもと、連載中の「健康経営のススメ!」。

これまでに認定を受けた企業や、積極的に健康経営を推進している企業の先進事例のほか、コロナ禍で社会的課題となった従業員のストレス対策として、産業医のアドバイスを有効活用する企業の事例など、できるだけ具体的なノウハウに焦点を当ててきた。

第21回は、1969年創業以来、一貫して大切な荷物を安心・安全に目的地まで届けることに注力し、単なる運送だけでなく、お客様から信頼を得るサービスを提供できるよう努める東京都足立区の株式会社藤倉運輸。

従業員は26人。経済産業省の健康経営優良法人2022、2023に連続認定されている。代表取締役社長の藤倉泰徳(ふじくら・やすのり)さんに話を聞いた。

より高い価値の物流サービスを提供し続けていきたい

――健康経営に取り組んだきっかけを教えてください。

藤倉社長 背景として、もともと全日本トラック協会の「Gマーク」等に加え、採用環境が厳しい中で、若い方が安心して応募してきてくれるように、自動車運送事業者の「働きやすい職場認定制度」などにも取り組んでいました。
その後、コンサルを導入した際に、健康経営について紹介されました。これをきっかけに、従業員の平均年齢が上がっていく中で、独身の方や高齢ドライバーがいることもあり、事故防止等の安全面からも、社員の健康に着目することの必要性を感じ、取り組みをスタートしました。
当初は、東京都の銀の認定の取得に際し、エビデンスの準備等も苦労がありました。ところが、運送業界の実情をよく理解しているコンサル会社のサポートもあり、無理のないところからチャレンジすることで無事に認定となりました。

――主に、どのような取り組みをされているのでしょうか。

藤倉社長 健康診断はもともと100%の受診率でしたが、再検査に関しても、シフトの調整等を行い受診しやすい環境を整え、実際に再検査に行くまで声掛けを行いました。
運動機会の増進に向けた取り組みとして、生活習慣病の予防・改善や、体力低下による労災事故の防止等を目的に、定期的な体力チェックの実施や、事務所内にトレーニングスペースと運動器具の設置、オンラインウォーキングイベントの参加、登山ツアーの開催、ゴルフ同好会への支援――などを通じて、従業員の運動機会増進に取り組んでいます。
食生活の改善に向けた取り組みとして、ウォーターサーバーの設置や、食生活を見直す動機づけとして、ベジタブルチェックの定期的な実施、栄養士による講習会等実施しています。

――健康起因事故の防止にも取り組まれていますね。

藤倉社長 定期健診等と並行して、脳MRIやSAS検査の定期的な実施や、GPS機能を持つスマートウォッチを、運転業務を行う全従業員に支給し、運転中の眠気や血圧・心拍数等を常時モニタリングすることで、健康起因事故の防止に取り組んでいます。

――喫煙についてはいかがでしょう。

藤倉社長 喫煙者の多い業界ではありますが、所属けんぽで実施している禁煙キャンペーン等を積極的に活用することで、禁煙のきっかけをつくり、昨年は2名の社員がチャレンジしました。

――社員のみなさんの反応はどうですか。

藤倉社長 KAGOMEの提供しているベジタブルチェックを導入したところ、食生活改善の結果がわかりやすく、簡単にすぐに数値に表れることで社員に興味をひきました。その際、グループ対抗で数値を競うかたちとしてインセンティブを設けたことで、さらに盛り上がり、グループ内の社員間のコミュニケーションの促進にもつながりました。
また、あわせて食に関する健康セミナーも実施したことで、食事の順番や内容等、食に関する意識が高まり、相乗効果が図れています。
健康診断の結果を気にする社員も増えてきており、現在では毎月のグループ会議の中でも、健康というキーワードがあがってくるようにもなっています。

――今後の展望についてお聞かせください。

藤倉社長 健康経営の最終指標を、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムを設定して、健康経営の全体のつながりを把握するため、健康経営戦略マップを作成しました。
今後も健康経営に取り組むことで、従業員が一日も長く健康・安全に過ごすことで会社と社員が共に成長し、お客様により高い価値の物流サービスをご提供し続けられるよう、鋭意努力していきたいと思います。

――ありがとうございました。

【会社概要】
株式会社藤倉運輸
代表取締役社長 藤倉泰徳さん

・本社所在地   東京都足立区
・主な事業内容  一般貨物自動車運送
・従業員数    26名
・健康経営優良法人 2022、2023連続認定
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