2023年にNASAの探査機が地球に持ち帰った小惑星ベンヌの石と塵が混じったサンプルから、意外な事実が判明した。
ベンヌのサンプルには、太陽系の内側と外側、両方の成分が混ざり合っていたのだ。
遠く離れた場所の物質が、なぜ1つの小惑星に混在しているのだろうか。
スイスのチューリッヒ工科大学の研究チームによると、その原因は形成途中だった木星にあるという。
木星が壁となって大きな粒をせき止め、すり抜けた細かい塵(ちり)が水が凍る境界線付近で混ざり合い、ベンヌを形成する材料になった可能性があるという。
この研究成果は 『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aei9107]』誌(2026年9月)に掲載された。
NASAが持ち帰った小惑星ベンヌのサンプルから判明した事実
2023年9月、NASAの探査機「オシリス・レックス」が、小惑星ベンヌの表面から採取した約120gの石や塵(ちり)が混じったサンプルを地球に持ち帰った。
このうちの貴重な0.5gが、スイスにあるチューリッヒ工科大学のマリア・シェーンベヒラー教授の研究室に運ばれた。
研究チームはすぐに分析を開始し、サンプルに含まれる鉄、チタン、クロムの同位体を調べた。
同位体とは、同じ元素でも重さがわずかに異なる原子のことだ。その割合は物質が生まれた場所によって異なるため、どこで生まれたかを示す「指紋」のような役割を果たす。
分析の結果、ベンヌは日本の探査機「はやぶさ2」が調査した小惑星リュウグウや、地球では非常に珍しい「CI隕石」と呼ばれるグループとよく似た特徴を持っていることがわかった。
ベンヌになぜ太陽系の内と外の成分が混在しているのか
これまで科学者たちは、ベンヌのように水分や炭素を多く含む小惑星は、彗星と同じように太陽系の遠く外側で形成されたと考えていた。
小惑星の成分は大きく分けて2つのグループが存在する。
地球などの惑星が生まれた太陽系の内側の物質からなるグループと、寒くてガスや氷が多い外側で作られたグループだ。
研究チームがベンヌのサンプルの同位体を調べたところ、チタンとクロムは太陽系の外側で作られた特徴を示していた。
だが鉄の同位体は、外側で作られた他の隕石と比べて、太陽系の内側で形成された小惑星に近い成分だったのだ。
遠く離れた太陽系の内側と外側の成分が、なぜ1つの小惑星の中に混ざり合っているのだろうか。
「木星の壁」が塵をせき止めた可能性
研究チームは、その原因が形成途中の「木星」にあるという新しいシナリオを導き出した。
今から約46億年前、太陽系がまだ形作られていた頃、急速に成長した木星がガスや塵の円盤の中で壁のように機能した。
木星は、ミリサイズの大きめの粒が太陽に向かって内側へ移動するのをせき止めたのだ。
一方で細かい塵の粒子は木星の壁をすり抜け、内側へと流れ込んだ。
太陽から遠く、水が凍るほど温度が下がる「スノーライン」と呼ばれる境界線の付近で、太陽系外側からの細かい塵と内側の成分が混ざり合い、特定の場所に集まったと考えられるという。
水が凍る境界線で誕生したベンヌが初期太陽系の姿を伝える
スノーライン付近に集まった細かい塵は、水が凍った氷を接着剤にして互いにくっつき合った。
こうして内側と外側の細かい塵が混ざり合って固まり、小惑星ベンヌの元となる天体が誕生した。
ベンヌが豊富な水分を含んでいるのも、この境界線の近くで誕生したためと考えられている。
近くの氷が蒸発し、その水蒸気がこの場所で再び凍りついたのだ。
その後、何十億年もの時間をかけて他の天体の重力や衝突の影響を受け、ベンヌは現在の地球に近い軌道へと移動してきた。
シェーンベヒラー教授は、地球のような岩石の惑星を作る元になった化学元素の混ざり具合を、ベンヌのサンプルが最もよく示しているかもしれないと語っている。
わずか0.5gのベンヌのサンプルの分析は、初期の太陽系で木星が果たした役割に新たな手がかりをもたらしたかもしれない。
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References: Mystery surrounding the formation of asteroid Bennu solved | ETH Zurich[https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2026/09/mystery-surrounding-the-formation-of-asteroid-bennu-solved.html] / DOI: 10.1126/sciadv.aei9107[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aei9107]











