永久凍土に多数出現するシベリアの巨大穴の謎。気候変動の影響
 近年、シベリアに広がる永久凍土では、突如爆発が起きてぽっかりと大穴が残されるという謎の現象が頻発して起きている。

 その原因は気候変動、地球温暖化ではないかと疑われてきたが、最新の研究によって、この疑惑が正しかったことが確かめられたそうだ。


シベリアの永久凍土に多数出現した謎の大穴 永久凍土の大穴が世界から注目されるようになったのは2014年のこと。きっかけはヤマル半島で突然爆発が起き、巨大なクレーターのような大穴が開いたことだ。

 これ以降、この地域では20以上の大穴が記録されている。最近でも、2020年8月にヤマル半島中央部で、直径20メートルの大穴(「C17」と呼ばれる)が出現した。

 当時、隕石が原因ではないかと噂されたが、その後の調査によって、大穴ができるのは天然ガス田の真上であることが明らかになった。こうして疑惑の目は、温暖化やガスの採掘に向けられるようになる。


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2020年8月に発見された新たな大穴「C17」(Evgeny Chuvilin/Skoltech)気温の上昇で永久凍土が溶け、メタンガスが放出 ロシア、スコルコボ科学技術研究所のグループが『GeoSciences』(21年9月17日付)で発表した研究によると、かねてから疑われていたように、その原因は温暖化である可能性が濃厚であるようだ。

 C17周辺の永久凍土や地質を調査したところ、気温の上昇によって永久凍土が解けてガスの圧力に耐えられなくなり、爆発することが確認されたのだ。

 永久凍土の地下にある空洞にはメタンがたまっており、まるで炭酸入りのペットボトルのように圧力が高まっている。

 気温が上昇すると、その蓋の部分である永久凍土が解けて弱くなる。さらに空洞内部でも永久凍土が解ける。すると氷に閉じ込められていたメタンが放出され、圧力が高まる。


 また気温の上昇は、ガスと水の循環を速めるので、いっそう永久凍土の劣化が進む。

 こうして天井が内部の圧力に耐えられなくなると爆発が起き、後にはぽっかりとした大穴が残されるのだ。

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別の角度からの「C17」。眺めていると吸い込まれそうだ(Evgeny Chuvilin/Skoltech)西シベリア北部特有の現象 非常に危険な現象だが、ほかの地域ではそれほど心配しなくてもいいという。というのも、このような爆発が起きるのは、西シベリア北部特有の永久凍土と地質ゆえだからだ。

 そのため同じ北極圏であっても、ヤマル半島やギダン半島以外では爆発は起きにくいだろうと考えられている。


 だが油断は禁物だ。永久凍土でなくても巨大な陥没穴はここ最近、トルコメキシコなど世界各地で出現している。

References:Climate Change Is To Blame For Those Giant Explosive Craters In Siberia | IFLScience / written by hiroching / edited by parumo


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シベリアで偶然発見された深さ50メートル以上の巨大な穴。永久凍土が溶け地下にたまったメタンが爆発か(ロシア)


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シベリアのツンドラから漏れ出すメタンガスが作り上げたブラックホールのような巨大な穴(ロシア)


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このままシベリアは飲みこまれるのか?巨大な陥没穴の幅が9か月で4倍に(ロシア)


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突如水が湧きだし沈み込んでいくロシアの町。一体何が起きているのか?


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地球温暖化の影響で、永久凍土に覆われていたシベリアにも人が住めるようになる(ロシア・アメリカ共同研究)

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