人工肉最前線。ウサギと牛の筋細胞を成長させ天然肉そっくりの食感を作り出すことに成功(米研究)

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 環境に優しく持続可能でしかも倫理的でもある培養した人工肉は、食肉業界に革命を起こす大きな可能性を秘めている。

 だが今の時点では、大量に供給する方法や本物のお肉の食感や味の再現などまだまだ課題が多い研究段階の技術だ。


 今回、ハーバード大学の研究グループが考案したのは、ゼラチンの中でウサギと牛の筋細胞を育てる方法だ。

 それはお肉そっくりな食感を再現しており、将来的には天然の動物肉にとって代わる可能性を秘めている。
【ゼラチン繊維にウサギと牛の筋細胞を植え込んで培養】

 動物の肉は、長く薄い繊維として成長する骨格筋(と脂肪組織)でほとんどが構成されている。培養肉の研究で最大の難関とされるのが、こうした繊維を再現することだ。

 『npj Science of Food』(9月21日付)に掲載された研究の筆頭著者であるルーク・マックイーン氏によると、筋細胞は接着性細胞のため成長するときに “つかまるもの” が必要なのだという。

食肉と同じような筋組織を成長させるには ”足場” となり、それでいて食べられる素材を探す必要があった。


筋細胞が付着して、3次元に成長するためのものだ。食品生産にこれを使うことを正当化するには、足場を大量に生産する効率的な方法を探すことが重要だった

とマックイーン氏。

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 この難題を克服するために、「浸透ロータリー・ジェット・スピニング(immersion Rotary Jet-Spinning / iRJS)」という方法が採用された。

 これは遠心力を用いて特定の形状や大きさのナノファイバーを紡ぐ技術だ。

 研究グループは、iRJSでゼラチン繊維を紡いで細胞を成長させる土台を形成。この繊維は天然の筋繊維の細胞外基質を真似したもので、組織同士をくっつけて肉の食感を再現する接着剤として機能する。


 この繊維にウサギと牛の筋細胞を植え込み、薄く長く成長させると、完成したのは本物のお肉そっくりの培養肉だった。

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【将来的には完全に天然肉のような培養肉が完成する見通し】

 その食感を計測器で調べてみたところ、天然肉と同じような食感がありながらも天然肉のほうが筋繊維が多いことが判明。

 つまり、天然肉はもっと成熟しているということであるらしい。

 それでも今回の研究結果は、完全に培養された食肉が実現可能であることを示しているという。

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マックイーン氏は、

人工的な筋細胞と脂肪細胞を成熟させることは今の段階では難関だ。

これを克服するためには、高度な幹細胞源、無血清培地の形成、私たちのものと同じような食用に適した足場、バイオリアクター培養法の進歩などが必要になるだろう。


私たちの手法は着々と改善されているし、開発の方向性も自然な肉が教えてくれるので、明確な目標がある

とコメント。

 いずれは完全に天然の肉と同じような食感・味・栄養を再現した人工肉を作ることができるだろうとのことだ。

References:reddit / npj Science of Food / The harvard gazetteなど / written by hiroching / edited by usagi

記事全文はこちら:人工肉最前線。ウサギと牛の筋細胞を成長させ天然肉そっくりの食感を作り出すことに成功(米研究) http://karapaia.com/archives/52283853.html