サンデー・ジャポン』で“うがい薬”騒動について語ったテリー伊藤


 大阪府の吉村洋文知事が「ポビドンヨードが新型コロナに効く」とぶち上げたことで起こった“うがい薬”騒動。行政のトップがずさんな実験による不確かな情報を大々的に喧伝し、市場の混乱と健康被害の危険性をもたらしたことに批判が集まっているが、さらに、重大な疑惑が浮上した。

 周知のように、吉村知事の発表によって、ポビドンヨードを含むうがい薬を取り扱っている塩野義製薬や明治ホールディングスの株価が跳ね上がったが、じつはこの発表にインサイダー取引につながりかねない事前漏洩があったようなのだ。

 それが判明したのは昨日9日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS)でのこと。“うがい薬”騒動を取り上げたなかで、コメンテーターのテリー伊藤が「ちょっといいですか」と言うと、こんな話をはじめた。

「僕、じつはですね、この発表するときにですね、『ミヤネ屋』に出てたんですよ。で、それで、じつはこの話をですね、1時間半ぐらい前に知ったんですね」
「ってことは、これをいま買っておけばいいなと思って。場合によってはこれね、薬メーカーの株価もかえるなっていうふうに、一瞬、頭も入ったんですけど、それを止めたんですよ。それちょっとインサイダー取引みたいな感じで、僕の立場でそれやると申し訳ないなと思ってやらなかったんですけども」

 吉村知事が会見を始めたのは4日14時20分ごろ。その会見で、吉村知事はこう述べていた。

「情報が漏れたらいけませんから、非常に少ない範囲、ここにいる松井市長と僕と、藤井(睦子・大阪府健康医療部)部長と松山(晃文・大阪はびきの医療センター次世代創薬創生センター長)先生と、はびきの(医療センター)のみなさんくらいしか、この情報は共有はしていません」

 しかし、実際には、吉村会見の1時間半前に、テリーにその情報が伝わっていた。テリーは、自身が語っているようにこの日、『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)に出演している。テリーが「情報を知った」という「吉村会見の1時間半前」というのは『ミヤネ屋』の本番が始まる少し前、つまり、テリーは『ミヤネ屋』の楽屋か打ち合わせの席でこの話を聞いたということなのだろう。

 じつは『ミヤネ屋』はこの日、吉村知事らの会見を生中継していた番組だった。

 しかも、それはたまたま生中継したというようなものではなかった。『ミヤネ屋』はまだ会見がスタートしていない番組スタート時の13時55分の段階で、「速報“コロナ”治療 効果が期待できる薬 発表へ 大阪吉村知事&松井市長会見」というテロップを出し、吉村知事らの会見を生中継することを予告。さらに、14時20分ごろから会見の中継をはじめ、吉村知事がポビドンヨードを含んだうがい薬が「コロナに効く」と言い出してわずか約15分後の14時35分には、手書きではなくデザインされた「ポビドンヨードとは」「ポビドンヨードが感染対策に有効な理由」というフリップを出して解説をおこなっていた。

 テロップといいフリップといい、やけに対応が早すぎるだと思っていたが、テリーの証言から、『ミヤネ屋』は番組ぐるみで吉村知事が「ポビドンヨードがコロナに効く」と発表することを事前に知らされていた可能性はきわめて高くなった。

 しかし、もし一部のメディア関係者だけに今回の発表が知らされていたとすれば、テリーも言っていたように「インサイダー取引」につながりかねない。到底許されることではないだろう。

 しかも、『ミヤネ屋』は本番が始まると、会見前から「“コロナ”治療 効果が期待できる薬 発表」というテロップを出して煽り、吉村知事による「嘘みたいな本当の話」「コロナの患者さん、このコロナがある意味、減っていくと。コロナの陽性者が減っていく」「コロナに効くのではないかという研究が出ました」という会見を生中継。その効果を煽りに煽っていた。

 テレビ局がこんな不確かな情報を批判的視点をさしはさまず一方的に垂れ流すだけでもありえないが、『ミヤネ屋』の番組関係者が事前に情報を伝えられ、こっそりポビドンヨード関連株を買える立場にあったとしたら、なおさら問題だろう。

 もっとも、当の『ミヤネ屋』は鼻白むような茶番でこの疑惑を否定している。吉村知事は4日の会見後、批判が殺到したことを受けて、6日に『ひるおび!』(TBS)などのワイドショーにはしご出演したが、『ミヤネ屋』では、司会の宮根誠司と吉村がこんなやりとりを繰り広げていた。


 
宮根「何回も知事にお会いしてるのに、一言も僕にも言いはれへんかったから、よっぽどナイショやったんですね、知事ねぇ?」
吉村「ええ、これは秘密に進めてきました」
宮根「冷たっ」

 また、そのあとも宮根が、わざわざ「この番組ね、生中継しちゃったのよ。内容もわからないまま」などと念を押していた。

 聞いているだけで寒くなる。こんな言い訳が通用すると思っているのか。そもそも『ミヤネ屋』がもし、吉村知事や大阪府の許可なくあんな事前報道や煽り報道をしていたとしたら、役所から完全にフライング認定され、出入り禁止になっているはずだ(それは逮捕を前打ちしたメディアに対する検察庁や警視庁の姿勢を見れば明らかだ)。

 しかし、『ミヤネ屋』はそういう処分を一切受けなかったどころか、この日も、吉村知事が嬉々として番組に出演していた。この事実を見れば、今回の事前報道が吉村知事サイドの許可のうえだったことは明らかだ。『ミヤネ屋』は最初から吉村知事のうがい薬会見を煽る役目を担う共犯者であり、その関係で事前に吉村サイドから情報を与えられていたのではないか。

 それにしても、テレビ局がなぜ、こんなインサイダー取引を引き起こしかねない事前の情報漏洩を受け、その煽動に全面協力したのか。だが、これは起こるべくして起こった問題とも言える。というのも、『ミヤネ屋』を制作・放送する読売テレビは、吉村知事を持ち上げてきたメディアのなかでも、とりわけ礼賛報道をつづけてきたテレビ局だからだ。

 そのことは、吉村知事のテレビ出演回数からもはっきりしている。

大阪府HPが公開している「知事の日程」を確認すると、吉村知事の3~7月のあいだのテレビ出演番組数は83本にもおよぶが、そのうち読売テレビの番組は、『ミヤネ屋』と『かんさい情報ネットten.』、『ウェークアップ!ぷらす』がそれぞれ8回、『あさパラ!』が5回のほか、『そこまで言って委員会NP』や『上沼・高田のクギズケ!』など、ダントツの出演数。その総数は32本にものぼるのだ。次点の毎日放送が13本、フジテレビ(BSフジ含む)が8本であることを考えても、飛び抜けた数字だ。

 そして、吉村知事が「兵庫・大阪間の移動自粛」「ワクチン開発」「大阪モデル」「K値」などなど、「やってる感」アピールのためだけのデタラメなパフォーマンスを繰り広げるたびに、これらの番組では無批判に「さすが吉村知事!」「吉村さんでよかった」と礼賛しつづけてきたのだ。

 こうした読売テレビと維新の馴れ合いは橋下徹時代から繰り広げられてきた光景ではあるが、その結果、市場や株価の大混乱を招いただけでなく、医療現場でのうがい薬の不足、健康被害の危険性という国民の健康を脅かしかねない重大問題を引き起こした。テリー伊藤の暴露を受けて、吉村知事の責任だけではなく、『ミヤネ屋』や読売テレビの責任も同時に問われなくてはならないだろう。

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