福島県の磐越自動車道で6日、新潟市の北越高校ソフトテニス部員ら21人が死傷したマイクロバスの事故。運転していた若山哲夫容疑者(68)が過失運転致死傷の疑いで逮捕・送検されています。

 バス会社側と学校側の主張は真っ向から対立していますが、部活動の遠征の安全をどのように確保すべきなのか?法的な問題点や責任の所在は?MBS米澤飛鳥解説委員川﨑拓也弁護士が解説します。

川﨑拓也:弁護士 刑事弁護に注力し企業法務も手がける 京都大学客員教授・大阪大学非常勤講師

「今回の事故は他人事とは思えない」近畿の高校に聞いた遠征ルールと実情

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 今回の事故をきっかけに注視される遠征時の移動実態。他校ではどのようなルールになっているのか?

 近畿地方の甲子園出場経験がある私立高校野球部の規定は、以下のようなきまりだということです。

県外遠征…学校予算で大型バスをチャーター
県内移動…教職員が学校所有のマイクロバスを運転→運転者は事前に免許などを学校に提出し許可をうける

 男性部長(学校職員)に話を聞くと、「バスの経費は、野球部だけでは厳しいが学校が出してくれてありがたい」としたうえで、「自分が運転する場合、時間に余裕を持たせる。前夜はお酒も飲まないし、早く寝ることも心がけている」「今回の事故は他人事とは思えない」と明かしました。

移動をバス会社に完全依頼する学校も「行きは元気でも、帰りは疲れてしんどいことだってあるから」

【部活バス21人死傷事故】「他人事とは思えない」甲子園出場経験ある高校野球部が語った『遠征移動』の実態 県内の移動は教職員が運転「ハンドル握るのは不安。前夜は早く寝ることを心がける」 安全対策に“国のルール無し”
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 一方で、遠征時の移動を完全に外部委託している学校もあります。花園出場経験のある近畿地方の私立高校ラグビー部の男性監督(学校職員)は、「バス会社に依頼。自分たちで運転することは全くない(学校側が推奨)」と回答。

 遠征がそこまで多くないからかもしれない、としつつも、「経費を抑えてほしいという声もない」のだといいます。

 また、今回の事故報道を受け「やはり外部に頼む方がいいなと(事故報道のたびに)毎回思う。我々も『行きは元気でも、帰りは疲れてしんどい』ことだってあるから」と話しました。

2009年にも生徒死亡の事故 しかし安全対策の「統一ルール」は存在せず

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 遠征移動の安全対策に関しては、実は「国のルール」が存在しません。

 2009年7月には、夏の高校野球県大会の開会式に向かっていた柳ヶ浦高校(大分県)のバスが横転し、高校生1人が死亡、46人が重軽傷を負う事故が発生。この時、バスを運転していたのは高校の教諭でした。

 この事故を教訓に遠征移動のルールを整備した学校もありますが、統一的な安全管理マニュアルはいまだ存在せず、学校の経済事情や現場の裁量に委ねられているのです。

「部活動=自主的」の位置づけ…教員らの善意に支えられている側面も

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 こうした実情の背景にあるのは「部活動=生徒の自主的な活動」と位置づけられていることだと、学校リスクに詳しい名古屋大学教育学部・内田良教授は指摘。「自主的」であるがゆえ、安全管理や予算の割り当てが非常に緩く、誰がどう管理するかあいまいになりがちだといいます。

 しかし今回のように事故が起きた時、最大の被害者は子どもたちです。部活動を学校教育として行う限り、安全安心のための財政面での補償や議論が積極的に必要との見解を示しました。

問われる遠征時の移動実態 校長は「安全管理などを部活動にまかせていた」

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 北越高校のソフトテニス部員ら21人が死傷した事故を巡っては、10日に学校側が2回目の会見を実施。

 校長は「安全管理や業者選定、契約書類などを部活動にまかせていた」、部活動顧問は「蒲原(かんばら)鉄道関係者が朝に来ていて信頼しきっていたため、バスのナンバーや運転手の所属などを確認することはなかった」と説明しました。

今回の事故の責任はどこに?真っ向から対立する主張

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 バス会社側と学校側の主張は真っ向から対立しています。

【Q有償だったのか?】
蒲原鉄道(バス会社): 会社や運転手に報酬はない
北越高校: 『運転手への手当』とみられる封筒を発見(3万3000円)

【Qどうしてバスはレンタル?運転手は紹介に?】
蒲原鉄道: 「費用を抑えたい」と高校から依頼
北越高校: 貸し切りバスだと認識。依頼していない

弁護士が指摘するポイント「有償だったのか?」「頼んだのか?」

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 責任の所在はどこにあるのか。川﨑弁護士は、道路運送法違反を問われるかの分岐点として「有償だったのか?」「頼んだのか?」の2点を挙げます。

(川﨑弁護士)「仮に(手当とみられる封筒が)報酬だったのであれば、運転者は報酬をもらって許可を受けず運転したことになりますし、バス会社が何か利益を得ているのであれば、それは同じくという見方になり得るのかなと。学校については、それをどう認識していたかという次の問題になってくるのかなと思います」

 封筒に入っていた3万3000円という金額については、単なる実費(ガソリン代や交通費)の範囲内なのか、実質的な報酬と評価されるのかが、今後問題になってくるのではないか、との見方を示しました。

 バスの依頼をめぐる双方の主張については…

「レンタルで緑ナンバーというのは考えにくいので、(学校が仮にレンタカーで依頼していたということなら)未許可の営業なのではないかとわかるだろうと思います。 そうなると、学校側にとっては、この道路運送法違反の『教唆』など、そそのかしたという立場で犯罪が成立する可能性はあると思います」

学校は実態を知らなかった?

 白バス行為はあったのか?学校は本当にレンタカーだと把握していなかったのか?学校が説明する背景は以下です。

・業者担当者への信頼: 10年以上のつきあい
・請求書の内訳を確認せず: 去年の請求書を見ると蒲原鉄道12回利用 うち3回「レンタカー」
・車両ナンバーを確認せず
・契約や確認が部活動任せ

 川崎弁護士は、警察が道路運送法違反の疑いでバス会社への捜査を進めるなかで、学校側も調べていくだろうとみています。

フィールドワークでレンタルバスを利用する大学教授の見解「なあなあにやってきたのでは」

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 「フィールドワークで学生をさまざまな場所へ連れて行く際にレンタルバスを利用する」という神戸学院大学・中野雅至教授(行政学者)は、北越高校の部活動顧問が『レンタカーだと認識していなかった』と話している点に疑問を呈します。

 中野教授は、ここ数年のバス料金の高騰により、バスを借りる際に「この予算では不可能」ということが多々あるといいます。そのため、手続きをきちんと行っていれば、バスの料金の変動や、レンタカーとの金額の違いに気づけたのではないかとの見解です。

 その上で、「最大の問題は部活動を全て現場に任せているところ」だと指摘します。

(中野教授)「本当は学校がマネジメントすればいいのだけれど、中学・高校は大学と違って(潤沢な)予算もないし、PTAや保護者などインフォーマル(非公式・非形式的)なところで学校運営しているところがあるのです。だから学校も責められたら少し可哀想なところがある。ですが法的にはやはり、はっきりしてほしいと思います」

(2026年5月11日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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