「今回は落ち着いた感じの作品ね。とても素敵」

女性たちの視線の先にあるタペストリー。

180センチ×140センチという大きなキルト作品だが、水色の大きな枠の中には色鮮やかで多種多様な布が縫い付けられている。『タイムトラベル』と題名を添えた作者は、三浦百恵さん(64)だ。

芸能界を引退後、キルト作家としても活躍してきた百恵さん。およそ3年ぶりとなる新作が展示されたのは、3月下旬に東京・中野区で開催されていた展示会「鷲沢玲子のキルトフェスタ2023」。

図録には百恵さんのコメントも寄せられていた。

《長い年月で頂いたものが増え、この可愛いプリント布を何とか活かしたいとシンプルに仕上げました。

「この布はあの時に」「これはあの人が」と、下さった友や頂いた時を思い、楽しく温かな気持ちで針を進められました》

なんと、これまでに友人たちから贈られてきた布をつなぎ合わせて、作品を仕上げたという。

「百恵さんの人となりがとてもよく表されていますね。もともと決して裕福とは言えない家庭環境で育った百恵さんは、慎ましく生活することをしつけられていました。

キルトの制作においても、生地は必要な分だけを買い、なるべく余りを出さないよう心がけているそうです」(芸能関係者)

そんな百恵さんの“清貧”ぶりは、道具にも徹底されている。

「30年以上愛用しているキルトに使うお針箱は『ミスタードーナツ』でおまけにもらったアルミ缶箱なのです。’19年に出版した作品集『時間の花束 Bouquet du temps』(日本ヴォーグ社)のなかで明かされています」(前出・芸能関係者)

新作に友人から贈られた布が使われたように、百恵さんはキルトで生まれた“縁”を大切にしてきた。

彼女と同じ教室に通っていた生徒が明かす。

「百恵さんがキルトを習うきっかけにもなった友人がおられたのですが、若くして亡くなられてしまいました。百恵さんは大変悲しまれていましたが、作りかけだった彼女のキルトを引き継ぎ、完成させたそうです」

必要なのは友情と清貧。新しいキルトには、そんな百恵さんの“人生訓”が込められているのだ。

図録のコメントには《不自由を強いられる日々。手しごとの時間に感謝を》とも書かれてある。

コロナ禍は百恵さんにとっても厳しいものだったのか……。

「1年前に生まれたお孫さんが新たな生きがいになっているそうですよ。おかげでキルトの創作意欲も増しているのだとか」(前出・生徒)

長男で歌手の三浦祐太朗(38)と妻で声優牧野由依(37)との間に授かった初孫。これまでも数々のキルトを家族に贈ってきた百恵さんは、おくるみなどを作ったという。

百恵さんらしさあふれる新作『タイムトラベル』にも、初孫に伝えたい“祖母の愛と教え”がいっぱいつまっているようだ。