「人生100年社会が目前に迫るなか、その後半戦に待ち受けるのは、知りたくなかったり暗い気持ちになったりする出来事も少なくありません。でも、何歳ごろにどんなことが頻発しているかを把握しておけば、自分の対処しだいで好転していくこともあるのです」

そう話すのは、老後問題解決コンサルタントとして、これまで1,000人以上の相談を受けてきた横手彰太さん。

50歳以降の人生に起こりうるトラブルと解決策をまとめた『老後の年表』(かんき出版)の著者でもある横手さんに、明るい老後を生きるヒントを教えてもらった。

「老後に起こるトラブルの多くは、今から健康を大切にすることで回避できます。老後の大きな経済損失は医療費と介護費だからです。個人が一生涯に負担する医療費の実質額は約200万円。さらに介護費用となると、自宅介護を選ぶ場合でも、5年間で約500万円かかります。これらの負担が、年金収入しかない70歳を過ぎると一気にのしかかってくる。老後資金を減らさない最善の防御策は、心と体の健康を維持していくことに尽きるのです」

また、医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが語る。

「50歳以降は、5大がん(胃、肺、大腸、乳房、子宮)の発症リスクが跳ね上がります。定期的にがん検診を受けて、早期発見・早期治療を心がけることで、治療費などを抑えることも可能です。また、女性は閉経後、体を守っていた女性ホルモンが減少することで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなります。さらにこれが、脳卒中や心筋梗塞など重篤な病気を招くだけでなく、認知症や骨粗しょう症など介護リスクを高める病気を引き起こすことに。人生の後半戦は、違う人間になったつもりで生活習慣を改善していくことが重要です」

前出の横手さんもこう続ける。

「定番ですが、ウオーキングなどの適度な運動、質の高い睡眠、栄養バランスのとれた食事を心がけて、病気をよせつけないこと。老後に向けて今から毎日、心身ともに健康な自分を作る意識をもつだけで、トラブルが起きたとしても、ダメージを小さくできるのです」

■45歳~59歳で気を付けたい病気とお金リスク

次に紹介する45~59歳までの注意点をもとに、人生後半戦に高まるリスクを把握し、病気とお金の両面から今すぐにでも対策を始めよう。

■45~49歳

病気:乳がんのリスクが高まる【※1】/うつになる人が増える

【※1】乳がん手術費はおよそ60万円! 定期検診と保険の見直しを

12人に1人が罹患する乳がんの発症率が高いのは45~50歳。

「発症者は年間9万人近くおり、約1万5,000人が命を落としています。早期に見つけて治療すれば完治も」(室井さん)。

個人差はあるが、手術費は自己負担で60万円ほど。そのほか薬物療法や放射線療法なども考慮が必要。50代からは胃・肺・大腸・子宮のがん発症頻度も増加し、治療にかかる費用は年間平均115万円(日本医療政策機構調べ)。定期的な検診とがん保険の見直しをしておこう。

■50~54歳

病気:更年期障害は、閉経を迎える51歳がピーク【※2】/高血圧になるリスクが急激に高まる
お金:親が認知症を発症し、介護で離職する【※3】/親が亡くなり、遺産相続の争いが勃発する

【※2】生涯にわたる治療費100万円! 更年期後の病気予防が重要

女性ホルモン“エストロゲン”の減少により起こる更年期障害。日常生活に支障をきたす場合、治療費(ホルモン補充療法)は平均10年間で約20万円。

「エストロゲンは血管を保護する働きもあるため、減少により動脈硬化が進行するので要注意。

また、高血圧症の人も増えます」(室井さん)

降圧剤などで年間約5万円。生涯にわたれば薬代と診察費で100万円程度の治療費がかかることも。予防のため、適度な運動と食生活の改善が必須だ。

【※3】収入ゼロ、年金減額を招く介護離職は絶対に回避すべき!

人生後半戦に突入して降りかかるのが、親の介護問題。

「費用が抑えられる公的介護施設は入居待ちが多く、数年間は自宅介護となるケースが圧倒的に多い。民間の介護施設だと首都圏の場合、月20万円ほどの費用がかかるため、自宅で介護せざるをえず、50代で離職する人が急増するのです」(横手さん・以下同)

しかし介護離職は、継続収入が断たれることが大きな問題。

「一度離職すると再就職が極めて難しくなり、なおかつ年金の受給額も目減りするため、自分の老後不安が拡大します」

1人で抱え込まずに介護サービスを利用するか、利用できない場合でも、勤務先と相談して出勤日や業務時間の調整ができないか確認し、介護離職は絶対に回避したい。

■55~59歳

病気:子宮がんに要注意/胃がん罹患者が増加する
お金:熟年離婚の危機

50歳以降は病気と医療費との闘い! 今すぐそなえて穏やかな老後を迎えよう。

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