緊急事態宣言や休業要請が解除され、都市部では出勤時などで満員電車に戻りつつある。東京都では連日、感染者が100人超えを記録。
そして車内の密閉空間での感染リスクをさらに高めている要因として世界的に懸念されているのが、夏に欠かせない冷房。
「アメリカのテキサス州やフロリダ州では、営業が再開された飲食店でのクラスター感染が相次ぎました。それを受けてニューヨーク州のクオモ知事は6月29日、会見で『飲食店の店内営業は冷房のある密閉された屋内でウイルスが拡散し、問題になっている』と冷房使用のリスクについて危機感をあらわにしました。ショッピングモールに対し、冷房に高性能フィルターを取り付けることを義務付ける方針だといいます」(アメリカ在住ジャーナリスト)
当然、日本も人ごとではない。
「クラスター感染は、東京ではクラブやキャバクラ、北海道小樽市ではカラオケ店といった室内での事例が多い。業務形態もありますが、密閉された空間で換気機能のない冷房機器を使うことで、人の発した飛沫が風に乗って部屋中に拡散していくという検証結果もあります。冷房が感染リスクを高める可能性は非常に高いのです」(前出・医療ジャーナリスト)
現在、各鉄道会社は車内の窓を開けて換気に取り組んでいる。しかし猛暑が予想される今夏、冷房による“電車クラスター”が起こる可能性があるのだ。
帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授はこう語る。
「電車のエアコンは換気機能が付いているものは少なく、車内の空気を循環して冷やしていますので同じ空気が滞留しやすくなります。特に地下鉄などは空気が停滞しやすく、通勤などで“3密状態”となることで、換気も悪いのでいい環境とは決して言えません」
そうはいっても、働く人やこれから帰省を控える人たちがまったく電車を使わないというのも現実的には難しい。
電車内での感染リスクを抑える方法の一つとして、高橋教授は“車内の立ち位置”が重要だという。
「車両でいうと、換気の多いドアまわり。窓が開いているなら車両前方の連結部分のドアが閉まっているあたりより、後方の風が流れる場所がいいです。真ん中は空気が滞留しやすいです。もちろん基本的には飛沫感染ですので、マスクは必須です。満員電車などでおしゃべりしている人はあまりいないとは思いますが、マスクは必ずつけていたほうがいいですね」
猛暑の中での電車移動には我慢も必要だ。筋野先生は言う。
「“冷房が逃げるから”と窓を閉めるのはよくないです。少し開けるだけで風が入るので、車内の窓は必ず開けたほうがいいでしょう。また、ほかの人と顔を正面に向けないことも大事。できるならば背中合わせや横向きになるようポジションを変えてみてください。
さらに、背の低い女性は上からウイルスが降ってくることも想定して、マスクで開きがちな鼻の脇をしっかり閉じたほうがいいです。
「女性自身」2020年7月21日号 掲載