疲れている日の電車で、できれば面倒なことには巻き込まれたくないものですよね。

ところがそんな中、迷惑行為を繰り返す男性に遭遇してしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。


帰宅ラッシュの電車で不快な咳をまき散らす男性

ある日の仕事帰り。黒木麻美さん(仮名・32歳)は、帰宅ラッシュで混み合う電車に揺られていました。

電車でニヤニヤ咳をする迷惑おじさんに、金髪ピアスの男性が近づ...の画像はこちら >>
「ただでさえ疲れていたので『今日は早く帰ってお風呂入って寝たい』って、それしか考えていなかったですね」

ところが、乗り込んで数分後。車内の空気が明らかにおかしくなったそう。

「ドア横に立っていた40代くらいの男性が、やたらと大きな咳を繰り返し始めて……しかも全く口元を押さえようともしないんです」

最初は体調が悪いのだろうと思った人も多かったはずです。しかし、その考えはすぐに変わりました。

やたらと大きな咳をしていた男性の近くにいた女性が露骨に嫌な顔をすると、男性はその反応を喜ぶかのように女性の方へ顔を向け、さらに大きな咳をしたのです。

女性は慌てて距離を取ります。すると男性はどこか満足そうな表情を浮かべていたそう。

それ以降も、男性の行動は明らかに異様でした。とにかく嫌な顔をしている人を見つけてロックオンしては、ニヤニヤしながら咳を浴びせにいっているようにしか見えなかったそう。

誰も動けない中、一人の金髪男性が立ち上がる

「正直『嫌がらせなのかな?』と感じました。車内もピリついていて、あちこちで咳払いしたり、嫌そうな顔をする人が増えていったんですよ」

電車でニヤニヤ咳をする迷惑おじさんに、金髪ピアスの男性が近づいて…取り出した“まさかのほっこりアイテム”で笑顔が広がった
ベビーカー・電車
車内には小さな子どもを連れた親子や、高齢者の姿もありました。

誰もが不快に感じているのは明らかでしたが、相手の態度があまりにも挑発的だったため、誰も注意できません。


するとその時、車両の端に立っていた、金髪で鋭い眼光、複数のピアスを付けた若い男性がふっと顔を上げたそう。

「『うわ、絶対に揉めごとになるじゃん』って身構えちゃいました。正直ちょっと怖そうな見た目だったので」

男性がゆっくりと歩き出すと、車内の何人かも気付いたようで、視線が自然と集まっていきました。

まさかの“作戦”に迷惑男性がフリーズ

「すると彼は、ポケットから小さなのど飴を取り出すと、その男性に向かってめちゃくちゃ穏やかな声で『大丈夫っすか?』と声をかけたんですよね」

電車でニヤニヤ咳をする迷惑おじさんに、金髪ピアスの男性が近づいて…取り出した“まさかのほっこりアイテム”で笑顔が広がった
嘘の咳をする迷惑おじさん
車内が一瞬シン……となりました。注目を集めていた“咳おじさん”も予想外だったのか、ムッとした表情を浮かべながら「別に風邪じゃねーし」とぶっきらぼうに返しました。

しかも、その瞬間だけ咳がピタリと止まっていたそう。

すると金髪の男性は「なら良かったです」と安心したように頷きます。そして「でも、のど辛そうなので、よかったらどうぞ」と、のど飴を差し出したのです。

「その言い方が、責めるというより、本当に普通に気遣っている感じで……それが逆に効いたんでしょうね。“嫌がらせしてやろう”って空気が、一気に浮いちゃった感じがしました」

男性は飴を受け取ることもできず、かといって怒鳴ることもできず、そのままフリーズしたように視線をそらしました。

すると金髪の男性は、さらに追い詰めることもありません。困ったように少し笑いながら「自分、昔めちゃくちゃ咳止まんなくなったことあるんです。電車は特にキツいですよね」と話しかけたそう。


まさかの共感モードでした。

「成敗! って感じじゃなくて、ちゃんと相手の逃げ道を残しながら止めた感が、すごく大人だなって思いましたね」

先ほどまで車内を支配していた重苦しい空気が少しずつ和らいでいき、嫌がらせを続けていた男性は完全に勢いを失っていました。

結局その男性はその後、全く咳をしなくなり、次の駅でそそくさと降りていったそう。

最後に広がった優しい空気

「するとドアが閉まったあと、近くにいた女子高生が小さな声で『見た目ヤンキーなのに優しかったね』とポツリと言うと、それが金髪の男性に聞こえてしまったらしく、少し気まずそうに笑いながら『ヤンキーじゃないし……』と言っていて。つい『可愛い~!』と思ってしまいました」

車内には笑顔が広がり、先ほどまでの緊張感はすっかり消えていたそう。

「迷惑行為を力でねじ伏せるのではなく、あんな穏やかな方法で解決に持っていくなんて……。本当に人を見た目で判断したらいけませんね。反省してしまいました」と微笑む麻美さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
Twitter:@skippop
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