みなさん、こんにちは。今回は、自分に自信がなく、目標を設定したくないと言ってきた部下とどう関わるか、というテーマでお話していこうと思います。

今回は次のシチュエーションを想定して、上司としてどのような考え方をもち、部下と関わっていけばよいのか考えていきましょう。

目標設定を避けるのは、自信がないだけ?
【シチュエーション】
 入社1年目の営業部門の部下Eさんは、真面目で内気なタイプだ。ガツガツ営業をかける方ではないが、商品に対する知識は同期の誰よりも深い。
 ある日、次月の営業目標を立てる際に、Eさんは上司のAさんに、「目標達成しそうにないので、設定したくないんです...」と相談を持ちかけてきた。なぜそう思うのか確認すると、毎回頑張って高めに目標を設定しているが、ずっと未達で自信を持てなくなり苦しくなったと言う。
 そこで上司のAさんは、Eさんに対してどのように声をかけたらいいのかわからなくなり、「目標設定をするのはな...」と、目標を設定することの大事さを説明した。

 ところが、Eさんは「わかりました...」とますますシュンとしてしまった。

いかがでしたか。みなさんのまわりには、何かと理由をつけて目標設定を避けようとする部下はいますか。正直、言い訳しているように聞こえてしまったり、もう少し辛抱強く頑張って欲しいと思ったりする方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

では、みなさんに質問です。そもそも、なぜ部下は目標設定を避けようとしているのでしょうか。

自信がない。楽をしようとしている。仕事に対するモチベーションが低い。そのようなことを思われる方もいると思います。

実は、人の行動には目的があります。選択理論心理学では、人は内側にある願望を満たすために、行動を選択しているといっています。

つまり、部下が「目標設定を避ける」という行動を選択しようとするのは、何かの目的を満たすためなのです。

行動の目的を理解する

今回のシチュエーションの例でいうと、「失敗したくない」「苦しい思いをしたくない」「人と比べて自分のダメなところを見るのが嫌」などが考えられると思います。

そのような目的を満たそうとしている部下に対して、目標設定をすることの大事さを説く......これは、果たしてモチベーションにつながっていくでしょうか。「丸めこまれてしまったな」、「言葉では理解できるけど、モチベーションにはつながらない」と思う部下の方が多いのではないでしょうか。

また、仮に目標を下げて安心させたとします。しかし、下げた目標を達成した部下はすなおに喜べるでしょうか。

もともと設定していた目標を諦めたという気持ちから、「やったー!」という喜びだったり、仕事のやりがいにはつながらないのではないでしょうか。

では、部下の行動の目的を理解したうえで、上司としてどのように関わっていけばよいでしょうか。私からオススメしたいのは、部下の理想像を明確にして、一緒に目標設定をすることです。具体的な例を<自分に自信がなく、目標を設定したくないと言ってきた部下...どう関わる?【リーダーの「コミュ力」vol.5後編】>でお伝えいたします。(橋本拓也)

【プロフィール】
橋本 拓也(はしもと・たくや)
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長

2006年アチーブメント株式会社に入社。新規事業として家庭教師派遣事業を立ち上げたのち、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソン等の目的・目標達成の支援を行うパーソナルコンサルタントとして活躍。

2017年同部門の東日本エリア担当マネジャーを経て、2021年執行役員、2022年取締役に就任した。100名以上のメンバーマネジメントに携わる傍らで、『頂点への道』講座 アチーブメントテクノロジーコース・ダイナミックコースのメイン講師を担う。これまで各種研修で担当してきた受講生の数は2万名を超える。