ついに!本物のビールとまったく風味が変わらないノンアルコールビールが開発される
 ノンアルコールのビールは、本物のビールに比べればその風味は少々劣ると言われている。日本の場合、企業努力により、本格的なノンアルコールビールも開発されているようだが、海外では味の評価は低かったようだ。


 そしてついに!ビール好きを納得させる究極のノンアルコールビールが、デンマークの科学者たちによって開発されたという。

  新たな醸造方法によって作られるそのノンアルコールビールは、普通のビールと風味が全く変わらない上に、環境負荷が小さく、自然環境に配慮されているという。

ノンアルコール・ビールに欠けているのはホップの香り これまでの海外のノンアルコール・ビールは、風味において普通のビールに敵わなかった。味わいに深みがなく、水っぽいのがその理由だという。

 デンマーク、コペンハーゲン大学のソティリオス・カンプラニス教授によれば、それは当然なのだという。「ノンアルコール・ビールに欠けているのは、ホップの香りです」と、同教授は説明する。


 従来のノンアルコール・ビールの製造法では、アルコールを抜くために、加熱するなどの方法がとられてきた。しかし、そのときにホップの香りまでが抜けてしまうのだ。

 あるいは発酵を最小限に抑えるという方法もある。だが、これもやはりホップの香りを損なうことになる。ホップがその独特の風味をビールに与えるにはアルコールが必要だからだ。

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ホップの香りを生み出す分子の生成に成功 そこでカンプラニス教授らは、ノンアルコールでありながら、芳醇なホップの香りを楽しめるビールの醸造法を『Nature Biotechnology』(2022年1月18日付)で紹介している。


 同教授らが考案したのは、ホップの香りを生み出す、モノテルペンが生成する「モノテルペノイド」という小分子を作り出す方法だ。

 これまでのビール作りでは、醸造タンクの中に高価なホップを投入し、その香りを与えていた。

 しかし新製法では、イースト菌を利用してホップの香り分子を作り出す。これを醸造プロセスの最終段階で添加して、ビールから失われてしまった芳醇なホップの香りを回復させるのだ。

 こうすることで「大勢から愛されている普通のビールの風味を取り戻す」ことができる。今まで誰も作ることができなかった、画期的なノンアルコール・ビールであるという。


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環境負荷も軽いSDGsなビール この醸造法はノンアルコール・ビールの風味をアップさせるだけでなく、環境負荷が軽い持続可能性のあるビール作りでもあるという。

 というのもホップの香りをつけるために、実際のホップは必要ないからだ。

 実はホップは環境に優しい作物ではない。たとえば、1キロのホップを生産するためには、2.7トンもの大量の水が必要になる。

 またホップは主にアメリカ西海岸で生産されている。そこからホップを世界各地のビール醸造所に輸送せねばならず、その際には冷蔵庫も必要になる。


 一方、今回の新製法では、まったくホップを使わない。

 栽培に必要な水も輸送の手間も省けるので、ビール醸造に使われる水は従来の1万分の1で済み、排出される二酸化炭素も100分の1に削減できる。ゆえに環境に優しいビールなのだ。

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アルコールビールにも応用可能 なお、この新製法を応用すれば、普通のビールもホップなしで生産できるとのこと。「長期的にはこの方法でビール業界そのものを変えていきたいと考えています」とカンプラニス教授は野心的だ。

 すでにデンマークの醸造所で試験され、2022年10月にはこの技術をビール業界全体で利用できるようにする予定であるそうだ。


References:Researchers make non-alcoholic beer taste like regular beer – University of Copenhagen / written by hiroching / edited by parumo

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