上坂すみれが15thシングルとしてリリースする「ディア・パンタレイ」には、自身もアルミ・ニウムバーチ役を演じるアニメ『SHAMAN KING FLOWERS』のEDテーマ「ディア・パンタレイ」、本人が作詞したユーロビートソング「KOUTOU TIGER」、畑 亜貴&伊藤賢治のタッグが手がけた「愛々々宣言」を収録。シンガーとして、趣味人として、同志を率いる旗頭として、今の上坂すみれがどのような存在であるかを収めた1枚となっている。
アーティストデビューから10年を積み重ねた末に辿り着いた、上坂すみれを具現化したような3曲について本人はどのような想いを抱いているのだろうか。10周年イヤーの終わりを目前に控えて、同志に向けた心境も語る。

INTERVIEW BY TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

こんなストレートな楽曲を歌わせてもらえるように
――『SHAMAN KING FLOWERS』のEDテーマとして「ディア・パンタレイ」が作られるまでの流れを教えていただけますか?アルミ・ニウムバーチ役がオーディションで決まってからのお話だったかと思いますが。

上坂すみれ そうですね。去年の秋~冬くらいにアルミのオーディションがありまして。『SHAMAN KING』って基本的にキャストさんがみんな続投されていらっしゃるのでオーディションするイメージがなかったんですけど。


――麻倉 葉役の日笠陽子さんが息子の花役も演じられていますし。

上坂 はい。『FLOWERS』は新キャラも多いですけど、朴 璐美さんも道 蓮と道 黽の親子2代にキャスティングされていますし。そういったなかでアルミに決まったことはすごく驚きだったんですけど、そのあとで、EDテーマも、という話をアニメ制作陣の方からいただきました。楽曲はコンペで集めることになり、『SHAMAN KING』の楽曲といえば、パワーに満ちて壮大でストレートで盛り上がるアニソンらしいアニソンのイメージがあったので、その雰囲気を踏襲してほしいというお願いはしていました。そうしたら曲を選んだあとで、作曲の本多(友紀)さんや編曲の水野谷(怜)さん(共にArte Refact)から「私たち、すごく『SHAMAN KING』が好きで」という話を聞いて。


――伝わるものだ、と。

上坂 思いましたね。

――曲を選んだ決め手はどこでしたか?

上坂 強いパワーのある曲なんですけれども、アルミらしい華やかさがオケのキラキラした音に感じられて。原作の武井宏之先生の絵はとても華麗で、泥くさいかっこ良さというよりはクリスタル的な美しいかっこ良さがあると思うので、曲調がすごくぴったりだと思いました。頭がサビから始まってかっこいいイントロが流れる、というところもすごく『SHAMAN KING』らしい魅力があると思いました。

――歌詞もコンペということですよね。


上坂 はい。『FLOWERS』ならではの歌詞にしたくて。幅広く募集させていただいた結果、やっぱり『SHAMAN KING』好きのクリエイターさんが書いてくださることになりました。アルミから許嫁である花に対する言葉を超えた魂の触れ合い、それから葉から花、アンナからアルミと受け継がれていく思いを散りばめていただいて、ストレートに『SHAMAN KING』を表した歌詞になっていると思います。

――上坂さんとしてはどのようなイメージで歌われましたか?アルミを意識するところはありましたか?

上坂 アルミはそんなにキャピキャピした子ではないのでこの楽曲の歌声に近いキャラクター作りにはなっていますが、アルミの歌というよりは『FLOWERS』の世界を包括するようなイメージですね。『SHAMAN KING』はすごく群像劇のイメージがあります。
アルミだけではなく色んなキャラクターに使命や大切な人がいるので、どのキャラクターに当てはめても成立する曲だと思いますし、もっと広く、聴いている人にもあてはまる人生の歌みたいな曲だと思います。

――悩まれた部分はありましたか?

上坂 いつもはコール曲だったりセリフがあったり、基本的に電波系の文化で育ってきたので、こういうストレートな楽曲をどう歌えばいいのか、最初は少し「うーん……」と悩みました。真面目に歌いきるのが一番難しかったですね。「これでいいのかな?」みたいな。でもきっと、ライブで歌っているうちに完成形が生まれるんじゃないかと思っています。あとは、力強さがとても大事な曲と思いつつも、ずっと力いっぱい歌っていると聴いていても疲れてしまいますし。
力強さと切望する感じと美しさみたいなところのある歌詞なので、聴いている人に歌詞のメッセージを届けるぞ、という気持ちを大切にレコーディングは進めました。でも、本当に新しい試みというか、こういう楽曲を自分が歌うことがすごく意外でしたけれども、正統派の歌も任せていただけるようになったことは、10周年イヤーの締め括りに嬉しいプレゼントをもらった気持ちでしたね。

――レコーディングで印象に残っていることはありますか?

上坂 特に2番のAメロはとてもしっとりとした世界観なので、力強い曲なんですけど、「ここは静かな情景にしましょう」というディレクションをいただきました。音について細かくというよりも、感情のディレクションという感じで、すごくイメージの湧きやすいディレクションをいただいたと思います。

――レコーディングには本多友紀さんが?

上坂 はい。『SHAMAN KING』ということで、目標が一緒、というところは良かったと思います。


――そうですね、こういう歌にしたいというイメージが共有できるとスムーズで早いですよね。上坂さんが『シャーマンキング』を読んでいたのは小学生の頃だと聞きました。

上坂 連載中に単行本で読んでいました。表紙を見て、「なんてかっこいい絵なんだろう」と思い買ったのがきっかけですね。小学生の頃は全然少年マンガを通ってこなかったんですけど、『シャーマンキング』はすごく楽しみにしていました。

――では、一旦の連載終了も経験して、のちに完結を知るという形だったんですか?

上坂 そうですね。完結を知った頃はもう大人買いできる年齢だったので、単行本をまとめて買って、『FLOWERS』も読みました。

――アルミという女の子にはどんな印象を持っていますか?

上坂 『FLOWERS』で一番考えが読めないキャラクターというか。パッチ十祭司シルバの娘がどんな修行を積んで「三代目イタコのアンナ」になったのか、そこは『FLOWERS』では描かれていないですし。でもすごく強いですし、これから始まる新しい戦いに挑むところは天才軍師系のキャラなんですよね。言葉が強いうえに足りないからみんなはついていけない。「そんなことはあんたたちがなんとかしなさいよ」っていうタイプで、アンナに近いところがありますよね。でも、悪い子ではなくて、花の能力の恐ろしさを知っているから花をコントロールすることで守らなくちゃいけないと思っていて……。演じ方が難しい子ですね。でもオーディションのときも、ただ当たり散らしているだけではなく、この先の戦いに勝つという目的がある、というイメージは持っていました。

――「ディア・パンタレイ」にしても、主題歌としてのパワフルさやエネルギーだけではなく、女の子の優しさみたいなものを感じますね。

上坂 そ