イランとの戦闘終結に向けた交渉をめぐり、6月14日、自身の80歳の誕生日に「合意が成立した」と発表したトランプ大統領。一方、イラン側もガリババディ外務次官が覚書を最終決定したことを明らかにし、「レバノンを含むすべての戦線における戦争および軍事作戦の即時かつ永久的な終結が発表される」としています。

覚書の内容については、19日にスイスで署名した後に公開され、今後60日間、最終合意に向けた交渉が行われる見通しです。

長年対立が続くアメリカとイラン。本当に戦闘は終結するのか?アメリカ政治に詳しい上智大学・前嶋和弘教授の解説です。

アメリカ・イランが戦闘終結へ合意発表も「今後はかなり不透明」

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ホルムズ海峡の封鎖や原油価格の高騰など国際社会に大きな影響をもたらしてきたアメリカとイランとの戦闘をめぐり、両国が戦闘終結に向けた合意を発表しました。

これを受け、高市総理は自身のXで、「イランの核問題などについて最終的な合意が1日も早く実現することを強く期待します」と投稿。木原官房長官は「我が国として今回の覚書合意を事態収束に向けた大きな一歩として歓迎をいたします」としています。

果たして戦闘は完全に終結するのか。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は「木原官房長官の言葉もありますが、大きな一歩、大きな節目ではある」とした上で、「今後のことを考えると、かなり不透明です。核をどのようにしていくかなど、まだ見えないところが山ほどあります」と懸念を示しました。

合意発表 なぜいま?

【なぜいま】アメリカ・イランが戦闘終結に正式合意へ「トランプ氏の誕生日に『いい発表』をしたかったから」と専門家指摘 支持層向け“お祭り”の面も ホルムズ・核問題どうなる イスラエルがワイルドカードに?【解説】
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トランプ大統領は14日、公式のSNSを通じて「イランとの合意が成立した。皆さんおめでとうございます。私はここにホルムズ海峡の自由かつ無償の通航を全面的に許可し、同時にアメリカ海軍による封鎖措置の即時解除を命ずる」と投稿しました。

なぜこの日だったのでしょうか?前嶋教授はその背景について、「自身の誕生日(6月14日)に“いい発表”をしたかったからではないか」と指摘。また、7月4日のアメリカ建国250周年に向けたアピールでもあるとの見方を示しました。

(前嶋和弘教授)「いま、トランプ大統領にとってみれば、アピールをしたいタイミング。7月4日は建国250周年という“お祭り”があり、そのお祭りのスタートが、おそらくこの誕生日だった。本来ならば、イランへの攻撃も早く終えて、イランにだいぶ譲歩させたのだということをアピールしたかったのでしょうが…今は覚書がまとまって、話し合うぞということまでは言えるという段階、ということなのだと思います」

イラン側が報じた「14項目からなる草案」

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戦闘終結の合意についてイラン側は15日、国営テレビを通じて「レバノンを含むすべての戦線における戦争および軍事作戦の即時かつ永久的な終結が今夜発表される」と明言しました。合意内容には(イラン側の)すべての重要な立場を盛り込んでいるということです。

正式合意は、19日にスイスで署名された後に詳細が公開される予定ですが、想定される内容として、イランメディアは「14項目からなる覚書の草案」を報じました。

【イランメディアが報じた14項目からなる覚書の草案】
1 レバノンを含むすべての戦線での戦闘を恒久的かつ即時停止
2 イランの内政不干渉・主権尊重
3 30日以内に海上封鎖の解除
4 イラン周辺からの米軍撤退
5 イランの取り決めに基づき30日以内にホルムズ海峡再開
6 イラン制裁の停止・イラン金融資産への完全なアクセス
7 アメリカとその同盟国による3000億ドル相当のイラン復興計画
8 核問題に関する60日間の交渉
9 イランの核拡散防止条約における約束の表明
10 アメリカは交渉中イラン周辺における軍事力を増強しない
11 凍結されているイランの資金240億ドルの解除(半分は交渉開始前)
12 合意履行の監視メカニズム確立
13 最終合意は国連安保理の決議で
14 最終合意にイランのミサイル計画と、武装勢力への支援に関する議論は除外

イラン側の草案に専門家「かなりの無理筋」

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このイラン側の草案について、前嶋教授は「かなりの無理筋」だと評価しています。

イランの復興計画で3000億ドルの支払いを求めるということは、アメリカから“罰金”を取るということになります。また、イランの周辺にあるアメリカ軍の撤退については「湾岸諸国に山ほどアメリカ軍がいるので、このようなことできない」と指摘。さらに「最終合意にイランのミサイル計画と、武装勢力への支援に関する議論は除外」なども含め、アメリカにとっては納得できないことばかり入っているといいます。

そうした中で核問題についての交渉が行われるということで、先送りどころか最初から上手くいかないのではないかと指摘しました。

アメリカ側が譲歩できる点が「ホルムズ海峡の再開」

【なぜいま】アメリカ・イランが戦闘終結に正式合意へ「トランプ氏の誕生日に『いい発表』をしたかったから」と専門家指摘 支持層向け“お祭り”の面も ホルムズ・核問題どうなる イスラエルがワイルドカードに?【解説】
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アメリカにとって難しい条件が多い中で、トランプ大統領が譲歩できる点として前嶋教授が挙げたのがホルムズ海峡の再開です。

(前嶋教授)「これはトランプ大統領が強調しています。“お祭り”は何のためにするのかというと、支持層を喜ばせるためです。中間選挙などに向けての自分の支持固めとして分かりやすいのがこのホルムズ海峡の再開だということなのでしょう」

ホルムズ海峡は「永久に通行料は無料」としつつも…

【なぜいま】アメリカ・イランが戦闘終結に正式合意へ「トランプ氏の誕生日に『いい発表』をしたかったから」と専門家指摘 支持層向け“お祭り”の面も ホルムズ・核問題どうなる イスラエルがワイルドカードに?【解説】
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ホルムズ海峡の運航再開について、イラン革命防衛隊に近いタスニム通信は、19日の署名後に通航が再開される予定だと伝えています。

ニューヨークタイムズの取材に対しトランプ大統領は「(イランとの合意で) 永久に通行料は無料」と話していますが、イランの草案では「イランの取り決めに基づき30日以内にホルムズ海峡再開」とあり、草案通りに合意がなされればイランの関与が残ることになります。

最大の焦点となる核問題の行方

【なぜいま】アメリカ・イランが戦闘終結に正式合意へ「トランプ氏の誕生日に『いい発表』をしたかったから」と専門家指摘 支持層向け“お祭り”の面も ホルムズ・核問題どうなる イスラエルがワイルドカードに?【解説】
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支持率が低迷する中、中間選挙が控えるトランプ大統領にとって重要なのは、熱烈な支持層へのアピールです。

彼らにとっては、ホルムズ海峡の再開や原油価格の安定以上に『イランの核の脅威を排除した』という事実のほうが重要であると前嶋教授は話します。一方、その重要な核問題については「60日間で話す」ということで、「お祭りに向けて先送りにしてしまったな」との実感を抱いているということです。

また、核問題をめぐり、アメリカの今後の目標について前嶋教授は次のように話します。

(前嶋教授)「アメリカは、イランが行っているとみている核の濃縮を、徹底的に薄めろというような要求をしてくるでしょう。2015年のイラン核合意で濃縮率は3.67%と決められましたが、それよりも更に薄くするという話になるのではないか。最終的にはイランの核を全廃するところにまで至ればアメリカとしては良いのでしょうが、そこまではいかないかもしれません」

「ワイルドカード」イスラエルの動向と不確実性

【なぜいま】アメリカ・イランが戦闘終結に正式合意へ「トランプ氏の誕生日に『いい発表』をしたかったから」と専門家指摘 支持層向け“お祭り”の面も ホルムズ・核問題どうなる イスラエルがワイルドカードに?【解説】
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そんな中、今後の展開を左右する最大の「ワイルドカード」となりそうなのがイスラエルです。

トランプ大統領が合意をSNSに投稿したまさにその日、イスラエル軍はレバノンの首都ベイルートの南部郊外を攻撃したのです。この攻撃に関してトランプ大統領は「イランとの合意が迫る特別な日にあってはならないことだった」とコメント。

前嶋教授によると、イランの核問題についてアメリカ側がどれだけ譲歩するか、ということが争点化しているなかでイスラエルの行動が問題になり得るということです。

(前嶋教授)「『イランの核の可能性を残したのではないか、ならばこちらは攻撃をやめないぞ』と、イランと関係するレバノンのヒズボラへの攻撃など、さらに行う可能性があります」

こうしたことから、この60日間での「ワイルドカード」としてのイスラエルが常に出てくる可能性を指摘し、トランプ大統領がネタニヤフ首相をどう抑えるかどうかも大きなポイントになるということです。

ただし、イスラエルのレバノンへの攻撃について、トランプ大統領は怒っているのか?という疑問がありますが、前嶋教授は、トランプ大統領とイスラエルとの関係性について次のように読み解きます。

(前嶋教授)「トランプ大統領の一番の支持層である福音派は、イスラエルを徹底支援することを望んでいます。

支持層を喜ばせることが念頭にあるトランプ大統領は、レバノンの攻撃について、イスラエルに自衛権があるけれど、一定程度抑えてくれという曖昧な言葉を使う。『激おこ』ではなく、『一定程度怒っている』というような感じだと思います」

「60日間の交渉」で核問題について進展はあるのでしょうか。アメリカとイラン、そしてイスラエルの今後の動向を慎重に見極める必要がありそうです。

(2026年6月12日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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