A/バラエティ番組プロデューサー B/ドラマディレクター C/ワイドショー芸能デスク D/編成局中堅幹部
(発言については、座談会参加者が特定されるのを避けるため、一部を客観的な言い回しに変えています)
●飯島マネ追放で高笑い! 日テレSMAP潰しの首謀者とは
──前編では、フジテレビ、TBSのジャニーズ支配について語ってもらいました。その最中に『SMAP×SMAP』(フジテレビ)の黒木彰一チーフプロデューサーの更迭情報が飛び込んでくるなど、番組や人事までがジャニーズの派閥対立に左右されている実態が明らかになったわけですが、後編では他のテレビ局についてもつっこんだ話を聞かせてください。
A 日テレは全く影響がない。というか、むしろSMAP解散危機と飯島さん追放に高笑いだったんじゃないの。
B そうだろうね。とにかく日テレは露骨なまでのJ1偏重、ジュリー派だから。現在、放映中の亀梨和也主演『怪盗 山猫』もそうだけど、土曜夜9時のドラマはジュリー枠といわれるくらいJ1のタレントが起用されているし、バラエティ、情報番組も嵐の『嵐にしやがれ』、TOKIOの『ザ!鉄腕!DASH!!』を筆頭に、『ZIP!』(TOKIO・山口達也)、『月曜から夜更かし』(関ジャニ∞・村上信五)、『ヒルナンデス!』(関ジャニ∞・横山裕、村上信五、Hey! Say! JUMP・八乙女光、有岡大貴)、『スクール革命!』(Hey! Say! JUMP・山田涼介、知念侑李、八乙女光)と、ジュリー派だらけ。
C その傾向はニュースやスポーツ番組にも広がっていますよね。嵐の櫻井翔が『NEWS ZERO』でキャスターを務めているのを筆頭に、『news every.』 (NEWS・小山慶一郎)、『シューイチ』(KAT-TUN・中丸雄一)......。あと、日テレの看板『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』も、2008年以降、ずっと、ジュリー派のジャニーズタレントがメインパーソナリティを務めているでしょう。昨年の『24時間テレビ』なんて、V6とHey! Say! JUMPという、数字の取れないグループをセットで起用させられていたし。
──日テレのこの異常なまでのジュリー派偏重ってなぜなんですか?
D やっぱり、きっかけは嵐だよね。日テレが最初に嵐に番組をもたせたのは、2001年とかなり早い時期だったんだけど、その嵐が2004年頃にブレイク。
C たしかに、嵐は局をあげて売り出したという感じでしたよね。まだブレイクしかけの2004年に早くも『24時間テレビ』のメインパーソナリティに据え、2006年には、櫻井翔を局のメインのニュース番組キャスターに抜擢したわけですから。
D で、2010年に満を持してプライムタイムの冠番組『嵐にしやがれ』をスタートするんだけど、これがまた露骨だった。番組のメインプロデューサーに、『しゃべくり007』の田中宏史プロデューサーを据えたんだよね。『しゃべくり007』は2008年に『SMAP×SMAP』の裏にぶつけるためにスタートした番組で、視聴率で抜くなど日テレの『SMAP×SMAP』潰しの象徴のような存在。その功労者と嵐を組ませたというのは、日テレは嵐を売り出すだけじゃなくて、明らかにSMAPを潰しにかかっていたということだ。
A この人選はもちろん、飯島氏とSMAPを追い落としたいジュリー氏も大歓迎だったらしいよ。実際、田中プロデューサーはジュリー氏にかなり気に入られているらしく、その後、『月曜から夜ふかし』や二宮和也の冠番組『ニノさん』、櫻井翔司会の大型音楽特番『THE MUSIC DAY』を手掛けるなど、ジュリー派のお抱えプロデューサーのような存在になっている。
B 派閥対立が激化していた頃には、局内で「SMAPを潰す」と公言していたという話もあるよね。2014年にはキムタクの『HERO』初回の裏番組に、日テレは『有吉ゼミ×深イイ話合体4時間』という力の入った特番をぶつけてるんだけど、このときも関ジャニ∞の横山裕をゲスト出演させた。
D ただ、田中プロデューサーらのSMAP潰しの背後には、局の上層部の意向があったようだ。日テレには、渡辺弘、小杉善信という編成出身の2人の専務がいて、この2人がバリバリのジュリー派なんだよ。渡辺専務は2005年から2008年の『24時間テレビ』の制作総指揮。小杉専務はドラマ畑出身で、TOKIO松岡昌宏の『サイコメトラーEIJI』やTOKIO長瀬智也とV6岡田准一の『D×D』など、ジャニーズのドラマのプロデューサーをやっていた。
A しかも、この2人とも、飯島氏に煮え湯をのまされた経験があるらしい。渡辺専務の場合は2005年の『24時間テレビ』。当初、日テレはSMAPをメインパーソナリティにしようとしていたんだが、前年が嵐だったため、飯島氏が「嵐の後にSMAPを出せない」として、草彅剛と香取慎吾しか出さなかったんだよ。日テレ側はしょうがなく妥協したんだが、その後もTシャツのデザインなど、飯島氏にさまざまな注文を付けられて、当時、渡辺氏は激怒していたらしい。一方、小杉専務は、キムタクのドラマをオファーして、飯島マネージャーににべもなく断られたことがあって、やはり飯島氏にいい感情をもっていなかったと言われているね。
D そのへんは昔の話なので定かではないが、いずれにしても、上層部の2人がジュリー氏と組んで、嵐の売り出しとSMAP潰しに動いたというのは間違いなさそうだ。ちょうど2人が編成局長の時に、そういう動きが起きているしね。
B あと、日テレとの間では、櫻井翔が直接のパイプになっているという説もあるね。
C 櫻井は妹も2009年くらいに成城大学から日本テレビの社員になっているね。これもコネ入社という見方が根強い。ただ、たんにアイドルの妹というだけじゃ、コネ入社なんてできるはずもないし、これだけでも櫻井の日テレでの影響力の大きさがわかる。ジュリー氏も大きなプロジェクトの時は、櫻井に口添えを頼んでいるらしい。
●キムタクに接近したテレ朝の誤算、NHKは籾井会長とメリー氏が
A しかし、飯島氏が去ってしまった今後、日テレではますますSMAPが冷遇されることになるだろうね。実際、SMAP独立が確実視されていた時期には、中居正広の『ナカイの窓』の3月打ち切りが決まったと言われていた。ジャニーズへの復帰で3月はなくなったらしいけど、9月打ち切りは根強く囁かれている。
D 日テレにも飯島派と呼ばれるJ2スタッフはいるけど、傍流だからね。『ナカイの窓』や、やはり中居司会の『ザ!世界仰天ニュース』を立ち上げたプロデューサーたちも関連会社に出向したり、会社を辞めたりで、出世している人はほとんどいないから、守ってくれる人がいない。
C ただ、中居はともかく、メリー氏に恭順の意を示してジャニーズ本体の幹部扱いになったキムタクはこれから日テレで重用される可能性はあるんじゃないの? 日テレで初めてドラマ主演するという可能性もあるかもね。
B でも、キムタクは日テレのマンガ的なドラマを嫌っていて、それで飯島氏が日テレのオファーをずっとはねつけてきた経緯があるんでしょ。そんな局のドラマに出るっていうのは、キムタクにとってはむしろ、拷問という気もしなくはないが(笑)。
──ところで、去年、そのキムタクを連続ドラマの主演にゲットしたテレビ朝日はどうなんですか?
A テレ朝はもともとジャニーズ本体と非常に深い関係があった局なんだよ。とくに、『ミュージックステーション』は、芸能プロとの癒着が有名だった「テレ朝の天皇」皇達也元取締役制作局長がジャニーズと田辺エージェンシーと共同で立ち上げた番組。放送開始当初は光GENJIがレギュラーで毎週、出演していたし、ジャニーズの稽古場がテレ朝局内に置かれていたこともあった。
A ただ、この番組はジャニー喜多川社長と関係が太い上、飯島氏と親しい田辺エージェンシーも関わっていた。それで、派閥対立が激化した後も、飯島派を排除することはなく、『Mステ』はSMAPも嵐も両方出る数少ない番組といわれてきた。
D テレ朝は局自体が双方と等距離で付き合っていた感じはあるよね。現執行部では平城隆司取締役がバラエティ、音楽番組の差配をしているが、この人もジュリー派、飯島派という色は別にない。というか、ジャニーズとあまり付き合いがない。テレ朝のバラエティはお笑い中心で、ジャニーズの割合はそれほど多くないから、比較的距離をもって付き合えていたんだろう。
B ところが、そのテレ朝も最近になって、まったく違う動きを見せていた。去年、キムタク主演の連続ドラマ『アイムホーム』を放送したことが象徴的なんだけど、ドラマ班がこの2、3年、完全に飯島派にシフトしていた。
D もともとは、6年ほど前に、元編成制作局長の亀山慶二取締役と飯島氏でジャニーさんお気に入りのジャニーズJr.森本慎太郎の主演映画『スノープリンス 禁じられた恋のメロディ』を企画製作したあたりから関係はよかったんだけど、2年ほど前から、ゼネラルプロデューサーの横地郁英氏が飯島氏とキムタクにアプローチして、本格的になった。横地氏はまず、木村が宮本武蔵をやりたがっていると言っているのを聞きつけ飯島氏にもち込み、2014年3月に『宮本武蔵』でキムタクを主演させることに成功するんだよ。その前にも、Kis-My-Ft2・玉森裕太主演の『信長のシェフ2』や草なぎ剛主演の単発ドラマ『スペシャリスト』、Sexy Zone・中島健人主演の『黒服物語』など、連続で飯島派タレントの主演ドラマをつくってご機嫌を取り、初のキムタクの連続ドラマにこぎつけたかたちだ。
B しかも、その後も同じ枠で『スペシャリスト』を連続ドラマ化したり、香取慎吾主演で『ポーの一族』を原案にした3月放送予定のスペシャルドラマ『ストレンジャー』を製作。さらに、稲垣吾郎が出演予定のドラマ『不機嫌な果実』も4月からスタートすることになっていて、ドラマ班は飯島氏べったりといっていいほど、密な関係を築いていた。そこでSMAP解散騒動が起きたため、テレ朝は一時、真っ青になっていたみたいだよ。
C そういう意味じゃ、一番間が悪い局でしたね。まあ、ドラマはかなり前から準備しなきゃいけないから、気がついた時はもう手遅れだったのかもしれないが。
B ドラマ班はこれから、ジュリー氏に一本化されたジャニーズに嫌がらせされるんじゃないか、と戦々恐々らしいよ。バラエティはもともと出演が多くないから影響は少ないだろうけど、ドラマは春のクールで終わりじゃないか、ともいわれている。
──NHKについてもふれておきましょうか。紅白歌合戦を見ていると、NHKは完全にジュリー派という感じがしますが。
A そうだね。以前は中居が司会をやった年もあったし、ずっとSMAPとTOKIOの2組が出演していたんだが、嵐が2009年に初出場、2010年に司会をやったあたりから構図が激変してしまった。2009年にNYCboysがバーターで入り、2013年にSexy Zoneと関ジャニ∞、2014年にV6 、2015年に近藤真彦とどんどんどん枠が増えていってジャニーズ歌合戦みたいになってしまった。しかも、NYCとSexy Zone以外はすべてジュリー派。ちょうど2009年くらいにメリー氏が上層部にねじこんだともいわれてるね。
D ただ、紅白担当部署である制作局エンターテイメント番組部自体はむしろ飯島氏寄りなんだけどね。NHKはジャニーさん枠といわれるジャニーズ若手メインの番組をずっと作ってきたんだが、途中から、ジャニーさんがそのJr.や若手グループを飯島氏にプロデュースさせるようになったでしょう。それで、飯島氏の存在感は自然と大きくなった。
A BSでやってる『ザ少年倶楽部』も一時、飯島氏が仕切るようになって、ジュリー派は派生した別番組の『ザ少年倶楽部プレミアム』に追いやられるというような事態も起きていたし。
C 今のエンターテイメント番組部部長の三溝敬志氏も飯島氏とは非常に緊密な関係をもっていた。三溝部長は『NHK のど自慢』も担当していて、SMAPの異例と言われた『のど自慢』出演も三溝部長と飯島氏の関係から実現した。
A あれ、飯島氏が去年の紅白の白組司会をSMAPにやらせるために、布石を打った言われていたね。実際、三溝部長が局内に根回しをして、一時はSMAPが司会をすることで決まっていた。ところが、それを知ったメリー氏が「SMAPにやらせるなら、ジャニーズはタレントを出さない」と激怒。ひっくり返してしまった。おまけに、近藤真彦をトリにねじこんできて、あの有様に(笑)。
D 一説には、メリー氏は籾井会長に直談判したんじゃないかとも言われているね。籾井会長は年頭の挨拶で、嵐とタッキー&翼のコンサートに行ったことを明かしていたでしょ。これは直接のパイプできたことを誇示したんじゃないかと言われているね。
C しかし、公共放送であるNHKがここまで一芸能プロに依存するのは、それこそ問題じゃないか、と思うけどね。紅白の低視聴率だって、過剰なジャニーズ依存が原因のひとつになっているのは間違いないし、のんきに嵐のコンサートに行ったとか言ってる場合じゃないだろう。まあ、籾井さんにそんなことを言っても無駄か(笑)。
●嵐のハワイ公演で接待を受けたテレビ局幹部たち
──こうして話を聞いてみると、テレビ局のジャニーズ支配っていうのは、想像以上でした。ここまで逆らえないというのは、やっぱりジャニーズのタレントが視聴率をもっているから、ということですか。
B うーん、どうだろうね。一定の視聴率は稼げるが、すごく数字がいいかというと、そういうわけでもない。全盛期のSMAPはたしかにすごかったけど、嵐なんて全然たいしたことがないでしょう。『嵐にしやがれ』で15%いくかどうか。『VS嵐』は10%、他の番組は全部10%を切ってる。しかも、NHK紅白を見てもわかるように、嵐を出す代わりに、全く数字をもっていないグループをバーターで押し付けられるケースも多いしね(笑)。
D ジャニーズのタレントがメインの番組でいまコンスタントに10%を超えているのは、『SMAP×SMAP』『ザ!鉄腕!DASH!!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『ザ!世界仰天ニュース』、それと、草なぎのドラマ『スペシャリスト』。あと、時間帯の割に大健闘している『キスマイBUSAIKU!?』くらいでしょう。
C 結局、数字をもっているのはSMAPと飯島さんが手がけたグループなんだよね。だから、もし、あのまま中居たち4人が独立しても、意外に、中居たちにつく局はあったような気もするんだけど。
D 各局のJ担というのは悪い意味で「選ばれし者」だしね。J担というのは自分からなれるものじゃなくて、ジャニーズ側がヒラ社員の時に目をつけ、引き上げるんだ。だから、口が堅くて従順な人間しか選ばれない。で、彼らが局内で出世していくから、自然と、局全体がジャニーズに逆らうのはまかりならんという空気になっていく。
A しかも、メリー氏は直接、上層部とパイプをもっているから、いざとなったら、社長クラスに直談判する。あれが強いんだよ。飯島氏は現場を支配できても、社長クラスまでは動かせなかった。だからメリー氏に勝てなかったという部分はあるんじゃないか。
B あと、メリー氏、ジャニーズ本体はムチだけじゃなくて、アメも使ってくるしね。たとえば、2014年の嵐のデビュー15周年のハワイライブなんて典型でした。
A あのハワイライブは派閥抗争のピークの時に実施されたんだけど、今も語り草だよね。とにかくジャニーズ側がこれまでにない規模の数のマスコミ関係者を招待した。スポーツ紙や週刊誌、ワイドショーだけじゃなくて、各テレビ局のジャニーズ系番組制作スタッフ、さらには、役員や局長クラスの幹部も招待したんだよね。
C 局幹部には現場スタッフとは別の高級ホテルを用意し、超豪華接待が行われたらしいね。しかも、メリー氏が直接相手をして、その席で、飯島氏とSMAPの悪口を言いまくったうえ、「ジュリーをよろしく」と、頭を下げたらしい。
B ようするに、ジュリー氏を後継にして飯島氏を追い落とすための露払い接待旅行だったということか。実際、このためにわざわざ嵐のハワイライブを設定したんじゃないかと囁かれたほどだった。
A 他にも、テレビ局幹部はライブや舞台の招待のついでに接待を受けていて、ジャニーズから結構おいしい思いをさせてもらっている。ほとんど身内のような関係になってるからね。おいそれとは切れない。
B でも、これからテレビ局は大変だよね。ジュリー氏は、飯島氏やメリー氏よりもっと理不尽な要求を突き付けてくるタイプでしょう。飯島氏も相当にうるさくて強権的だったけど、彼女の場合はやっぱりタレント愛があるし、企画力もあるから、いい番組を作れるんだよ。でも、ジュリー氏の場合は、ただ権力をカサにして、強引にバーターやキャスティングをごり押し、法外な値段をふっかけてくる。
C そういえば、つい最近も視聴率のテコ入れという大義名分で『めざましテレビ』でHey!Say!Jump伊野尾慧がレギュラーになることが発表されたけど、あれもジュリー氏のゴリ押しでしょう。ジュリー氏はいまとにかくHey!Say!Jumpがお気に入りで、いろんなところに押し付けてくる。そのうち、数字の取れるKis-My-Ft2がどんどんおろされて、数字のとれないHey!Say!Jumpだらけに、なんてことも起きかねない(笑)。
──笑い事じゃないと思いますが、とにかく、まだまだ、ジャニーズのテレビ局支配は続くということはよくわかりました。
(構成/編集部)