女がクズ男にハマるのは“脳のバグ”が原因だった!?
「そんな男、やめときなよ」と言われるほど、なぜかのめり込んでしまう──。クズ男との恋は、なぜ“運命”にすり替わってしまうのか。佐伯ポインティ(以下、佐伯):先生の新刊『恋のカスと愛のクズ』でも、主人公しずみは、自分を決して本命にはしてくれず曖昧な関係を続ける男・春斗にハマっています。周囲が「もっと大事にしてくれる人がいるよ」と正論を投げかけても、本人はまったく耳を貸そうとしないのは“あるある”だな~!と思いました。
にくまん子(以下、まん子):しずみのように、口では「早く身を固めたい」と言いつつドブのような恋愛にハマる人って、周囲とは全然違う特別な世界が見えている。自信がなくて、自分自身を雑に扱っている女性ほど、自分を否定したり冷たく扱ってきたりする男性が現れると「この人は私の本質を見抜いてる!」と錯覚しちゃうんです。
まん子:むしろ、自分を肯定してくれる“いい人”のことは「そんなわけない」とアレルギー反応を起こして信用できなかったりするんですよね。
――なぜそのような思考に陥ってしまうのでしょうか?
佐伯:モラハラ系のクズ男にハマった女性に話を聞くと、最初は「こんな面白い人に初めて出会った」と思ったという人が多いんです。あとから考えれば、単に失礼だったり、距離の詰め方がおかしかったりするんだけど、出会ったときはそれが「こんなことされたことない!」という“未知の刺激”になって、「おもしれー男」と脳がバグってしまうらしくて。
鼻くそを食べた男に運命を感じた理由
佐伯:最近聞いた中でいちばんシビれたのは、マッチングアプリで知り合った男性が完璧に独身偽装していた話。いきなり家に招かれたときも妻子の痕跡はどこにもなかったそうなんですが、彼が「こだわりの注文住宅を建ててくれた」と自慢していた建築家のSNSを検索したら、その家の前で奥さんと写っている「完成記念写真」が見つかって既婚者だと発覚したという。建築家を自慢したい欲求から足がついたことを含めて、業が深い話だなと(笑)。
まん子:“未知の刺激”にバグってしまったといえば、私の友達は合コンで出会った男性と初デートした帰り、明け方の渋谷の交差点で男に「鼻くそついてるよ」と言われて。戸惑っていたら、彼が目の前でその鼻くそを指で取って食べたそうなんです。
佐伯:えっ(笑)。
まん子:その瞬間、「こんな人、会ったことない!」っていう“電撃”が走って、一気に好きになってしまったらしくて。めでたく付き合ったみたいですが、いろいろあって別れてしまったそうです。
佐伯:小説家・平野啓一郎さんの『「カッコいい」とは何か』という本に、人はしびれるような興奮を体験してしまうと、頭では簡単に否定できなくなる、と書いてありました。まさに“電撃”のような名前のない強い感情に対して、いちばん近い感覚として「好き」とか「運命」と名づけてしまう認知のバグが起こるんだと思います。
――一度バグった状態から抜け出せず、沼にハマってしまうのはなぜなのでしょう?
佐伯:最初に食らった電撃を「恋だった」と納得させるため、「こんなに胸が痛むってことは本物の恋だからに違いない」と言い訳や自己弁護する物語を、どんどん脳が勝手に作ってしまうんでしょうね。
まん子:私の漫画にも、2週間連絡がなかった春斗から「ごめん寝てた」というLINEがようやく来て、しずみが「本当に疲れてたんだと思う」「最近忙しいって言ってたし」と彼を擁護する言い訳を早口でまくしたてる場面がありますが、あそこは描いていて楽しかったです(笑)。
佐伯:あの場面は、リアルタイムで記憶や解釈を塗り替えていく“ライブペインティング”みたいだなと思いました(笑)。自分で自分を必死に洗脳してる状態というか。
まん子:そういう醜くも愛おしい人間の仕草を漫画に描くのが大好きなんです。
沼にハマっている人には物語を否定せず水を差せ
佐伯:「それって遊ばれてるだけじゃない?」と外野から正論を言っても突っぱねられるだけ。自分が好きな映画を、観てない人から「つまらなそう」と否定されたら「何も知らないくせに」と反発したくなるのと同じだと思うんです。
まん子:確かに、正論で否定されるほど、「私だけは彼のことをわかってる」と逆にのめり込んでしまいそう。
佐伯:これはクリエイターの水野しずさんが唱えていたのですが、そんなときは物語そのものを否定するのではなく、同じ映画の観客として「展開おかしくない?」「最初より脚本が雑になってきたよね?」と、物語としての完成度に水を差す厄介オタクになるのがいいんじゃないかな。
まん子:さっきの話で言えば「最近の彼、鼻くそ食べてくれなくない? 本当に大事にされてる?」とか(笑)。同じ土俵で話をすることで「あれ、この物語って実はおかしいのかな」と目を覚ましやすくなるのは、洗脳されている人への接し方と同じ。めちゃくちゃ実践的で今すぐ使えそうなアプローチですね!
漫画家。『泥の女通信』『恋煮込み愛つゆだく大盛り』など、現代のリアルな恋愛模様を描いた作品が多くの女性から圧倒的な共感を集める。新刊『恋のカスと愛のクズ①』が発売中
【佐伯ポインティ氏】
1993年生まれ。猥談系YouTuber。性愛や日常の悩みをフラットに語るスタイルがZ世代を中心に支持されている。著書に『嫌われおじさん愛されおじさん』などがある
<取材・文/福田フクスケ 撮影/杉原洋平>
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