再生可能エネルギー(再エネ)の普及を目指すエネルギー企業「Looop」が2025年7月17日、経営戦略発表会を開き、創業者・中村創一郎氏が代表取締役社長CEOに復帰すると発表した。発表会では、2028年までに、ユーザー数100万件、売上高1000億円を目指し、上場も視野に入れていると明かした。

中村創一郎氏が社長に復帰した理由

Looopは2011年4月に創業。そのきっかけは、東日本大震災の被災地に太陽光発電を設置するボランティア活動だった。被災者から「ありがとう、助かった」という声をもらった経験を通じて、「再生可能エネルギーで人と社会を支える存在になりたい」という思いで設立したと、中村氏は述べる。

人々が自由にエネルギーを使って持続的な豊かさを享受できる「エネルギーフリー社会の実現」に向け、電力小売事業「Looopでんき」を展開するほか、太陽光発電を含む再エネ発電所の開発・販売・メンテナンスを行う事業などを行っている。

中村氏は、代表取締役に復帰した経緯について説明した。中村氏は23年に退任してから約2年間、約30カ国を旅していたという。「日本はエネルギー先進国だと思っていたが、世界の現場を見てみると違った」とし、効率的に再エネを活用する世界各地の事例を紹介した。

「想像を遥かに超えて、再エネは世界で進んでおり、分散型社会に向けて動いている。そのため、『いかに再エネに取り組むのか』ではなく、『どのように再エネを軸にした社会を作るのか』を考えなければならない」

過去のエネルギーシステムに依存し続けると、日本の産業や暮らしが取り残される。こうした危機感から再エネ事業にもう一度立ち向かいたいと思ったと、中村氏。「公共インフラのあり方を変える挑戦でもあり、発電や蓄電、地域のマネジメントなど全てを暮らしの側から再設計したい」。

今後の成長戦略の「3つの柱」に注力

同社の「Looopでんき」は16年に始まった。

現在の事業規模は、電力ユーザー数が約34万件で、売上高500億円。独立系新電力会社の中では、低圧電力の供給量がトップだと説明する。28年までに、電力ユーザー数100万件、売上高1000億円を目指し、新電力全体で低圧供給量トップを目指す。

中村氏は、今後の成長戦略として3つの柱を掲げた。それは、(1)再生可能エネルギー電源開発/系統用蓄電池事業の強化(2)電力小売事業・顧客体験アップデート/スマートホーム事業への参入(3)デジタルプラットフォーム/システム基盤の強化――の3つの取り組みだ。

まず(1)について、「供給力を安定的に確保し、昼間の余剰電力を捨てずに活用するための発電と蓄電を設計・開発する体制を充実していきたい」と語る。同社では、埼玉県内で系統用蓄電所の運転を25年2月に開始。昼間の余剰太陽光を蓄電し、需要供給バランスを調整している。この形態の蓄電池を全国的に展開していく方針だ。

(2)については、「Looopでんき」がすでに導入している市場連動型料金プランの特徴を説明した。このプランは、電気料金の単価が市場価格と連動して変化する。需要が少ない昼間の安い電気を使うことで、利用者の電気代削減や社会貢献につながるという。

さらに、スマートホーム事業に参入したり、「Looopでんき」アプリを拡充したりする予定だ。

最後に(3)については、日本のエネルギーインフラを変えるために、テックに強いインフラ企業を目指すと展望を述べた。優秀なエンジニアを積極的に採用するなど、50~60人の規模で世界中の人材を採用するとしている。

「Looopでんき」の新企画「晴れ割」とは

さらに、「Looopでんき」の新しい企画で、晴れた日の電気代を割り引く「晴れ割」を実施すると発表した。

対象者は、25年6月30日時点で同電力と契約して初回請求を迎えているユーザーだ。東京電力管内が対象エリア。7月26日または27日の晴れた日に、10時から14時までのあいだに1キロワットアワーにつき7円を割引にする。

企画を担当した田中拓斗氏は、「天気が晴れると、太陽光の発電量が増えて、電気の供給量も増える。晴れた昼間の余剰電気を使うことで、財布にも環境にも優しい電気の使い方ができることに気づいてもらいたい」と話す。今後、全国展開も視野に入れながら取り組みを進めるとした。

質疑応答では、上場する時期について、「十分な時価総額がつき、資金が必要なタイミングだ」と答えた。28年の業績目標を達成した場合は、「十分なバリエーションがつくだろう」との見通しを示している。

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