自宅のNAS(Network Attached Storage=LAN接続のHDD)が大量のエラーを吐き出し始めた。「ATA error countの増加を検出」という内容だ。
ディスクが故障する前兆だという。その回数は30日間でなんと1万5738回。毎分のようにエラーメッセージを吐き出すような状態だった。このNASは2013年11月に購入したもの。既に13年以上も稼働し続けている。大量の写真や動画データをはじめ、とにかくあらゆるデータを全部抱え込んで24時間回しっぱなしにしていた。さすがにそろそろやばそうだ。かなり面倒だがしょうがない。意を決してHDDを換装することにした。
 構成は3TBが2つ。故障に強いミラーリングなどは特にせず、普通に3TB×2という「個別ボリューム設定」で使っていた。死にかけていたのは「ディスク2」。
同時に稼働を開始した「ディスク1」も同じく老朽化が進んでいるはずだ。ただ、利用頻度が多かった「ディスク2」が先に天に召されようとしている。とりあえずエラーまみれのディスク2を取り換えることにした。
 2つのディスクとも、既にデータ容量はパンパンで、管理画面の残量計も真っ赤。そこで、ほんの少し増量し、4TBのHDDを用意した。購入したのは、PC用3.5インチHDDで、最安値に近かったSeagateのBarraCuda。価格はおよそ2万5000円だった。NASに使うにはあまり適さないが、価格優先で選択した。だいぶ高くなったような気がして改めて調べてみると、前回購入時の価格は3TBで1本1万880円だった。HDD価格はこの3年で3倍近く上がっている。特に昨年の秋以降、値上がりが激しい。BCNランキングで集計したところ、この8月の税抜き平均単価は8TBモデルが4万1600円。
23年8月が1万4900円だったので2.8倍になった。同じく、4TBモデルが2万8300円で2.5倍、2TBモデルが1万8400円で2.2倍に値上がりしている。一方、24年2月に登場した24TBモデルは、この中で唯一値下がりした。8万6000円と、24年2月比で0.9倍と価格が1割下がった。
 この3年で販売数が最も多かったのは8TBモデル。主要容量別の1GB単価が2000円前後と最も安く「お買い得」だったからだ。ピーク時の24年11月は56.3%と過半を占めていた。この8月でも30.3%を占め、最も売れていることには変わりない。しかし、この7月には一時4TBモデルが3割を超えトップになった。価格上昇の影響で容量を絞る傾向も出てきているようだ。8月現在のGB単価は、全体で5100円。一番割安なのが24TBモデルで3600円、逆に最も割高だったのが2TBモデルで9200円だった。
今回選択した4TBモデルは、GB単価が7100円とかなり割高な部類。とはいえ、8TBともなると高価で、大容量ゆえ何かあった際のバックアップも大変だ。ということで4TBのHDDに換装することにしたわけだ。
 NASのような大容量HDDの換装で大変なのがバックアップ。LAN接続したPCでバックアップを取ろうとすると死ぬほど遅い。HDDなので仕方がないのだが、それにしてもずっとPCをつないだままにしておくわけにもいかない。白状すると、これまでNASのバックアップをまともに取ったことがなかった。観念してNAS本体のUSB端子に外付けHDDをぶら下げて、ちゃんとバックアップを取ることにした。外付けHDDは以前テレビの録画に使っていたもの。3TBなのでちょうどよかった。ただ、USBが2.0。激遅だ。
手持ちのバックアップ用HDDがこれしかなかったので、我慢して使うことにした。
 NASの管理画面からバックアップを選び、外付けHDDを指定してバックアップ開始。予想所要時間が36時間になっている。思わず目を疑ったが、USB2.0接続で3TBなら、それぐらいかかるのだろう。PC不要でNAS本体だけで完結するのが救い。放っておけばいいから気は楽だ。2日弱かかってやっとバックアップが終了。今度は新しく買ったHDDと入れ替えて、NAS用の設定を施した後に書き戻しだ。ここでトラブル発生。どのNASもHDDの付け外しがしやすいよう、トレーに工夫が施されている。このNASもプラスチックのカバーを跳ね上げて、引っ張るだけでHDDが取り出せる構造になっていた。ところが、何とこのカバーがあっさりと折れてしまった。
プラスチックの経年劣化だ。しょうがないので、わずかに残ったHDDトレーの突起部分をつまんで無理やり引っ張り出した。
 今度は同じく36時間かけての書き戻しだ。結局バックアップから書き戻すだけで丸3日かかったことになる。それでも瀕死のHDDからデータの吸出しには成功し、無事データを新しいHDDに移行させることができた。取り出した古いHDDは、盛大にエラーが出ているとはいえ、まあ見た目は問題ない。一時的なデータ退避先など、再利用できないか。まずはフォーマットだ。WindowsのNTFS形式で試みたが、なんとフォーマットすらできなかった。本当に瀕死状態だったわけだ。ディスクの健康状態を観る「CrystalDiskInfo」でチェックしたところ、見事に赤の「異常」表示。これはもう、完全に廃棄処分のHDDということだ。
つまりとても運よくデータを吸い出すことに成功した後、HDDは完全に死んでしまった。読めても書けない、というのは、古いHDDによくある話らしい。
 13年もの長きにわたって連続稼働のお役目を終えたHDD。そのまま不燃ごみに捨てるのも忍びない。セキュリティー上の問題もある。そこで、分解してみることにした。チリ一つないクリーンルームで組み立てられるHDD。タバコの煙が入っただけでもエラーを起こす超精密機械だ。さぞ複雑な構造をしているのだろうと思いきや、意外にシンプル。部品点数も思いのほか少なかった。そもそもHDDの蓋を開けるのに相当苦労しそうだと思ってはいたが、トルクスという特殊なドライバーさえあれば、あっさりと「開腹」できた。HDDのご本尊ともいえる、記憶媒体の円盤(プラッタ)3枚を取り出すことができた。3TBだったので、こいつ1枚表裏で、1TBということになる。当たり前だが、表面は傷一つなくまさに鏡。直径95mm、意外に厚みはあって1.27mmあった。アルミ製だ。てっきりガラス円盤に磁性体を蒸着したものと思っていたが、3TBクラスならアルミ板なのだ。
 ご本尊にネオジム磁石をくっつけてデータの破壊を試みたが、どうやらその程度の磁力ではデータの完全破壊はできないという。結局ディスクを物理的に壊すしか、最終処分の方法はないらしい。それなら、ディスクを手元に置いて、記念として持っているほうがいい。鏡としても使えるし、コースターとして使ってもいい。ちょっと触っただけですぐに指紋だらけになるから掃除は大変だ。13年も回り続けた円盤。さぞ目も回ったことだろう。長い間お疲れ様でした。(BCN・道越一郎)
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