◆サッカー北中米W杯▽1次リーグF組 日本2―2オランダ(14日、ダラス競技場)
北中米W杯の1次リーグF組初戦を迎えたFIFAランキング18位の日本は、準優勝3度で同8位の強豪オランダと2―2で引き分けた。1点を追う後半12分、MF中村敬斗(25)=Sランス=が同点ゴール。
青とオレンジが織りなす6万9285人の視線が、一点に注がれた。日本が1点を追う後半12分、中村は久保のパスを呼び込んだ。ペナルティーエリアの左側。子供のころから“敬斗ゾーン”と呼ばれてきた得意な場所だ。ゴールから離れるドリブルで相手を誘い出すと、右足でドゥムフリスの股を抜く。鮮やかなW杯初ゴールに、同世代の久保とがっちり抱き合った。
「これまでやってきたことは無駄じゃなかった」。言葉に実感がこもった。元ブラジル代表のロナウジーニョに憧れた少年時代は、ブラジル音楽をBGMに、自宅前のアスファルトでシューズの裏に穴が開くまでボールを触り続けた。
ただ、技術だけではたどり着けない場所がW杯。中村の場合、自らを貫く意志の強さが突出していた。中学進学時、連係重視の柏の下部組織から、個の打開力を磨ける三菱養和SCへ移籍。当時、生方修司コーチに「ここはドリブル、できますか?」と尋ねて驚かせた少年は、自らのスタイルを信じて道を切り開いた。
10代で渡欧後は出場機会を失い、レベルが落ちるオーストリア2部へ移籍する苦境も味わった。それでも「絶対日本には帰らない」と欧州に踏みとどまり、結果を残して決断を正解に変えた。昨季は所属するSランスがフランス2部に降格。移籍にも失敗し、W杯を目前にして絶望感を味わったが、2部で14ゴールを量産して力を証明した。「自分を信じてやり続けたから、森保監督もスタメンで使ってくれた。感謝したい」。トップクラブの選手が居並ぶオランダの堅守を破り、その価値を世界に示した。
23年6月の代表初ゴールも、アシストは久保だった。戦友と大舞台で喜びを分かち合い「気持ち良かった。やっぱり久保選手からのパスっていうのも、またいいなって」と感慨に浸った。脚をつりやすい体質で、ふくらはぎの圧迫を避けるため限界まで下げた短いソックスは、今やトレードマーク。三笘、南野を欠いた森保ジャパンを救った背番号13。端正なルックスに強い意志を秘めたアタッカーが、主役の座に堂々と名乗り出た。(金川 誉)

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