外出自粛期間が続き、すでに人々の間では“コロナ疲れ”“コロナうつ”といった言葉も広まっている。コロナ禍長期化は今後、日本にどのような影響を及ぼすのだろうか? NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は言う。
「おそらく5月の連休明け以降も、緊急事態宣言は継続されると思います。さらにハーバード大学の研究グループが指摘するように’22年まで、外出自粛要請が断続的に続くのではないでしょうか。感染をおそれて病院での診療を敬遠する方も増えています。たとえば私がチームでやっているナビタスクリニック・グループも、3月は昨年に比べて患者数が4割減です。今後は倒産する医療機関も増えていくと思います」
病院ですら倒産すると、上理事長が指摘するように、経済の専門家たちによれば、コロナ禍長期化の日本経済への打撃はかなり深刻なものになるという。
「景気ウォッチャー調査で特に影響が顕著となる順番としては、(1)旅行・交通関連、(2)百貨店、(3)飲食関連、(4)レジャー施設、となります。
また経済評論家・岩崎博充さんは、株価暴落の可能性を指摘する。
「東芝は7万6千人の従業員を対象にして、4月20日から5月6日まで国内の全拠点を休業すると発表しました。
さらにコロナ禍長期化は私たちの日常生活も直撃するという。各国で続けられている移動制限が農業従事者の移動や食料品の流通も妨げ、生産や流通にも影響を及ぼす可能性があるというのだ。4月1日には世界保健機関や世界貿易機関のトップたちが世界的な食料不足が発生する恐れがあるとも、警告している。
「国内の食料を確保するため、ロシアやカザフスタンのように、すでに輸出規制に踏み切っている国も出ています。たとえば日本は小麦の9割を輸入に頼っており、輸入元はアメリカ・カナダ・オーストラリアなどです。どの国もコロナ問題を抱えており、今後、輸出規制を採択する可能性も出てきます。するとこれらの国から思うように輸入できなくなり、日本国内での食料品の不足や値上がりも目立ってくることになるのです」
すでに日本の食料輸入量には陰りも見え始めているという。
「たとえば小麦やチーズ、それにアジやサバ、タコといった一部の水産物の輸入量が昨年の同時期に比べて、かなり減少しています。
そうしたサプライチェーンの混乱が生じているのは食料品ばかりではない。未来調達研究所取締役で調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんは衣料品について指摘する。
「日本のアパレル業界も大きな影響を受けています。ある程度の高級ブランドであれば、日本でデザインし、イタリアなどヨーロッパで高品質の布地を調達、それを人件費が安いベトナムやインドネシアなどの東南アジアで縫製するというグローバルなサプライチェーンがあるのです。それがイタリアから高品質の布地が入ってこなくなったり、さらに東南アジアでも工場が閉鎖されたりと、各地でサプライチェーンが寸断されようとしています」
1人の油断が、地域そして国内での新型コロナウイルス拡大感染を許し、ひいては国際的に悪影響を……。コロナ収束のめどがたち、緊急事態宣言が1日も早く解除されるためにも、一人一人の自覚が求められている。
「女性自身」2020年5月5日号 掲載