7月21日、漫才とコントの“二刀流”で競う新たなお笑い賞レース『ダブルインパクト~漫才&コント二刀流No.1決定戦~』(日本テレビ・読売テレビ系)が初開催された。

漫才の頂点を決める『M-1』、コントの頂点を決める『キングオブコント(以下KOC)』といった特定の形式で戦うお笑い賞レースはいくつかあるが、漫才とコントの総合点を競う試みは初めて。

決勝に残ったファイナリスト7組の中から、お笑いコンビ「ニッポンの社長」が2875組の頂点に立ち初代王者に君臨し、優勝賞金1000万円を手にした。

初開催の『ダブルインパクト』をプロはどう見たのか。お笑い評論家のラリー遠田氏は、まず従来の賞レースと比べて「出場者にとってはすごく難しいが、見ごたえはある」と評価する。

「見る側としては色々なネタを楽しめるという面白さもありますが、やる側としてはすごく難しいと思います。舞台上でも話題に出ていましたが、性質の違う2つのネタをやらないといけないので、頭の切り替えがうまくできるかという意味での難しさもあるでしょうね。

そもそも、漫才とコントを両方やるのは難しいので、基本的にはどちらかを専門にしている人の方が圧倒的に多いです。野球の二刀流と一緒で、両方を高いクオリティでできる人は滅多にいません。それができる人は芸人としての総合的な能力が高いということですし、そういう人だけが決勝に残っているので、見ごたえはありますよね」

一方で、“二刀流”を使いこなせる人がどれほどいるかという問題を孕んでいるとラリー氏は指摘する。

「お笑いでいちばん注目を集める『M-1』に出場するために“漫才もやる”コント師は増えました。’07年に『M-1』王者になったサンドイッチマンは典型的な例で、最初はコント中心でした。ただ、コントと漫才は野球でたとえるならピッチャーとバッターくらい別の種目という感じで、両方を高いクオリティでできる人ってそんなにいないんですよ。

だから『ダブルインパクト』は野球で二刀流選手だけの大会をやるみたいなものなので、大谷翔平さん以外で“それできる人ほかに何人いますか?”って話なんですよ。

今回のファイナリスト7組はその基準を満たしていると思いますが、例えば来年これをやったとして、“あまりメンバーが入れ替わってない”可能性があることが懸念されます」

そのハードルの高さゆえに、出場をためらうケースも出てくる可能性もあるという。

「顔ぶれを変えるために大会側がちょっと実力が劣る人を無理やり引っ張り出しても、見ていて辛いことになると思うんですよ。“この人、コントは面白いけど漫才はいまひとつだな”といった印象が強くなるのも損なので、出られる人が限られてくるのがこの大会の一番厳しいところだと思います。

さらに、漫才やコント専門の大会がほかにあるので、芸人たちが自分のいちばん自信のあるネタをそちらに持っていってしまうことも考えられます。一度全国ネットの賞レースで見せたネタは別の大会では使えないので、渾身のネタができたときに“これを『ダブルインパクト』でやっていいのか?”と。場合によっては、“今年は『KOC』で勝負したいから、『ダブルインパクト』は出ない方がいいかな”など、芸人が考えることになっていくかもしれません」

初回を終えた上で、今後クリアすべき課題としてラリー氏は“ネタの順番”をあげた。

「個人的な意見としては、漫才とコントのどちらを先にやるかというネタの順番は統一した方がいいのかなと思いました。今回は芸人が選べる方式で、1組だけが最初に漫才を、残り6組は先にコントを選びました。

作る側もだいぶ悩んで、いろんな形を考えた上でやったとは思うんですけど、結果として見ると、やっぱり統一されてないと見る側も見づらかったですよね。多分審査する側も難しかったと思います。漫才に点数をつけた後で、それと比べてコントに点数をつけるのはやはり難しいと思うので、例えば1本目は全員コントで、2本目は漫才という風にルールとして決めてやった方が見やすかったのかなという感じはします」

果たして『ダブルインパクト』は今後『M-1』や『KOC』に並ぶ大会になる可能性はあるのだろうか。

「例えば『THE W』も『THE SECOND』も続いてるし、今の賞レースは数字だけでなく芸人を発掘して育成する場所として、テレビ局としてもじっくり育てていこうという流れを感じます。

芸人にとっても出るチャンスが増えるのはいいことです。

優勝したニッポンの社長も『KOC』では5回も決勝に行ってるので、お笑い好きな人ならみんな知ってると思いますが、こういう大会で優勝するとバラエティ番組でもキャスティングされやすくなります。肩書きが付くことでいろんな番組に出やすくなるんですよね。そういう意味ですごく意味があるし、2年目以降どうなるかっていうのも注目してみていきたいです」

新しいお笑い“二刀流”賞レースの誕生で、お笑い界の今後の盛り上がりに期待したい!

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