先日4日に発表された第39回日本アカデミー賞。最優秀主演男優賞には嵐のニ宮和也が選ばれた。
驚いたのはそれよりも、受賞時に行われた二宮のスピーチだ。中継した日本テレビでは、なぜかほんの一部しか放送しなかったが、その内容は今までアカデミー賞の授賞式で聞いたことのないものだった。
名前を呼ばれた二宮は小走りで壇上に駆け上がり、トロフィーを受け取ると、まず、岡田から「次はおまえだ」と言われていたことを明かし、「嵐のメンバーも喜んでくれているはず」と、仲の良さを強調した。
いきなり、ジャニーズの話か、と思っていると、二宮はさらにこう続けたのだ。
「そしてジャニーさんとメリーさんとジュリーさんと、今までずっと迷惑をかけてきた人たちに、これでちょっとは恩返しができたかなと思うと、すごくありがたく、また頑張っていこうと思っています」
こういう場合は「この作品にかかわった共演者、スタッフのみなさんのおかげです」というのが普通。ところが、そんな言葉は一言もなく、「ジャニーさんとメリーさんとジュリーさん」、つまり自分の所属プロダクションの社長と副社長3人の名前だけを並べてお礼を述べ、スピーチを締めてしまったのだ。山田洋次監督にも、吉永小百合ら共演者にも、現場を支えたスタッフにもまったく触れることはなかった。
いくらなんでも、これはありえないだろう。そんなところから、ネットでは「どうせメリーかジュリーに言わされたんだろう」「SMAPの公開処刑とやってることは同じ」という批判の声が広まっている。
さすがに「言わされた」とまでは思えないが、SMAPの騒動と関係あるのは明らかだ。
実際、二宮にかぎらず、ジャニーズのタレントの間では、メリー氏、ジュリー氏への恐怖がものすごく高まっている。
「SMAP騒動以降、ジャニーズのタレントの雰囲気がガラリと変わった。最近は結構自由な感じで、番組でも事務所のエピソードについてよく軽口を叩いていたのに、あの騒動以降はまったく口にしなくなった。とにかく"モノ言えば唇寒し"という感じで、ピリピリしてます。逆に、生き残りたいと思う連中は、上層部に気に入られようと必死になっている」(テレビ関係者)
二宮のスピーチを見てもわかるように、彼らの目は結局、ジャニーズの内部にしか向いていないということだろう。
ただし、この恐怖支配はタレントを服従させるには効果があっても、ファンに対しては逆効果になっている。タレントたちが怖がれば怖がるほど、ファンは彼らの背後にメリー氏の影を感じ、彼らを「メリー氏の奴隷」としか見られなくなっていく。その結果、ジャニーズタレントのファン離れがじわじわと起き始めているのだという。
日テレが、二宮のスピーチのうち「ジャニーさんとメリーさんとジュリーさん」以下の部分を丸々カットしたのも、そうした匂いを消そうと配慮したためだろう。
「もともと、日本アカデミー賞は大手映画会社、芸能プロ、そして日本テレビによる出来レースといわれていたんですが、去年から、ジャニーズがかなり深く関わるようになった。
実は、今年のアカデミー賞では、もうひとつ、カットされたスピーチがある。最優秀作品賞と最優秀監督賞をとった是枝裕和監督が、日本アカデミー賞がオープンではないという意味のことを指摘したのだが、その部分がそっくりカットされているのだ。
せめて映画くらいは、ジャニーズやテレビ局の支配から自由であってほしいと思うのだが......。
(時田章広)