歌手のクリスタル・ケイ(39)のベストアルバム「ALL TIME BEST 25th Anniversary」が6月25日に発売された。クリスタルは「自分のヒストリーを感じてもらえたら」と笑みを浮かべる一方、代表曲ともいえる「恋におちたら」には「初めは歌うことに葛藤もあった」と明かした。

8月に控える初の全米公演については「海外でツアーをするのは夢だったので楽しみ」とも。拠点を米国に移した時の苦労や俳優業についても聞いた。

 ベスト盤にはデビュー曲の「Eternal Memories」から新録の「Best Version Of Me」まで全32曲が収録されている。選曲は慎重に進められたようだ。

 「曲選びに当たってファン投票をしたり、レーベルの人たちに好きな曲を聞いたり、LDHの社内でも投票をしてもらって、いろんな声を集めました。もちろん自分が入れたい曲もありますが、このアルバムを聴いた人が楽しくなって、クリスタル・ケイのヒストリーを満遍なく知ってもらえる2枚組みにしたいと思って選びました」

 今回、再録した「恋におちたら」ではミュージック・ビデオ(MV)も撮り直しており、元モーニング娘。の辻希美(38)の娘でインフルエンサーの希空(のあ、17)も出演している。

 「希空ちゃんのお母さんは私より1歳年下なので、自分の娘と共演しているような感じでした。ちょっと温かい雰囲気も出ていて、見てくれた人からは『懐かしい』『その時の思い出がよみがえった』と言っていただいています。ラストで私の女子高生の制服姿のシーンがありますが、私がやりたかっただけです。今まで制服も着たことがなく、ルーズソックスもはいたことなかったから、MVで念願が叶(かな)いました(笑)」

 当初、「恋におちたら」を歌うことに否定的な感情を持っていたという。

 「この曲を聴いた時『これは私の歌じゃない』と思いました。

キラキラJポップよりもR&B系の曲を歌いたかったので、めっちゃ葛藤がありました。でもそれが一番のヒットになったから複雑でしたね。レコード会社は次もその路線を狙うし、クリスタル・ケイのサウンドを固める時期に、どんどんJポップに向いていったのはつらかったです」

 ―どう解決したのか。

 「やっぱりいい曲なんですよ。それはたくさんの人から『結婚式で使いました』『この曲のおかげで一緒になりました』とか、いろんなストーリーを聞いて実感します。で、ある時に『私が歌えばJポップもR&Bになる』というふうに切り替えることができて、葛藤もなくなりました(笑)」

 来月にはカナダ・トロントを含む全米7か所での公演が控えている。

 「今回は3ピースのバンド編成ですけど、3人だけでも音がめっちゃかっこいい。メンバーにはマライア(・キャリー)のツアーを断って参加してくれるプレーヤーもいるから感謝です。本番前にオーランドに入って5日間ほどリハしてからツアーに臨む予定でいます。メンバーが超プロ中のプロだから安心感はすごいです。このライブは絶対にいいですから、取材に来てください(笑)」

 2013年に米ニューヨークに拠点を移した時、自身のアイデンティティーと真剣に向き合ったそうだ。

 「私は米韓のハーフで、アメリカンスクールには白人と日本人や黒人と日本人のハーフはいましたが、父が黒人で母が韓国人という人はいませんでした。

当時は日本人と韓国人の違いも分からず、アイデンティティーを問うこともなかった。ただ日本の子と公園で遊ぼうとすると『なんで私は肌黒いの』と思う瞬間があったりして、ずっとモヤモヤした部分はありました。いろんな人種がいるニューヨークに来て、初めて自分のアイデンティティーを考えました」

 引きずっていたモヤモヤを吹き飛ばしたのは友人のひと言だった。

 「ある時、友達に言われたんです。『クリスタルは日本で生まれて育って、日本人じゃないのに日本語も英語もしゃべれて20年近いキャリアもある。これってすごいことだよ』って。そこで初めて『そうだよね』って腑(ふ)に落ちました。今までそういうアングルで言う人はいなかったから、すごく心に響きました」

 最近は俳優業でも目覚ましい活躍を見せている。19年に初挑戦したミュージカル「ピピン」での演技が評価され、「読売演劇大賞」で優秀女優賞を受賞した。

 「受賞に関してはびっくりでした。役をちゃんとやることに必死すぎて、アワード(賞)とか頭になかったですから。ミュージカルは作品が自分にプラスになれば受けたいけど、映画やドラマ、特にアクションをやりたいかな。

LDHは結構アクション映画を作っていますけど、一回もお呼びがかかっていません。一度、HIROさんに『出たいです』って言ってみます(笑)」

 彼女にインタビューするのは二十数年ぶりだったが、持ち前の明るさは健在だった。圧倒的なパフォーマンスで米国を魅了してください。(国分 敦)

23年ドジャース戦で日米国歌独唱 クリスタルは23年、ドジャース対エンゼルスのジャパン・ナイトで君が代と米国国歌の独唱をした。

 「これは私が『やりたいです』と自ら手を挙げました。日本も米国も両方の国歌を歌える機会はそうないので、なんとしてもやりたかったですね。その旨をドジャースに伝えたら『オーディションテープを送ってください』という返事が来て、送ったら採用されました。本番でグラウンドに立った時は人生イチ緊張しました。2曲とも国の歌ですから失敗は許されないじゃないですか。もう必死で歌いました。周囲の景色とか目に入らず、空しか見てませんでした(笑)。ちなみに大谷さんはまだエンゼルスの選手で、この試合でホームランを打っていました」

 ◆クリスタル・ケイ 本名クリスタル・ケイ・ウイリアムズ。

1986年2月26日、神奈川県出身。39歳。父は米国人で母が韓国人。4歳からCMソングを歌い始め、1999年に13歳で「Eternal Memories」でデビュー。2005年に「恋におちたら」のヒットでブレイク。08年に上智大を卒業。14年にLDHに所属。19年にミュージカル「ピピン」に出演し「第27回読売演劇大賞」で優秀女優賞を受賞。来月には初の全米ツアーが控える。身長170センチ、血液型O。

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