日本人の祖先は3つの系統に関わっていることが全ゲノム解析で明らかに
 理化学研究所は、日本人の全ゲノム情報を解析し、日本人の祖先には大きく3つの系統が関わっているとする研究結果を報告した。日本人の祖先は縄文人と弥生人の他に、新たな3つ目の系統が発見されたという。


 また現代の日本人は、ホモ・サピエンスだけでなく、ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅した旧人類からも遺伝子を受け継いでいることも判明し、これが体の特徴や病気と関係していることがわかったという。

日本人の先祖は3つの系統に関わっている この研究は理化学研究所が、バイオバンク・ジャパンから提供された日本人3256人分の全ゲノム情報を分析したもので、ヨーロッパ系以外の人々を対象とした研究としては最大級のものだ。

 これまで日本人の起源は、縄文時代の狩猟採集民「縄文人」と、その後弥生時代に大陸から移住してきた稲作民族「弥生人」とされることが多かった。

 その一方、縄文人と弥生人にくわえ、東アジアから古墳時代に日本に渡ってきた3つ目の系統があるという説も提唱されており、研究者の間で議論が交わされてきた。

 そして今回の分析では、やはり日本人の遺伝子は3つの起源があるらしいことが確認されている。

 その1つは「縄文系」。
その名の通り、縄文人に由来していると考えられ、沖縄で暮らす人たちがとりわけ多くその遺伝子を受け継いでいる。

 2つ目は「関西系」。彼らの遺伝子は関西地方の人たちが特に受け継いでおり、古代中国の黄河やその上流地域で生きていた人たちとつながりがある。

 そして3つ目は「東北系」。こちらは縄文人との遺伝的親和性が高いほか、韓国三国時代(4~5世紀)の古代韓国人と関係していると考えられるという。

 東北地方は歴史的に蝦夷(えみし)が暮らしていた地域だが、日本人の遺伝的な成り立ちとしてこの系統にスポットライトを当てたのは、この研究が初であるそうだ。


[画像を見る]

全ゲノムシーケンスデータを使用した日本人集団構造結果 / image credit:理化学研究所プレスリリースネアンデルタール人やデニソワ人から受けついた遺伝子 今回の研究ではほかにも、ネアンデルタール人から受け継いだ42のDNAとデニソワ人から受け継いだ2つのDNAが、日本人の複雑な特徴と結びついているだろうことも明らかになっている。

 こうしたすでに絶滅した旧人類の遺伝子は、ホモ・サピエンスが彼らと交雑した結果、日本人の体に受け継がれるようになった可能性が高い。

[画像を見る]

大規模な日本人の全ゲノムシーケンスから日本人集団の遺伝的構造などを解明 / image credit:理化学研究所プレスリリース日本人の身体的特徴や健康とと関連 そしてそれは日本人の身体的特徴や健康とも関係しているという。

 たとえば、「NKX6-1遺伝子」と「POLR3E遺伝子」に含まれるデニソワ人由来のDNAは、それぞれ2型糖尿病と身長と関連していた。

 またネアンデルタール人由来の11のDNA配列は、2型糖尿病、冠動脈疾患、アトピー性皮膚炎、前立腺がん、関節リウマチなど、7つの疾患と関連していた。

 こうした発見は、日本人はもちろんのこと、世界中の人々の個別化医療や新薬の開発につながる可能性があるとのことだ。


 この研究は『Science Advances』(2024年4月17日付)に掲載された。

References:全ゲノム解析で明らかになる日本人の遺伝的起源と特徴 | 理化学研究所 / Modern Japanese people arose from 3 ancestral groups, 1 of them unknown, DNA study suggests | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。