厚生労働省は11月24日、新型コロナウイルスの3回目接種(ブースター接種)について、2回目接種から原則「8カ月以降」としていた間隔を、「6カ月以降」に短縮できるケースを検討すると発表した――。
12月1日からは医療従事者を対象に3回目接種がスタート。
そう語るのは、国立病院機構 宇都宮病院の杉山公美弥副院長。
現状、全国的に新規感染は収束しつつあるが、なぜ3回目接種が必要なのか? その理由の一つは「抗体価」にあるという。
「新型コロナウイルスに対する抗体の“強さ”や“量”を示したものを『抗体価』といいます。今年2~3月にファイザー社製のワクチンを2回接種した職員365人を対象に、半年後の抗体価を測定したところ、年齢を問わずピークから約75%減少していました」(杉山先生)
研究の結果、2回目接種から6カ月後の抗体価は年齢が上がるほど低いことが改めて浮き彫りになったという。
「年齢を重ねるにつれて免疫機能が低下するため、抗体ができにくくなったり、抗体が減るペースが速くなったりするのです」(杉山先生)
■抗体価減少と第6波が重なる危険性も
また、喫煙者も抗体価が低いという傾向が。
「喫煙者は非喫煙者に比べて2回目接種から半年後の抗体価が低値になることが判明しました。たばこの影響で、免疫力が低下するためと考えられます」(杉山先生)
抗体価が下がった時期に第6波が重なると、再び重症者が増えることが懸念される。
「抗体価の減少ペースを考えると、高齢者や喫煙者は2回目のワクチン接種から6カ月以上たつと感染や重症化リスクが高くなる可能性があります。
現在は2回目接種から8カ月以降が原則ですが、6月までに2回目の接種を済ませた高齢者は今すぐにでも接種したいところです。肥満の方もコロナ感染による重症化リスクが高いため、できれば早めの接種がよいでしょう」(杉山先生)
3回目接種のメリットを、ウイルス学が専門の埼玉医科大学の松井政則准教授はこう語る。
「ワクチンを1回接種すると、新型コロナウイルスから身を守る抗体を産生する“工場”が体内で作られます。
全人口の4割以上が3回目のワクチン接種を終えている“ワクチン先進国”のイスラエルでは、ブースター接種によって、重症化予防効果は92%になったとの研究報告もある。
では、私たちは「いつ」「どの」ワクチンを打つことになるのだろうか? それを示したのが画像のチャートだ。
■ワクチン3回目の交差接種について専門家が解説
現状、ブースター接種で用いられるのはファイザー製のワクチンだが、1、2回目で接種したワクチンと種類が異なる交差接種について心配する声も少なくない。
「ファイザー製とワクチンの仕組みが同じモデルナ製も現在承認申請中で、ほどなくして使用が許可される見込みです。この2種類のワクチンで体内に送り込まれるのは同じ新型コロナウイルスの抗原ですから、交差接種も可能となるのです。モデルナ製はファイザー製に比べ、まれに心筋炎を疑う事例があるとして、厚生労働省は、10月の時点でとくに報告頻度が高い10~20代の男性は1回目がモデルナでも2回目はファイザー製に変更できるとしています。対してアストラゼネカ製は何度も接種すると免疫反応が起きにくくなるという報告があり、ブースター接種には向かないとされているのです」(松井准教授)
■3回目の副反応は2回目と同等以下
そして心配なのはワクチン接種後の副反応。杉山先生はこう語る。
「ワクチンを打ったにもかかわらず新型コロナウイルスに感染して入院した人は“副反応よりも感染したほうがつらい”と一様に話しています。副反応を恐れて打つことをためらう必要はないでしょう。
自分の健康状態を鑑みて、最適なタイミングでブースター接種をし、次の“大波”に備えておこう。