体温は代謝率よりも寿命に影響を与える。長生きしたいなら体温は下げた方がよいとする研究結果
 長生きしたいなら、代謝率よりも体温を気にした方がよさそうだ。

 中国科学院深圳先進技術研究院(SIAT)をはじめとする研究グループによると、意外にも長生きするなら、代謝を上げて、体温を下げた方がいいようだ。


 この研究は『Nature Metabolism』(2022年3月14日付)に掲載された。 

代謝と寿命の関係性は不確実 「生き急ぐ」という言葉がある。何かに追われるかのように、危険を顧みないで生きる人は、思わぬ不運に見舞われ、往々にして若くして亡くなるものだ。

 だが、生物学的な文脈では少々意味が違う。これまでの研究では、代謝が速いとそれだけ早死にする傾向が観察されている。これを「生き急ぐ」と表現するのだ。


 ただし特定の種では、代謝と寿命の関係は、それほどはっきりしない。

 一般的に動物の場合なら、摂取するカロリーを制限すると、長生きすることが知られている。これはカロリー制限によって代謝率が下がるからだと考えられている。

 一方で、運動などで代謝を高めると、むしろ長生きにつながることもある。

 代謝率と寿命の関係をあやふやなものにする原因の1つは、それがしばしば体温の変化と関係しているからだという。

 一般的に、代謝率が低いと体温が低くなる。
カロリー制限によってマウスが長生きした場合、それが代謝率が低下したからなのか、体温が低下したからなのかは、これまで明確になっていなかった。

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体温を下げたほうが長生きする 今回の研究では、マウスやハムスターの代謝率と体温を逆方向に操作して、はたして寿命にはどちらがより重要な要素なのか探られている。

 恒温動物は一般に、好適な温度範囲では単に体からの放熱を調節することによって一定の体温を維持することができる。この温度範囲を「熱的中性域(温熱中間帯)」という。

 マウスやハムスターが高温にさらし、熱的中性域の上限で、体温だけを上昇させ代謝を低下させる実験を行った。

 「マウスをこの条件にすると、寿命が短くなることがわかりました。
代謝が下がっても寿命は延びず、体温が高くなったことで寿命が短くなったのです」と、SIATのジョン・R・スピークマン教授は話す。

 次に、高温にさらしたマウスとハムスターに小さな扇風機で風を当て、代謝に影響を与えず体温を下げてみた。すると彼らは長生きをしたのだ。

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寿命に影響を与えるのは代謝より体温 こうした結果からは、代謝率の影響よりも、むしろ体温の方が寿命を大きく左右すると考えられる。

 代謝率よりも、体温を下げた方が長生きするには効果的だったからだ。どうやら生物学的には「生き急ぐと早死にする」より、むしろ「寒く生きると長生きする」の方が正しいようだ。
マウスとハムスターを高温にさらしつつ、体温が寿命に与える影響を代謝率から切り離しました。その発見に興奮しています。

小型扇風機で風を当てて、代謝率を変えることなく、体温を下げ、周囲の温度が寿命に与える影響を逆転させたのです
 と、ジャオ・ジジュン氏は述べている。

References:Live Fast, Die Young? Or Live Cold, Die Old? - Neuroscience News / written by hiroching / edited by parumo

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