ハイキングで遭難する理由とその対処法【ライフハック】
 これからの季節、山登りやハイキングに出かけて道に迷ったり遭難したりといったニュースも増えそうだ。

 しっかり準備をして行ったつもりでも、迷う時には迷ってしまう。
それが山の恐ろしさでもある。

 そこで今回は、アメリカの各国立公園の遭難・救助データベースをもとに「人間はなぜハイキング中に遭難するのかか?」「遭難したとき、生き延びるためにすべきことは?」という研究結果をご紹介しよう。

アメリカのデータに見る「ハイキングで迷子になる理由」とは この調査はアメリカでハイキングやキャンプのヒントなどを提供している SmokyMountains.comが発表したもので、アメリカの各国立公園で発生した、100件以上の救助データを元に、どのように遭難したハイカーたちが、どのように生還したのかをまとめたものだ。

 この研究によれば、ハイカーたちが遭難した原因は以下の通りである。
遭難の原因
・トレイルから外れた(41%)
・悪天候による(17%)
・トレイルからの転落(16%)
・グループからはぐれた(8%)
・怪我をした(7%)
・暗闇の中で迷った(6%)
・機器の紛失または故障(5%)
・その他(1%)


[画像を見る]

image credit:photoAC遭難後、生還できた4つの理由 遭難後、無事に生還できた要因は「暖をとれた」「避難場所の確保」「水」「食料」の4つだという。

 サバイバーはどのように体温を維持したのかというと以下の通りとなっている。
体温はどうやって維持していたのか
・衣服(12%)
・火(10%)
・キャンプ用品(10%)
・犬を含めた仲間の体温(5%)
・身体を覆った(4%)
・身体を動かした(4%)
・地面を掘った(3%)
 カナダのブリティッシュコロンビア州に住むアネット・ポイトラスさん(56)は、犬の散歩中に転んで負傷し、動けなくなってしまった。彼女は3匹の犬と共に、3日間豪雨に耐えながら救助を待った。

 彼女が生き延びられたのは、愛犬たちが交代で彼女を温め、食べ物を見つけてきてくれたおかげである。

 最終的に愛犬の吠え声が捜索隊に彼女の居場所を知らせ、無事の救出に繋がった。

[画像を見る]

photo by iStock
避難場所はどうしていたか
・キャンプ道具(テントなど)(11%)
・洞窟など(9%)
・木の下(8%)
・自分で作った洞窟やシェルター(8%)
・岩の間(7%)
・倒木の中(4%)
・土の中(3%)
 カリフォルニア州スコーバレーのスキーリゾートで、バックカントリーに出て道に迷ってしまったアラン・オースティンさん(45)は、ボーイスカウトで習ったことを思い出し、雪の中に穴を掘って2日間過ごした。

 穴の中には、断熱材代わりに松の枝を並べていたという。
その後捜索に来たヘリコプターに発見され、無事生還することができたそうだ。

[画像を見る]

image credit:photoAC
水はどうやって確保したのか
・川など水辺(24%)
・雪や雨、水たまり(16%)
・携帯していた水(13%)
・自分の尿(6%)
・落ち葉や苔、草をなめて水分をとった(2%)
※一方で遭難者の9%は、救助されるまで水を摂取していなかったという
 ハワイのキラウエア火山の溶岩地帯で遭難したギルバート・デューイ・ゲードケさん(41)の場合は、暑さのために方向感覚も失いかけていた。

「脱水症状で死ぬくらいなら感染症のリスクを冒すほうがマシ」だと判断した彼は、苔に含まれた水を絞って喉を潤し、5日後に無事救助された。
食料はどこから手に入れたか
・携帯していた自前の食料(35%)
・木の実や果物など(9%)
・植物(9%)
・昆虫(3%)
・採集と狩猟(3%)
※ただし17%のハイカーは食料を持参していなかった
 キングスキャニオン国立公園で、落石により骨折したグレッグ・ハインさん(33)の場合は、安全な場所へ移動するために、持っていた装備をすべて捨てなければならなかった。

 彼はその後5日間、骨折の痛みに耐えながら、約2.6㎞の距離を這いつくばってさまよい続けた。その間、途中で見つけた昆虫を何でも口に入れて命を繋いだという。


 最終的に彼が食べたのは、コオロギ2匹、蛾5~6匹、大きなアリ8~10匹、3~4匹のコオイムシだった。

[画像を見る]

image credit:photoAC

 さらにこの調査では、遭難したときの行動についてもまとめている。
遭難した時、どんな行動をとったか
・移動を続けた(65%)
・その場にじっとしていた(35%)
どうやって生還したのか
・捜索隊に救助された(77%)
・自力で道をみつけて帰還した(23%)
 これを見ると、遭難を自覚した後も、歩き続けた人が多いことがわかる。とは言え、自分で正しい道を見つけ、自力で戻って来られるケースは少数派のようだ。日本における遭難理由は? これはアメリカの国立公園でのデータだが、日本の場合はどうだろう。

こちらは山岳遭難者のデータだが、令和5年の遭難理由を見ると以下のようになっている。
・転倒(23.5%)
・道迷い(22.2%)
・病気(16.9%)
・滑落(13.1%)
・疲労(12.2%)
・その他(12.0%)
 どうやら転倒や滑落でケガをして動けなくなったパターンや、途中で体調を崩してしまったケースが多いようだ。

 たとえ難易度の低いコースでも、思いもよらない事態で動きが取れなくなることは、誰にでも、いつでも起こり得るのだ。

[画像を見る]

photo by iStock山に行くなら事前の準備を万端に 水と食料の用意は当然として、テントやエマージェンシーシートなど、雨風を防ぎ、暖をとれる装備も持って行こう。日本でなら使い捨てカイロや食品用の加熱パックなどもいいだろう。

 山の天気は変わりやすく、晴れだと思っていても突然風雨が襲ってくることもある。ずぶぬれになって身体が冷えると、低体温症にもなりかねない。
傘は手がふさがってしまうので、レインウェアを用意するのがおススメだ。

 そして紙の地図とコンパス、懐中電灯もお忘れなく。スマホに慣れると頭から抜けがちだが、電波が届かなかったり充電が切れたりした場合、やっぱり頼りになるのはアナログなアイテムなのである。

[画像を見る]

image credit:photoAC

 日本列島を桜前線が北上中の今日この頃。外に出るのも心地好い季節になってきた。これからGWも来ることだし、山歩きに出かける機会もあるかもしれない。
ぜひ十分な事前準備と体調管理をして、楽しいハイキングを!

References:Here's How People Are Getting Lost in National Parks — and What They Do to Survive, According to a New Study / written by ruichan/ edited by parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。