「岸田首相が8月15日、輸入小麦の政府売渡価格を据え置くよう指示しました。これによって国内各メーカーが小麦を仕入れる価格は据え置きとなります。

しかし、ほぼ全ジャンルで続いている商品価格の値上げの歯止めになるとは言い切れません」

こう話すのは流通事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。

小麦は米に次いで食卓に欠かせない穀類だが、約9割を輸入に頼っている。そこで国は、アメリカなどから一斉に買い上げ、年2回、4月と10月に、市場価格の平均値から各社への分配価格を決定してきた。

「4月の売渡価格は1トンあたり7万2千530円でした。しかし原油価格の上昇やウクライナ情勢などを受けて輸入価格が高騰。10月には売渡価格が、8万円台後半まで値上げされる予測でした」

売渡価格を政府が据え置くことで、「約1千億円分も国が補塡することになる」と加谷さん。

パンなど小麦を使った食品は、それほど値上げが続いていたということだ。

「食パンは山崎製パンをはじめ各社が1月から最大約9%も値上げしました。パスタや小麦粉も今年8月までに各社が軒並み値上げを発表。このままでは年内2度目の値上げの可能性もありました」

だが政府の売渡価格据え置きで回避される見通しに。それでも、「別の問題が出てくる」という。

「パンやパスタの各メーカーにとって、原材料費の高騰だけが値上げ理由ではありません。

燃料費、人件費、輸送費なども相変わらずの高値ですが、政府が売渡価格の据え置きを発表したため、逆に別の理由での値上げを打ち出しにくくなったともいえます」

そして小麦以外を原料とする食品群の値上げは、最近の傾向にさらに拍車をかけるように、9月以降に集中している。

特筆すべきは以下の【食品値上げ一覧】の中で、「※今年2度目」とある、チーズ、ハム、ソーセージ、マヨネーズなどの商品だ。

「これらは今年の初頭以降、すでに一度値上げをした商品ですが、さらに値上げせざるをえない状況に追い込まれているのです」

【食品値上げ一覧】では10月に値上げする商品が多く見られるが、11月以降の未発表分を考えれば「値上げの波は抑制できず、今後も続くことが予測される」と加谷さん。

「最近の状況では、やや原油価格が下がってきているとはいえ、値上げの波が急に、値下げに変わることはないでしょう。ただ、小麦製品の再値上げが回避されるのは、家計管理上は朗報です。少なくとも年内は、パスタやラーメンなどを無理に買い置きする必要はないと思います」

「これって、こんなに高かったっけ?」と、スーパーでため息をつくことが増えた昨今。

年内の小麦製品の再値上げはないとはいえ価格は高止まり、その他の食品も続々と値上がりしていくなか、家計を守るために、本誌がまとめた【食品値上げ一覧】を参考にしてほしい。

■秋も続々!【食品値上げ一覧】9月1日から値上げ

<肉加工品>

プリマハムが香薫ほか家庭用商品を5~20%値上げ(※今年2度目)

<水産加工品>

はごろもフーズがシーチキンL各種を5.3~6%など41品を3.3~31.6%値上げ。理研ビタミンがふえるわかめちゃん、わかめスープ、海藻サラダほか22品を6.9~12.3%値上げ

<乳製品ほか>

六甲バターがQBBベビーチーズ54gを204円から222円に値上げ(※今年2度目)。J-オイルミルズがマーガリンを15~20%値上げ。明治がコーンソフト300gを320円から360円に、チューブでバター1/3を300円から315円に値上げし、容量を160gから150gに減

<冷凍食品>

日清製粉ウェルナがマ・マー大盛り生パスタなど19品を約9%値上げ(※今年2度目)。ニップンが海鮮チヂミほかを約4~26%値上げ

<調味料類>

にんべんがつゆの素1L 882円を944円にするなど、つゆの素類を約7%、白だし類を約4%値上げ。

寿がきや食品が粉末スープおよび調味料16品を6~12%値上げ

<スナック菓子>

カルビーがポテトチップスやじゃがりこなどを10~20%値上げ。湖池屋がカラムーチョなどを4~9%値上げ、KOIKEYA PRIDE POTATOなどの容量を3~5g減

<アイス>

井村屋があずきバーなど39品を3.8~14.3%値上げ。赤城乳業がチョコミントを70円から80円にするなど19品目を値上げ

■10月1日から値上げ

<肉加工品>

丸大食品が燻製屋熟成あらびきポークウインナーを398円から418円にするなど、計350品を5~30%値上げ。日本ハムが家庭用ハム・ソーセージ・加工食品の容量を平均9%、シャウエッセンを8%減。伊藤ハムが朝のフレッシュロースハム3連を320円から330円(いずれも税込)に、グランドアルトバイエルンを容量約6%減(※いずれも今年2度目)

<乳製品>

明治が北海道十勝スマートチーズを365円から400円に。森永乳業がクラフト 切れてるチーズを400円から450円にするほか22品で価格改定や容量変更

<調味料類>

キユーピーがマヨネーズを403円から439円にするなど約2~20%値上げ。

味の素がピュアセレクト マヨネーズなどを約4~15%値上げ(今年2度目)するほか、アジシオ、ほんだし、味の素KKコンソメなどを約2~12%値上げ。キッコーマン食品がステーキしょうゆほか、たれ類34品を約5~10%、みりん類41品を約4~11%値上げ

<菓子類>

アサヒグループ食品がミンティア、1本満足バーなど菓子・フリーズドライ商品などを約2~13%値上げ。岩塚製菓が味しらべ、黒豆せんべいなど22品を6~12%値上げ

<高野豆腐>

旭松食品が新あさひ豆腐ほか高野豆腐製品を約5~15%値上げ

<コーヒー類>

味の素AGFがブレンディ カフェラトリーほかスティック商品32品とクリーミングパウダー商品6品を約16~22%値上げ。キーコーヒーがプレミアムステージ(粉)753円を807円にするほか約60品を5~20%値上げ

<酒類>

アサヒビールがスーパードライ、クリアアサヒ、贅沢搾り、ドライゼロなどを6~10%値上げ。キリンビールが一番搾り、氷結、ジョニーウォーカーなど278品を6~17%値上げ。サッポロビールが黒ラベル、ヱビスビール、濃いめのレモンサワーなどを4~12%値上げ。

サントリーホールディングスがザ・プレミアム・モルツなどビール類を6~10%値上げするほか、チューハイ類、輸入ワインも値上げ。コカ・コーラボトラーズジャパンが檸檬堂、よわない檸檬堂などを4~7%値上げ。大関が上撰 金冠 ワンカップを217円から232円にするほか日本酒、リキュール、スピリッツを約5~10%値上げ

<飲料>

コカ・コーラボトラーズジャパンがコカ・コーラなど小型パッケージ製品(ペットボトル、ボトル缶)を6~18%値上げ。キリンビバレッジが午後の紅茶、生茶など127品を一律20円値上げ。アサヒ飲料が三ツ矢サイダー、カルピスウォーター、十六茶、ワンダ極を20円値上げするなど163品を約4~16%値上げ。ポッカサッポロフード&ビバレッジがキレートレモンWレモン500mlを140円から160円にするほか67品を10~30円値上げ。大塚食品がクリスタルガイザー500mlを110円から129円にするほかジャワティストレートなど18品を値上げ(今年2度目)。伊藤園がお~いお茶、健康ミネラルむぎ茶など136品を平均約20円(約13%)値上げ

■11月1日から値上げ

<即席みそ汁など>

永谷園が生みそタイプみそ汁あさげ徳用10食入、だし茶漬け、すし太郎など25品を約5~11%値上げ

<ジャム類>

アヲハタがアヲハタ55イチゴ(ジャム)を242円から260円にするなど43品を約4~12%値上げ(今年2度目)

※とくに表記があるもの以外、価格はすべて税別