
最近ドイツでは、暴言が口をついて出てしまう若者が増えているという。彼らは自分を、不謹慎で冒涜的な言葉を発してしまう症状が出ることがある、「トゥレット症候群」だと訴えているがそうではなさそうだ。
専門家が診断したところによると、彼らは一様に、ドイツで人気のユーチューバーの影響を受けているだけだという。
しかし、この奇妙な集団ヒステリーが起きている背景には、新型コロナや気候変動によって若者が未来に不安を抱いている現状があるようだ。
ドイツで、自分はトゥレット症候群だと訴える若者が急増 トゥレット症候群とは、声や行動のチック(咳払いや短い叫び声、まばたきや顔をしかめるなど)を特徴とする神経精神疾患だ。
ときに意図せずに汚い言葉や卑猥な言葉が口から出てしまう「汚言症」をともなうことでも知られている。
ドイツの専門医にトゥレット症候群の疑いがある10代の若者が訪れるようになったのは、2019年6月以降のことだったという。
彼らは「Pommes(フライドポテト)」「Bombe(爆弾)」「Heil Hitler(ヒトラー万歳)」「Du bist haslich(ブサイク)」「Fliegende Haie(空飛ぶサメ)」といった汚言を繰り返していた。
また、また学校でペンを投げたり、キッチンの卵を潰したりといった暴力的な奇行を繰り返す人たちもいた。
ところが医師がきちんと診察してみると、本当にトゥレット症候群であると診断された人は1人もいなかった。
たとえば彼らが口にする汚言は数え切れないほどで、一般的なトゥレット症候群の患者よりもはるかに多かった。また、そうした汚言はほぼ毎週のように目まぐるしく変化した。
こうした特徴は、本物のトゥレット症候群の診断基準には一致しないのだ。
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photo by iStock
実際には人気ユーチューバーの影響 『Brain』(21年8月23日付)に掲載された論文によると、どうやらその原因はあるYouTubeチャンネルだったようだ。
最初の患者が現れる数ヶ月前、ドイツではあるYouTubeチャンネルが開設された。「Gewitter im Kopf("脳内サンダーストーム"の意)」というそのチャンネルは、ドイツで2番目に成功した人気ユーチューバー、ヤン・ツィンマーマン氏が運営しており、多くの若者が視聴している。
彼はその動画の中で、トゥレット症候群から連想されがちなイメージ通りの奇行を見せている(彼自身は、それらをトゥレット症候群が原因と主張していた)。患者たちが口にする汚言も彼が使っていたものだ。
[動画を見る]
Tourette im Zoo | #Teil 1集団ヒステリー改め、集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI) ツィンマーマン氏の言葉は、毎週新しい動画が投稿されるたびに変わっている。そして、それに合わせるようにして、患者たちの汚言も変化していった。
こうしたことから、どうやらツィンマーマン氏の動画を見た若者たちが、それを真似しているらしいことがうかがえた。
このようにソーシャルメディアを通じて広まったことから、研究グループはこの集団ヒステリー(集団性心因性疾患)に「集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI)」という名称を提案している。
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photo by Pixabay
背景に新型コロナや気候変動への不安 幸いにも、患者たちの多くは「トゥレット症候群などではなく、集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI)」と診断された途端、その症状が治ったという。
しかし研究グループは、このような奇妙な現象が起きている背景として、新型コロナや気候変動による不安から、将来の見通しが立たなくなっている現状を挙げている。
こうした状況に若者たちはストレスを感じており、その反応として集団ヒステリーが起きていると考えられるのだそうだ。
ちなみに12世紀から16世紀にかけて、ヨーロッパでは「踊りのペスト」と呼ばれる奇妙な集団ヒステリーが発生していたようだ。
References:Psychiatrists identify a new mass sociogenic illness spread through social media - SapienJournal / written by hiroching / edited by parumo
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専門家が診断したところによると、彼らは一様に、ドイツで人気のユーチューバーの影響を受けているだけだという。
しかし、この奇妙な集団ヒステリーが起きている背景には、新型コロナや気候変動によって若者が未来に不安を抱いている現状があるようだ。
ドイツで、自分はトゥレット症候群だと訴える若者が急増 トゥレット症候群とは、声や行動のチック(咳払いや短い叫び声、まばたきや顔をしかめるなど)を特徴とする神経精神疾患だ。
ときに意図せずに汚い言葉や卑猥な言葉が口から出てしまう「汚言症」をともなうことでも知られている。
ドイツの専門医にトゥレット症候群の疑いがある10代の若者が訪れるようになったのは、2019年6月以降のことだったという。
彼らは「Pommes(フライドポテト)」「Bombe(爆弾)」「Heil Hitler(ヒトラー万歳)」「Du bist haslich(ブサイク)」「Fliegende Haie(空飛ぶサメ)」といった汚言を繰り返していた。
また、また学校でペンを投げたり、キッチンの卵を潰したりといった暴力的な奇行を繰り返す人たちもいた。
ところが医師がきちんと診察してみると、本当にトゥレット症候群であると診断された人は1人もいなかった。
たとえば彼らが口にする汚言は数え切れないほどで、一般的なトゥレット症候群の患者よりもはるかに多かった。また、そうした汚言はほぼ毎週のように目まぐるしく変化した。
こうした特徴は、本物のトゥレット症候群の診断基準には一致しないのだ。
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実際には人気ユーチューバーの影響 『Brain』(21年8月23日付)に掲載された論文によると、どうやらその原因はあるYouTubeチャンネルだったようだ。
最初の患者が現れる数ヶ月前、ドイツではあるYouTubeチャンネルが開設された。「Gewitter im Kopf("脳内サンダーストーム"の意)」というそのチャンネルは、ドイツで2番目に成功した人気ユーチューバー、ヤン・ツィンマーマン氏が運営しており、多くの若者が視聴している。
彼はその動画の中で、トゥレット症候群から連想されがちなイメージ通りの奇行を見せている(彼自身は、それらをトゥレット症候群が原因と主張していた)。患者たちが口にする汚言も彼が使っていたものだ。
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Tourette im Zoo | #Teil 1集団ヒステリー改め、集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI) ツィンマーマン氏の言葉は、毎週新しい動画が投稿されるたびに変わっている。そして、それに合わせるようにして、患者たちの汚言も変化していった。
こうしたことから、どうやらツィンマーマン氏の動画を見た若者たちが、それを真似しているらしいことがうかがえた。
このようにソーシャルメディアを通じて広まったことから、研究グループはこの集団ヒステリー(集団性心因性疾患)に「集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI)」という名称を提案している。
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背景に新型コロナや気候変動への不安 幸いにも、患者たちの多くは「トゥレット症候群などではなく、集団ソーシャルメディア誘発性疾患(MSMI)」と診断された途端、その症状が治ったという。
しかし研究グループは、このような奇妙な現象が起きている背景として、新型コロナや気候変動による不安から、将来の見通しが立たなくなっている現状を挙げている。
こうした状況に若者たちはストレスを感じており、その反応として集団ヒステリーが起きていると考えられるのだそうだ。
ちなみに12世紀から16世紀にかけて、ヨーロッパでは「踊りのペスト」と呼ばれる奇妙な集団ヒステリーが発生していたようだ。
それは死ぬまで踊り続けるという危険な集団ヒステリーだ。
References:Psychiatrists identify a new mass sociogenic illness spread through social media - SapienJournal / written by hiroching / edited by parumo
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