住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、子どものころに読んだ本の話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。

「ごくフツーの家庭で、フツーの学校で、フツーに育ったフツーの子。そんな私が自信を持てるよう、母は個性を見つけようと必死だったみたいです。“通信簿が悪くても、何か好きなことが見つかればいい”って。『窓ぎわのトットちゃん』(’81年3月発売)の影なんでしょうね」

そう、小・中学校だった’80年代を振り返るのは、お笑い芸人のにしおかすみこさん(46)。個性を育むトモエ学園で過ごす、黒柳徹子さんの幼少期が描かれた自伝『窓ぎわのトットちゃん』が出版されたのは、にしおかさんが小学校に入学したころ。

「学級文庫にも置いてありました。まだ幼いから“表紙がかわいいな”くらいで、ほとんど読めませんでしたけど。ただ、教室の後ろの本棚に、キュリー夫人やエジソンの伝記に交じって、『ザ・ベストテン』(’78年~’89年・TBS系)の黒柳徹子さんの本があることを、ちょっと不思議に思っていました」

■周りに流されていた子供時代

毎週、家族で楽しみにしていた『ザ・ベストテン』。まわりではシブがき隊少年隊が人気だったが、とくに好きなアイドルがいるわけでもなかったとか。

「個性がないから主体性もなく、まわりに流されやすい子でした。友達の誰かが『○○のファン』って言ったら、『私も』って、下敷きにそのアイドルの雑誌の切り抜きを挟むくらい。みんなに合わせていくうちに、いろんなアイドルの記事を切り抜くハメになっちゃって」

初めて買ったCDも、適当に選んだものだったという。

「あんまりお金のない家だったので、父がローンを組んで高いステレオを買ってしまったときは、母がめちゃくちゃ怒って……。父はショボ~ンとしていたんですが、せっかく買ったんだから、使いたいじゃないですか。電器屋さんがギルバート・オサリバン(ポップス歌手)のCDをつけてくれていたのですが、これじゃあないよねってCD店へ。棚を“ア行”から見て、最初のほうにあったアルフィーのCDを買いました」

アルバムのタイトルは忘れてしまったが、『星空のディスタンス』(’84年)が収録されていたという。

「聴いてみると、すごくカッコよくて。とくに高見沢(俊彦)さんがハイトーンボイスで歌う曲が好きで、それをよくマネして歌っていました。すると、うちで飼っていた犬が、決まって遠ぼえを始めるんです」

■娘以上に“トットちゃん”に影響を受けた母

一度は読むのを挫折した“トットちゃん”を読破したのは、小学3~4年生くらいのとき。

「電車の車両の中に教室を作ったり、自由な学校だなって羨ましく思って。でも、やっぱり私よりも母のほうが、本の影響を受けていました」

トモエ学園では、食事には海のもの、山のものを取り入れる食育が描かれているがーー。

「だから遠足のとき、母がそういったお弁当を作ってくれるんですね。でも、当時はサンドイッチをラップでキャンディのように包んだお弁当がおしゃれで。それを言うと『こちらの気も知らないで!』って怒られるんです(笑)」

夏休みの宿題の絵日記に“海で浮き輪で浮かんでいると、まるで宇宙遊泳のようだった”と、にしおかさんは書き出したが、学校の先生から「“今日は家族と海水浴に行った”から書き始めるのが、正しい文章」と注意された。

「それを知った母は『もっと自由でいいはず。おかしい』と言い始めて。でも、学校の先生に直接、文句を言うことはできなくて『自分を通すために、先生に“この指摘はおかしい”と言いなさい』って。私は別におかしいと思っていなかったのに(笑)」

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