人間の遺灰で作った人工魚礁を海に投下。海洋生物たちが棲みつき、フロリダの海岸線が復活(アメリカ)


 海洋汚染や気候変動による海水の温度の上昇などにより、近年、サンゴの死滅が危惧されている。死滅するサンゴ礁を食い止めようと、様々な取り組みが行われているが、その中でも注目されているのが人工魚礁(人工サンゴ)だ。


 遺灰を混ぜて作るリーフボール(人工魚礁)を海底に投下するこの新たな自然保護葬は、環境保護に貢献できる他、海洋生物に住処を提供することになり、最近ではフロリダの海岸線が復活しつつあるという。『UNILAD』などが伝えている。

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【消えゆくサンゴを救うための新たな取り組み】
 サンゴ礁は、海洋生物だけでなく人間にとっても漁業資源、観光資源を支える重要な役目を果たしている。

 ハリケーンによる高潮に対する自然の障壁として機能しているサンゴ礁は、特にハリケーンが多く襲来する地域の海岸線にとっては必要不可欠だ。

 しかし、気候変動の影響などにより、多くの海域でサンゴ礁が死滅の危機を迎えている。

 あらゆる海洋生物の生息地を提供し、生物多様性に富んだ生態系といえるサンゴ礁が致命的なリスクを抱えることは、海洋の生態系のバランスが大きく崩れることを示す。

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【個人の遺灰で作ったリーフボールを海に沈める「海洋葬」で自然保護】
 人間にとっても、多くの海洋生物にとってもサンゴ礁は不可欠な存在。そこで、消えゆくサンゴ礁を救うための活動として、フロリダにある企業が人工魚礁(人工サンゴ)を作って海洋生物の住処を提供する取り組みを実施中だ。

 それは、海洋葬として個人の遺灰を入れたリーフボールを、絶滅が危惧されるサンゴ礁の代わりに海に沈めることだ。これにより海の好きな故人の望みが叶う上に、環境保護に貢献できるとして大きな注目を集めている。

 環境NGOのリーフボール財団は、葬儀会社『Eternal Reefs』と提携し、メキシコ湾の東海岸沿いの海底に、海流に耐えられるよう特別に作成されたリーフボール2500個を投下した。

 環境にやさしいコンクリートで作られているこの人工サンゴには、遺族や友人によって中央部分に遺灰が収められ、故人へのメッセージや遺族の手形、特別な思い入れのある物などを一緒に入れることができる他、真鍮のメダルに故人の名前が記されるため他者のものと混同することはない。

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 これらのリーフボールはGPSで場所が管理されており、ハリケーンへの耐性も証明されているため海底を移動することがなく、位置を見失うこともない。

 また、1つのリーフボールには複数分の遺灰を含むことが可能で、家族で共に海底に眠ることもできる。

 このユニークな自然保護葬の費用は、リーフボールのサイズにより異なるが、4,000~7,500ドル(約44万~82万円)ということだ。
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Eternal Reefs Video Brochure【フロリダの海岸線が復活の兆し】
 現在、世界70ヵ国の海にこのリーフボールは既に70万個以上も沈められている。

 専門家によると、人工のリーフボールは海洋生物の25%が生息する瀕死のサンゴ礁の回復に役立つ可能性があるという。[画像を見る]  事実、フロリダ東部の沖合に点在している人工サンゴのリーフボールは、非正統的な解決方法ではあるが、海洋生物にとっては大きな救いになっており、生態系復活の兆しがみられているようだ。


written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:人間の遺灰で作った人工魚礁を海に投下。海洋生物たちが棲みつき、フロリダの海岸線が復活(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52302022.html