細胞を痛めることなく高速で人体を3Dプリントすることに成功。最大50倍で臓器を印刷(米研究)

credit:University at Buffalo
 一軒家から食材から生体組織まで、多種多様なものを印刷できる3Dプリンターだが、1つ弱点を挙げるとすれば、仕上がるまでに時間がかかることだろう。

 しかし米ニューヨーク州立大学バッファロー校のグループが開発した3Dプリンターなら、生きている細胞が混ざった適合素材をさっと印刷して、細胞を痛めることなく超高速で3Dモデルを作ることができる。
その速度は最大で50倍だそうだ。

 将来的には移植用臓器作成への応用が期待できるという。
【3Dプリンターで生体をプリントする際の弱点】

 現在、移植用の臓器はまったく足りていない。日本臓器移植ネットワークによると、希望してから移植を受けられるまでの平均時間は1年から3年。特に希望者が多い腎臓となると15年近くにもなるという。

 必要に応じていつでも臓器を作り出せるポテンシャルを秘めた3Dプリンターに、大きな期待が寄せられているのはそうしたわけだ。


 臓器用3Dプリンターの研究でよく使われるのが、ヒドロゲルのような生体適合性のある素材に生体細胞を混ぜたものだ。

 しかし印刷のプロセスでは、細胞に大きな負荷がかかるために、従来の3Dプリンターのようにダラダラと時間をかけていたのではせっかくの細胞がダメになってしまう。

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Building a Selective Laser Sintering (SLS) 3D Printer!

【最大50倍速で印刷、血管も構築できる】

 新たに考案された「FLOAT(fast hydrogel stereolithography printing)」という印刷法なら、従来の10~50倍もの速さで印刷することが可能だ。

 FLOATは、光重合を緻密にコントロールすることで、数分のうちにヒドロゲルからセンチ単位の3Dモデルを印刷する。

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 ただ速いだけでなく、モデル内部に血管を構築し、栄養を含んだ溶液を奥深くに流し込むこともできる。移植された臓器は、きちんと血液が供給されなければいずれ死んでしまうので、この点は特に重要な部分だ。


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【細胞を印刷のストレスから解放】

 「センチサイズのヒドロゲルモデルを素早く印刷することができます。従来の3Dプリンターでは長期間環境ストレスにさらされてしまいますが、この方法ならそれを回避して変形や細胞の損傷を大幅に減らすことができます」と、研究グループのチョウ・チー氏はFLOATの特長について説明している。

References:interestingengineering / buffalo/ written by hiroching / edited by parumo

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