「ネットなどで『9万円』でお葬式(火葬式のみ)をお願いした場合、当社でいう『18万円』の水準のお葬式が簡略化されたケースが多いと思います」

こう語るのは、『日本一笑顔になれるお葬式 ~大切な人が亡くなる前に知っておきたい葬儀の本当のハナシ~』(扶桑社)の著者で、葬儀社「小金井祭典」社長の是枝嗣人さん。

そこで削られるのは、故人を入れる棺の品質などに加え、「かかるスタッフの人件費」が大きいという。

「当社では、故人が亡くなった直後の対応として、ご遺体を病院や施設にお迎えに参ることが多く、ご自宅にお連れしたり、霊安所にお預けする場合などがあります。霊安所にお預けする場合も、10分以上のご面会ができるようにしております」(是枝さん・以下同)

また、自宅に遺体を安置する場合、ドライアイスの交換のための人件費など諸費用が発生する。小金井祭典では、遺体を自宅か霊安所で安置でき、その人件費なども合わせての予算ということになるそうだが、ネットで選んだ格安プランの場合、この「人件費などの諸費用」が省かれることが多く、そこからトラブルにつながるケースが多いと是枝さんは注意を呼び掛ける。

「格安の場合、人件費などの削減のため、霊安所で同時に10体以上のご遺体を預かり、1人のスタッフがドライアイスの交換をしていたりします。また、多くは面会時間は0分です」

葬儀社のスタッフとはいえ人の子であり、故人の家族が面会に来る=人の目があるのと、面会ゼロ=誰にも見られていない状態とを比べれば、「どこかで対応に違いが出てくるはず」と是枝さん。

そして格安プランの場合、故人と対面できるのは「火葬場でお別れする直前の5~10分のみ(東京都の場合)となることが多い」のだという。

「都内の火葬場の場合は、火葬炉の前での面会が『5~10分』と規定されているんです」

私たちは故人を見送るとなると、棺の前で涙のお別れがあったり、言葉をかけたり、お花を手向けたりとイメージするが、それらは当然、葬儀社スタッフの人件費が発生してこそ初めて成り立つ時間なのだ。

「火葬場に着いて初めて、『面会時間が5分だけ』と気づいても、手遅れということもあります。やはり、お葬式のスタイルや、どこにどれだけお金をかけるかは、亡くなった方へのお気持ちと照らし合わせて考えるべきでしょう」

ちなみに小金井祭典では、お葬式のあと、役所や銀行の届出・手続のアドバイス、法事の手配などを含めたアフターサービスを料金内で行っているという。

「旧来の、数百万円も平気でかけるお葬式で、過剰になっていた部分の費用は見直すべきところもありますが、おみおくりから、ご供養までを丁寧に歩むことのできる選択をしていただきたいと思います」

「そのとき」は、誰の身にも必ず訪れるもの。どこの予算を削り、どこに予算をかけるのか――。慎重に見極めることが、お葬式での心残りや、故人に対する後悔の気持ちを回避することにつながるのだろう。