温暖化の影響で植物が長い眠りから目覚める。イギリスで6000万年ぶりにソテツの雄花と雌花が開花(イギリス)


 九州南端や南西諸島に自生するソテツ(Cycas revolta)は、ヤシの木のような葉が特徴的な低木の裸子植物で、日本の固有種だ。

 自生の北限は鹿島県の薩摩・大隈半島南端で、暖かい気候を好む。
もちろん花を咲かせるのも、基本的に非常に暖かい地域だけでのことだ。

 だが今、イングランド南海岸沖に浮かぶワイト島にあるヴェントナー植物園(Ventnor Botanic Garden)では、屋外であるにもかかわらず、トウモロコシにも似たソテツの花がにょっきり姿を現しているのだという。

 寒いイギリスで温暖な気候を好むソテツが花を咲かせているということは・・・?どうやらこれは温暖化が着々と進んでいる証拠であるらしい。

【イギリス人類史上初めてソテツの雄花と雌花が同時に開花】

 ソテツは原始的な種で、顕花植物が進化する以前の2億8000万年前は地球の主要な植物だった。

 ヴェントナー植物園の報告書では

興味深いことに、かつて、現在のワイト島に当たる地域にソテツが繁殖していた。西ワイト海岸に沿った崖では化石のソテツが発見されているのだ。
したがって1億2000万年の間、この地域にソテツはなかったということだ

と説明されている。

 つまり、かつてイギリスにもソテツは存在したが、少なくとも人類がここに住み始めて以来、人が自生するそれを目にしたことはなかったということだ。

 それなのに今、イギリス人類史上初めて、ソテツが花を咲かせているのだ。じつは雄花だけなら2012年にも開花したことがある。しかし雌花も同時にとなると6000万年ぶりのことであるそうだ。

 また植物学者にとっては6000万年ぶりにソテツの受粉を行う大チャンスでもある。


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【イギリスの寒さに耐えられないソテツの成長は最近の熱波が関係】

 ソテツは従来のイギリスの寒さに耐えられるとは考えられていない。それなのに屋外で花が成長したのは、最近の熱波が関係しているようだ。

 2019年7月、イギリスでは38.7度という記録史上最高の気温に達した。また、世界各地でも同じような現象が起きており、ジリジリと気温が上がり続けているのはご存知の通りだろう。

 このことは世界の気温が変化していることを実証しているという。

 ヴェントナー植物園のディレクター、ジョン・カーティス氏は

雄花と雌花を同時に手にする条件は整いつつある。
私たちにとっては、まさに温暖化の兆候だ。植物が私たちに語りかけている。自分たちに有利な条件に反応しているのだよ、とね

とコメントしている。

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ソテツの雄花

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ソテツの雌花

【今後20~30年のうちに起こるであろう温暖化の影響の先触れか】

 ワイト島はイギリスでも気候が穏やかな地域だが、現在の1月の最低気温の平均は、100年前の同じ月の最高気温を上回っているという。

 これによって、これまではこの地域の寒さに耐えられなかった植物が冬を越せるようになってきた。今回の事例は、今後2、30年でイギリスで起きるであろうことの先触れかもしれないと恐れられている。


 とはいうものの、植物学者は6000万年ぶりにソテツの受粉を行う大チャンスに興奮しているそうだ。

 そういえば日本の奄美大島では、食糧難の時にソテツを毒抜きして食料化し、その後も「命の恩人」として大切にされている食文化があったね。

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References:Science alert / ヴェントナー植物園 / Zme scienceなど / written by hiroching / edited by usagi

記事全文はこちら:温暖化の影響で植物が長い眠りから目覚める。イギリスで6000万年ぶりにソテツの雄花と雌花が開花(イギリス) http://karapaia.com/archives/52278678.html