カルビーは今月25日から順次、ポテトチップスやかっぱえびせん、フルグラなど14品のパッケージを、従来の多色刷りから「白黒」の2色に変更することを決めました。関係者によると、原因は「中東情勢の影響でナフサを原料とする印刷インクなどの調達が不安定になっているため」だということです。
ナフサはガソリンに似た透明な液体の石油製品の1つです。ポリ袋や洗剤など身近なものの多くに使われています。
先月30日、高市総理は「ナフサ由来の化学製品の供給は、年を越えて継続できる見込みとなりました」と述べていましたが、現場には不安感が広がっています。
ナフサをめぐり、今後どのような影響が生じ得るのか?石油産業史が専門の桃山学院大学・小嶌正稔教授の解説をもとにまとめました。
ナフサの調達元 大部分が中東に依存
身近なものの多くに使われているナフサ。印刷に使われる「グラビアインキ」にも、揮発性の高いナフサ由来の有機溶剤が不可欠です。
そのナフサ、日本の調達元をみてみると…
約40%:日本国内で原油から精製(その原油の多くを中東に依存)
約40%:中東から直接輸入
約20%:中東以外(アメリカ・韓国など)から輸入
大部分を中東に依存しているという実態があり、中東情勢の混乱による影響を受けています。
小嶌教授は、「(日本国内で精製している)40%のうちの90%(=中東から輸入した原油を原料としている分)を足すと、全部で76%ぐらいになりますから、この影響はすごく大きい」と指摘。輸入元である韓国もすでにナフサの輸出を止めていて、厳しい状況に追い込まれているようです。
政府は「必要量は確保」と強調も…
政府は、先月30日に高市総理が「ナフサ由来の化学製品の供給は、年を超えて継続できる見込みだ」と発言したほか、今月12日には佐藤官房副長官も「日本全体として必要な量は確保されている」と述べていましたが、製造・流通の現場からは不安の声もあがっています。
(小嶌教授)「本当に大丈夫なのかどうか、もう全く判断ができないというような状況です。少なくとも原油の場合には『備蓄で賄うよ』と言えるのですが、ナフサは備蓄では賄えませんから、全く違う対応が必要になってきます」
「不足を把握するのが難しい」“ナフサ”には複雑な特有の事情が…
ナフサの用途はポリ袋、家電製品、車のバンパーなどのプラスチック製品、さらには注射器やマスクといった医療にかかわるものまで多岐にわたっています。
このため小嶌教授は、ナフサは「どこで不足しているのか、どこが足りているのか、それを把握するのが非常に難しい」と指摘。そのうえで、全体量としては足りていても、特定の製品を作るための「材料の1つ」が欠けるだけで、製造ラインがストップしてしまうというナフサ特有の複雑な構造を説明しました。
「全体として足りているということと品物がちゃんと届くということは同じではない、ということです」(小嶌教授)
大阪の塗料会社「大丈夫なのか」不安感高まる
ナフサ由来製品の需要のうち64%を占めるのはプラスチックなどの「合成樹脂」ですが、「塗料」の業界などでも不安が広がっています。
大阪の塗料会社からは、「現時点でナフサ由来のインキ自体は足りているが、価格が高騰しているほか、買い占め防止のため、前年を超える量が注文できない状態である」という声が聞かれました。必要な分野に優先配分されるとなると塗料は大丈夫なのだろうか、という不安感が高まっているといいます。
ポテチの袋が白黒に? 業界の『セオリー』を破っても…
ナフサ不足による塗料への影響としては、カルビーが12日、「ポテトチップス」など14商品のパッケージを白黒に変更すると発表しました。
マーケティングに詳しい桜美林大学の西山守准教授によると、食欲を促すには「暖色系」が基本であることから、「白黒」はセオリー破りであるということです。
だからこそSNSで話題になるなどの効果も考えられますが、ここにもナフサ不足のインパクトが見られるということには間違いありません。
それでもナフサ由来の製品の需要割合のなかで塗料が占めるのは5%のみ。この5%の製品のためにナフサの製造・流通の全体を動かしていくことは基本的には考えられない、というのが小嶌教授の見解です。
小嶌教授「製品不足7、8月頃に表面化する」と予測
小嶌教授は、今後2~3ヶ月後(7月か8月ごろ)に製品不足が表面化すると予測しています。
「カルビーのような大きな会社は大体3ヶ月前には塗料を発注するため、『あ、もうすぐ足りなくなるな』と分かるでしょう。しかし、中小のところは発注するのにせいぜい長くて1ヶ月、短ければ2週間ぐらいで発注する。そうすると、分かった時には品物がないという状態になる」(小嶌教授)
「ナフサだけ増産」は不可能
ナフサは、原油を精製する過程でガソリンなどと同時に作られる「連産品」であり、ナフサだけを狙って増産することは不可能です。
世界規模での最適化が求められる中、不足すれば医療品などの「命に関わるもの」への優先配分が求められる側面がありますが、現状では最適化について世界レベルでコントロールしている動きは表立っていません。
小嶌教授によると「ナフサが足りていても製品が足りるとは限らない」というなかで、今後はこの影響が小規模な製品から大量生産品へ徐々に波及していくことが懸念されます。

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