【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。

連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

第18回のゲストは、陳えん(「えん」の漢字表記は、龍の下に天)さん。テーマは「中国でキャラクタービジネス 成功するために知っておきたい最新事情」だ。スペースアーカイブはこちらから。

30万フォロワー抱えても「小さいアカウント」

陳さんは、IPライセンスビジネスとアニメーションの受注制作を行う、Animore(東京都新宿区)の創始者、取締役社長、プロデューサーで、日本と中国を股にかけて活動している。

スペースではその知見をもとに、コロナ禍以前と以後の、中国マーケットの変化について語ったり、「中国で売れる日本のキャラクターには、何か共通する特徴はありますか」といった質問に答えたりした。

また、京都精華大学のマンガ学部キャラクターデザインコースで専任講師も務めているうえ、マルチクリエイターの顔も持つ。

手間暇をかけ、育てているIPには、沖縄出身クリエイターが生み出した、ゴーヤーがモチーフのクマ「ビターメロン(苦熊)」、東京在住のクリエイターが手掛ける「レモン&シュガー」がある。

中国版TikTokにおける「レモン&シュガー」アカウントのフォロワーは32万にのぼる。ただ中国は、市場の規模感もSNSフォロワー数も、とにかく何でも大きいため、陳さん曰く「30万台はまだまだ小さい部類」。イベントはもちろん、各種プロデュース手段を駆使し、最初から資本をかけて目立つことをしないと認知度を上げられない厳しさがある。さらに、継続的に新しいことを発信し続けないと「忘れられる」。

日本で人気を誇るキャラクターを、中国に持ち込めば成功するかと言えば、そうとも限らない。陳さんが例にとったのは「ゆるキャラ」。中でも、熊本県PRマスコットキャラクター「くまモン」は、中国でもファンが多い。一方で、千葉県船橋市非公式キャラクター「ふなっしー」はそれほど、はやっていないという。

作リエ終了後、山下さんは「ふなっしーが奮わない理由が意外で、非常に興味深かった」とうなっていた。詳しい話はスペースにて(32:40~)。

プロが魅力を感じる「クリエイター像」

中国でのキャラクタービジネス展開を考える日本人クリエイターにとって、ノウハウのあるプロとの出会いは光明になり得る。陳さんは、どういった作り手に注目しているのか。

山下さんが「仕事がやりやすいのは、どういう人か」尋ねた。陳さんが挙げたのは以下のような項目だ。

・本気で、キャラクターを売り出していくモチベーションがある
・コスト感覚と柔軟性があり、必要な時にはこだわりをゆずってデザイン調整できる
・〆切を守る。いきなり連絡がつかない状態にならない、など常識を守って働いてくれる
・中国をはじめ、海外に対して変な偏見を持っていない

なお、対面で会えるかを重視するようだ。

「ライセンシング ジャパン」「ライセンシング・エキスポ」といった展示会、デザインフェスタ、裏原宿エリアのギャラリーに足を運び、「これは」と感じるクリエイターや作品を探しているという。では、「コミックマーケットにも行くのか」。陳さんの答えはスペースにて(50:58~)。

最後に、作リエ恒例の「仕事をする上で最も大事にしている、クリエイティブの柱」について。

陳さん「『人間を愛すること』ですね。この仕事をするうえでの原動力は、いいクリエイターやキャラクターと出会って何かをしてあげたい、心の底から好き、という気持ちなんです」

金のため、稼ぐために働くのは限度があるのだという。

スペース終了後の陳さんに、話を聞いた。山下さんから数々の質問を受け、

「『なるほど、クリエイターさんたちはこういうことが気になるのか』と感じました。例えば、コミケに行くかどうかを聞かれて、なるほどって思いました』

と、新たな気づきを得た様子だった。

第19回作リエは、2023年4月12日実施予定。<J-CASTトレンド>