◆サッカー北中米W杯▽1次リーグF組 日本2―2オランダ(14日・ダラス競技場)

 森保ジャパンが、初陣で大きな大きな勝ち点1をつかんだ。FIFAランキング18位の日本は、W杯3度準優勝で過去1分け2敗の強豪オランダ(同8位)に2度追い付き、2―2で引き分けた。

森保一監督(57)の戦術眼、選手たちの意思統一が生んだ「采配力×結束力」で明け方の日本列島を驚かせた同点劇を本紙記者が解説。3大会連続の決勝トーナメント進出へ前進した日本は次戦、20日(日本時間21日)にチュニジアと対戦する。

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 森保監督が両拳を握り、喜びをかみしめる。不屈のイレブンは抱き合いながら感情を爆発させた。後半44分、鎌田が起死回生の同点ゴール。6万9285人が集った空調の利いたスタジアムのオレンジ色の一帯は言葉を失い、サムライブルーカラーの一帯がお祭り騒ぎに。「勝ち点1以上の価値がある勝ち点1だった。選手たちをたたえたい」。2度追いついて、執念のドロー決着を指揮官は誇った。

 後半6分に先制された時も、1―1の同19分に再び突き放された時も、選手たちは失点直後に11人で輪を作った。

「1点差は大丈夫」「相手はメンタル的に(守備重視で)引く。押し込むぞ」

 22年カタールW杯でドイツ、スペインから逆転勝ちを収めた成功体験を確認し、意思を統一した。

輪を解き、それぞれのポジションに向かった11人を、ベンチの選手たちが大きなアクションで鼓舞した。

 森保監督のタクトがさえた。三笘薫を故障で欠いた注目の左シャドー(1トップ後方)に、前田を初先発で起用した。直前の非公開練習でひそかに取り組んだ勝負手。前田は献身的な運動量でオランダの攻撃の芽を摘んだ。そして後半30分、指揮官は再度動いた。1点を追う状況でDF菅原、冨安を投入。相手は戸惑っていた。公式戦でほぼ試さず、練習でひそかに成熟を図ってきた“秘策”4バックへの変更だった。勢いにのまれたオランダは守備的5バックにシフト。攻撃的サッカーが伝統の強豪がプライドを捨て、守りに徹した。神采配で相手を混乱させ、同点ゴールを奪った。

 チームに一本のビデオメッセージが届けられた。送り主は、けがからの完治が難しいと森保監督が判断し、11日にチームから離脱したMF遠藤航(33)=リバプール=だった。

 「『俺のため』とか言わなくていいから。自信を持って戦ってくれ。テレビで見ているから」

 試合前に宿舎で行われたミーティングで、つい3日前まで一緒にいた前主将からの約3分間の動画メッセージを見た。別れのあいさつができないほど落胆し、無言でチームを離れた遠藤の無念を受け取った。この日のベンチには、遠藤のユニホームが掲げられた。

 CKで同点弾を演出した伊東は言う。

 「航だけじゃなくて(三笘)薫だったり(南野)拓実だったり。仲間の分も頑張らなきゃ」。

 けが人続出で単純な「戦力値」は低下したかもしれない。しかし、森保ジャパンの強さの根源でもある「結束力」は確実に増した。

 第2戦に勝利すれば1次リーグ突破に大きく前進するが、一方で敗れると窮地に立たされる。

 「次、勝とう」。 試合後、遠藤がSNSで力強く記した。

 森保監督も「勝ち点3をつかみ取れるよう準備していく」と話した。勝ち点1に満足することなく、最高の景色を目指し、さらに団結を強めていく。(岡島 智哉)

【森保監督に聞く】

 ―試合を振り返り。

 「やはりオランダは強かった印象。2回リードされた中、追いつくことは難しい相手だったが、選手たちがチーム一丸となってタフに粘り強く戦い抜いた。オランダ相手にこのW杯で勝ち点1を取れるチームはどれだけあるか」

 ―勝ち点1獲得に。

 「勝ち点3が取れずに残念な部分はあるが、勝ち点1以上の価値がある勝ち点1だった。選手たちが準備してきたことを実践してくれた。大きな自信になる。

押し込まれた中でも、じれずにしっかりと耐えて、チャンスをうかがっていった」

 ―後半30分から1点を追いつきにいくところで2トップに変更。

 「攻撃的な選手を前線に配置してターゲットになるというところと、ゴールに向かう部分も強みを持った選手を起用した。その流れで攻撃のギアが上がって、得点に結びついた」

 ―会見最後に、自ら切り出し。

 「あらためてオランダの方々にも感謝をしたい。(オランダ人の)オフト監督(元日本代表指揮官)の大きな影響を受けて、今の日本サッカーの発展につながった。私自身、直接教えていただいた監督が(オランダ人の)ビム・ヤンセン氏。日本に大きく貢献してくれた方だが、亡くなられて、去年フェイエノールトのクラブハウスにお参りに行かせていただいた」

 ◆森保監督がW杯で繰り出した「勝負手」

 ▽「奇襲3バック」(カタールW杯ドイツ戦) 0―1の後半開始に4バックから3バックに変更。練習でもほとんど試してこなかった“新布陣”で、後半に2ゴールを奪い逆転。

 ▽「戦術カタール」(カタールW杯スペイン戦) 0―1の後半開始時に堂安と三笘を投入。後に選手たちの間で「戦術カタール」と命名される猛プレス戦術で、3分に堂安、6分に三笘のアシストから田中がゴールを決め、2―1で勝利した。

 ◆W杯初戦で勝ち点を奪えば1次リーグ(L)突破率100% 日本が過去7大会で1次Lを突破したのは、いずれも初戦で勝ち点を挙げた4大会。今大会は出場国が32から48へ増えたが、データ上は3大会連続の決勝トーナメント進出へ向け、価値ある引き分け発進となった。

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