image by:NASA
気候変動がこの地球にさまざまな影響を与えていることは疑いない。だが、日々の変化はそれほど大きくないために、もしかしたらそれを実感しにくいと思っている人もいるかもしれない。
しかしNASAのプロジェクト『Images of Change』で公開されているこれらの画像を見れば、世界がどれだけ変わってしまったのか嫌でも理解させられるだろう。
このプロジェクトでは、宇宙や空から撮影された過去と現在の画像を公開している。今地球で何が起きているのかが一目瞭然でわかる。
【1. 縮小するアラル海(中央アジア)】
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ソ連が綿花などの栽培のために川の流れを変えた1960年代まで、アラル海は世界で4番目に大きな湖で、その面影は黒線で確認することができる。しかし2000年代になる頃には、アラル海は北と南に分かれ、さらに東西にも千切れてしまった。
2005年にダムが建設されたことで、北部の水位はかなり回復したが、かわりに南部は低下。また2014年には干ばつが発生し、画像にあるように南部東側はついに完全に干上がった。その影響で周辺地域の冬はいっそう寒く、夏はいっそう暑く乾燥するようになった。
【2. 北極の氷が記録的な縮小(北極海)】
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冬に大きくなり、夏に小さくなる北極の氷が、その年で一番小さくなるのは9月頃だ。2012年の最小面積は、人工衛星による記録が取られるようになった1979年以来最小だった。
1984年の写真は1979~2000年の平均最小面積とほぼ同じくらいだが、これと比較すると2012年のものは半分くらいにまで縮小している。
こうした縮小傾向は2007年以降加速しており、NASAのジョーイ・コミソ氏によると、北極海の夏の氷は今世紀中に完全に消えてしまう可能性が濃厚であるそうだ。
【3. サハラ砂漠で雪(アルジェリア)】
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非常に珍しいことだが、2016年12月にアフリカのサハラ砂漠で雪が降った。人工衛星の画像では、砂漠の入り口として知られるアルジェリア、アインセフラの南西を白く彩る雪を確認できる。
別の画像では、標高の高い場所以外、雪がすべて消えていることが分かる。ちなみにアインセフラで前回雪が降ったのは1979年2月のことだ。
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【4. 干上がったポオポ湖(ボリビア)】
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ボリビアで2番目に大きな湖で、地域にとっては大切な漁場だったポオポ湖。干ばつにくわえて、鉱業・農業利用のために川の流れが変えられたおかげで、ほとんど干上がってしまった。
1994年にも干上がったことがあり、そのときは水位が回復するまでに数年、生態系の回復にはそれ以上の年月がかかっている。雨季には3000km2まで広がる大きな湖だが、水深が3メートルと浅いために、こうした変動に非常に弱い。
【5. ミューア氷河の融解(米アラスカ州)】
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リッグス氷河とミューア氷河の下流の様子。氷河は2世紀にわたり後退を続けており、2004年の時点でヒッグス氷河は0.6キロ奥に移動。
ミューア氷河は北西7キロの地点にまで退がり、もはや2004年の写真の中に映っていない。どちらの氷河も大幅に薄くなっている。
【6. アル山脈で氷雪崩(チベット)】
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2016年7月17日、チベット、アル山脈(Aru Range)で氷河が崩壊し、狭い渓谷に巨大な氷雪崩が発生。これによってダングルー村の住人9名、羊350頭、ヤク110頭が犠牲になった。
記録史上最大級の氷雪崩で、10km2の範囲が30メートルもの厚さの瓦礫で埋もれてしまった。崩壊が起きた原因は現時点でははっきりしない。
【7. パウエル湖の干ばつ(米アリゾナ州、ユタ州)】
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長引く干ばつによってパウエル湖の水位は劇的なまでに低下している。画像は湖の北部を撮影したもの。アリゾナ州の上流から曲がりくねりながらユタ州に流れ込んでいる場所だ。1999年時点での水位はほぼ最高だったが、2014年5月には4割程度しか満たされていない。
【8. 縮小する氷河(ニュージーランド)】
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ニュージーランドには3000を超える氷河がある。だが、そうした氷河は1890年から後退し続けており、拡大する期間があったとしてもすぐに終わってしまう。
2007年、国立水圏大気研究所の科学者は、そうした変化は主に温暖化が要因であると発表。気温が大きく下がらないために、氷河は以前の大きさに戻れなくなっているのだという。
【9. 記録的なまでに縮小した海氷(ベーリング海)】
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2017~18年度の冬のベーリング海では、1850年に記録が取られるようになって以降、もっとも小さな氷しか観測されなかった。
通常、4月下旬の氷の面積は50万km2に広がるが、その年は例年の10パーセントでしかなかった。海氷が解ける場所やタイミングは、プランクトンの発生に影響し、ひいてはベーリング海全体の生態系を左右する。それだけでなく、海面は氷よりも日光の熱を吸収しやすいので、温暖化を加速させることにもなる。
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【10. 消えたオク氷河(アイスランド)】
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アイスランド中西部にあるオク火山をおおっていたオク氷河も、今や消失寸前だ。1901年の地図から推測すると、当時オク氷河の面積は38km2だった。だが1978年には3km2まで縮小し、今日ではさらにその半分よりも少ない氷が残るのみだ。
【11. フリーポート海岸の浸食(米テキサス州)】
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テキサス州フリーポートの南を走る海岸は、世界でも有数の浸食が激しい地域で、17キロの範囲にわたり毎年15メートルずつ失われている。
1984年から2016年にかけての世界の砂浜を調査したある研究によると、24%の砂浜が年に0.5メートル以上浸食が進んでいるという。一方、28%ほどは拡大しており、48%が安定している。
【12. 世界的な後退の波に逆らう氷河(チリ)】
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世界では多くの氷河が後退を続けているが、チリの南パタゴニア氷原にあるブリュッゲン氷河(ピオ11世氷河)はなぜだか前進している。
1998~2014年に、南側の先端が593メートル前進。さらに北側のグレベ湖に注いでいる先端も107メートル進んだ。氷河内部や下部の活動のほか、流れる速度や湖の深さが関連しているのではと推測されている。
【13. ジェームズ川の洪水(米サウスダコタ州)】
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2015年の合成着色画像は、米サウスダコタ州東部を流れるジェームズ川の例年通りの春の姿だ。2020年にはその姿が一変し、水が土手をこえて氾濫してしまった。
このあたりの水は2019年春から洪水水位にあった。なお下方からジェームズ川と合流しているのはパットニー・スラウ川で、こちらでもやはり洪水が起きている。
【14. タナミ砂漠の火災(オーストラリア)】
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ひどい乾燥が要因で、昨年甚大な被害を出したオーストラリアの森林火災は記憶に新しい。より最近では、同国でもっとも人口密度が低いタナミ砂漠で、いくつもの火災が発生している。
この一帯の植生は、主に背の低い草や低木だ。9月7日に撮影された衛星画像の黒い傷跡のようなものはそれまでの火災の痕跡だ。23日にはそれが大きく広がっている。
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【15. ジョージ6世棚氷の記録的な水たまり(南極)】
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冬は凍てつく南極であっても、最近の暑い夏になれば氷河表面のくぼみは水で満たされる。2020年の画像は、もっとも広範囲にわたって形成された水たまりを写したもの。140キロの範囲に広がっており、ジョージ6世棚氷にできたものとしては記録的な大きさだ。
この巨大な棚氷は、南極半島の西側から突き出るような形で、半島とアレクサンダー島を隔てる海に浮かんでいる。水たまりは棚氷を不安定にさせうるが、今のところジョージ6世棚氷はこれに耐えることができるだけの頑丈さがある。
References:15 Photos From NASA That Show Just How Much Climate Change Has Affected Earth | DeMilked/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:気候変動が地球に与えた影響が一目瞭然でわかるNASAのビフォア・アフター画像 http://karapaia.com/archives/52298175.html