
保育士とアスリートの二刀流の選手たちで構成されるバレーボールチーム、「ビオーレ名古屋」を知っているだろうか? プロアマ含めた日本中の女子バレーボールチームの中で日本一のフォロワー数を誇るチームだ。なかでも一番の人気者が今年キャプテンに就任した大城なるみさん。
保育士とアスリートの二刀流生活
――大城さんのバレーボール歴を教えてください。
母が通うママさんバレーについていったのがきっかけで小学校1年生のときに始めました。地域にある小学校のジュニアチームに入り、そこからは短期大学までずっとバレー推薦で進学しました。
中学時代は九州大会で3位になり全国大会に出場。高校では県大会で3位に。短大では一部リーグでプレイしていましたが、さすがにプロになることは考えていませんでした。
――その時点でバレーボールはやめるものとして考えていた?
大学が保育科だったのですが、ちょうど就職する年に先生から「保育の仕事もあって、バレーもできるチームが出来たみたいだから受けてくれば?」と言われ、受けたら合格で。
もし今のチームがなかったらバレーはやめていたと思います。趣味で続けていく選択肢もあったかもしれませんが、競技として続けるという選択肢はなかったですね。
――現在ビオーレ名古屋のYouTubeのチャンネル登録者数が4.1万人、公式Instagramのフォロワーは6.5万人となり女子バレーボールチームとしては日本一になっています。
保育士とバレーができたら、それで満足だと思っていたのに、フォロワーさんやファンのかたがいっぱい増えて。保護者のかただけでなく、名古屋の街で声をかけていただいたり、頑張ってよかったなって気持ちです。
私たちの試合を観るために遠方から来てくださるかたかたもいて、心から感謝しています。
「女性を売りにしている」という声が寄せられることも
——仕事と競技の両立、大変そうに思えるのですが、一日の流れを教えてください。
常勤なので保育士として週5日、9時から5時まで働いています。土曜日は月1~2回出勤します。仕事が終わってから、練習の準備をするために一旦帰宅して、そこから2時間~2時間半練習。練習後に帰宅してから、食事や入浴をして、寝るという流れです。
運動会や卒園式、保育参観といった園の行事が重なると、何をやるか考えたり、制作しないといけないものが増えるので、とくに忙しくなりますね。日曜日に遠征が入ると、遠征明けでそのまま仕事になりますし、土曜日が運動会で日曜日が試合で休みがないということもあります。もちろんバレーボールは仕事ではないですし、自分が望んで身を置いている環境なんですけどね。
――結構ハードですね。
仕事に慣れない1年目は結構大変でしたが、2~3年目からは少しずつ慣れてきて、生活リズムもある程度整ってきました。今は疲れたというよりも、「明日も頑張ろう」という前向きな気持ちが強くなってきましたね。
体力的には大変かもしれませんが、自分の好きなことをしているから、キツイとか苦しさはなくて、毎日が楽しいです。
それに、同じ保育園の先生が後押ししてくれているので成り立っていると思います。今日の取材も、「行ってきていいよ。頑張っておいで」って、言ってくれて。
――周りも応援してくれるんですね。保育園に通う子どもの保護者のかたの反応はいかがですか?
応援してくれることが増えていて、子どもと一緒に試合を観に来てくださったりします。保育園に試合の告知チラシを貼ると、子どもたちが保護者のかたがたに「なるみ先生が写ってるよ!」と教えたりして。最近は私のことを話題に上げていただく機会も多くなっているように感じます。
――SNSでは個人でも人気のなるみ選手、一部では「女性を売りにし過ぎている」という声も上がるとのこと。保護者のかたからそういった声が寄せられることもありますか?
初めて挑戦することに、「批判的な意見がないことはありえない」と代表ともいつも確認し合っています。なので今は、どのような声が上がっても話題にしていただけるだけでありがたいという気持ちで頑張ってます! 保護者のかたは普段の自分を知ってくださっているので、批判的な声が寄せられることは今のところないですね。
あとは、私個人としては本当にもっともっと有名になりたいんです。以前は応援してくださるかたが、会場に試合を「観にきてくださっている」という自覚がなかったのですが、いまは汗だくでも自ら記念撮影に応じています(笑)。
保育士のチームだから仕事のことを相談できる
――そもそも、保育士を目指したきっかけは?
高校のときにバレー推薦で進学できる大学があり、子どもが好きなので保育科がいいなと思ったんです。正直そのときに意識し始めたんですけど、短大で実習を重ねていくうちに子どもってやっぱりかわいいし、勉強して成長を間近で支えられたらいいなと思って、本格的に保育士になりたいと思うようになりました。
――実際、保育士になってみてどうですか?
天職です! スプーンの持ち方や箸の使い方を教えて、半年後や1年後にできるようになっていくと、すごくうれしくて、この仕事をしていてよかったなと思います。子どもが走って「なるみ先生!」と近寄ってきてくれると愛しい気持ちになりますね。
――バレーボールの経験が保育士の活動に活かされることはありますか?
バレーを続けているおかげで、子どもと鬼ごっことかをしても、あまり疲れないため、体力面で役立っていることを実感します(笑)。
あとは、保育士が中心のチームなので、保育に関する相談ができ、悩みが解決できます。たとえば、子どもに服の着方を教えるコツなど、実際に教えてもらった方法を取り入れたところ、子どもがスムーズに覚えることができました。
――最後に、今後の目標を教えてください。
保育士としては知識も身につけながら、子どもの思いに寄り添って、毎日楽しく元気に頑張っていきたいなと思っています。
バレーでは、年度末に開催される地域リーグという大きな大会で勝ちたいです。キャプテンとして自分自身のプレーで活躍しながら、メンバーの意見に耳を傾け、よりよいチームづくりをしていきたいと考えています。
取材・文/福永太郎