子どもとの約束を「また今度ね」と後回しにしてしまったことはありませんか?

 今回は、孫との約束を何度も先延ばしにしていた義父をめぐる、ある女性のエピソードをご紹介しましょう。

「また今度」が積み重なるたびに……

 とある休日の午後。酒井美咲さん(仮名・35歳)は、義父の何気ない一言を聞き、心の中で「また始まった……」とため息をついていました。


「義父は悪気はないんでしょうけど、孫との約束をすぐ口にするんです。でも、その約束をほとんど守ったことがなくて」

 6歳の息子・隼人くんは、じいじが大好きです。そのため義父が「今度、ディズニーに連れてってやる」「大きな車のおもちゃを買ってやる」「今度の休みは一緒にショッピングモールへ行こう」と笑顔で話すたび、目を輝かせて「やった!」と大喜びしていたそう。

「ところが約束の日が近づくと、『今日は疲れているから、また今度な』『雨が降りそうだからやめておこう』なんて言って、いつも曖昧なまま延期するんですよ」

 それは一度や二度ではありません。「また今度」が何週間も、何カ月も続き、気づけば約束そのものがなかったことになるのがいつもの流れでした。

「ディズニー連れてってやる」孫と約束しては“また今度”を繰り...の画像はこちら >>
 それなのに義父は、そのことをまったく気にする様子もなく、次に会えば何事もなかったかのように新しい約束を口にしたそう。

「あと何回寝たらじいじと遊べる?」

 美咲さんが「あの約束はどうなったんですか?」と遠回しに聞いても「そのうち行けばいいだろ」「どうせ、子どもなんてすぐ忘れているよ」と笑って流されるだけ。まるで孫の期待や気持ちなど最初から存在していないかのような態度に、美咲さんは唖然とすることも少なくありませんでした。

「でも隼人は、約束の日が近づく度にカレンダーを眺め『あと何回寝たらじいじと遊べる?』と嬉しそうに数えていたんですよ」

 そして約束が延期になるたび「うん、わかった!」と笑顔で返事をしながらも、その表情は少しだけ曇っていたそう。

「何度も期待して、そのたびに裏切られるのは大人でも辛いですよね」

 美咲さんは、がっかりした姿を見せまいと必死に笑う息子を見るたび、胸が締め付けられていました。

6歳児の“素朴な疑問”にハッとする

 そんなある日、義父はテレビCMを見ながら、また隼人くんに向かって「今度はこのおもちゃ買ってやるからな!」と笑顔で言ったそう。

 その瞬間、美咲さんは思わず心の中で「お願いだから、もう言わないで」と思いました。

「すると隼人は、少しだけ困ったように笑って『じいじの今度っていつなの?』と小さな声で言ったんですよね。私は思わずハッとしてしまって」

 さらに隼人くんは、責めるような口調ではなく、本当に不思議そうな顔で「ぼく、じいじと一緒に遊びたいだけなんだ。
おもちゃはなくてもいいから、約束は守ってほしい」と言ったそう。

 隼人くんの言葉を聞いた義父は、何も返さず、ただ黙ってうつむいてしまいました。

初めて守られた約束の一日

「するとその数日後、義父は私に『今度の日曜日、隼人を近所の水族館へ連れて行ってもいいか』と自分から連絡してきたんですよ。そんなの初めてなので驚いてしまいましたね」

 しかも今回は違いました。当日の朝、義父は約束どおり時間ぴったりに迎えに来ると、隼人くんを連れて近所の水族館へ。

 決して有名なテーマパークでも、大きなレジャー施設でもありません。大きな公園の中にある無料の小さな水族館でしたが、隼人くんはとても嬉しそうに一日を過ごしていたそう。

「帰宅した隼人は『じいじとお魚いっぱい見て楽しかったよ!』と満面の笑みで……私もようやく胸のつかえが取れました」

「ディズニー連れてってやる」孫と約束しては“また今度”を繰り返す義父。モヤモヤしていたら…6歳児の“素朴な疑問”で変化が訪れた
※画像はイメージです
 何気なく口にした約束でも、子どもにとっては何日も前から心待ちにする大切な約束です。

「高価なおもちゃや特別なお出かけよりも、子どもにとって一番嬉しいのは、『約束を守ってくれること』なんだと、義父も気づいてくれたのかもしれません」と微笑む美咲さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。
著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
編集部おすすめ