兵庫県姫路市は、姫路駅から国宝・姫路城を結ぶ「大手前通り」などを「路上喫煙禁止区域」に指定しています。市はこれまで違反者から過料1000円を徴収していましたが、市内でたばこのポイ捨てが後を絶たないことなどを受け、7月1日から過料を2万円に引き上げました。

加熱式たばこも対象となります。

 全国的にみても高額な路上喫煙の罰則。でも厳しいだけじゃない姫路市の狙いを兵庫県の担当記者が解説します。

◎谷田潮音:神戸支局 兵庫県内の事件を取材し現場からリポート 市町の取り組みなども幅広く取材

過料2万円に込められた強いメッセージ

【20倍にUP】路上喫煙の過料「2万円」 姫路市の狙いは“排...の画像はこちら >>

 姫路市が路上喫煙の禁止区域に指定しているのは、世界遺産・姫路城の前からJR姫路駅へと続く「大手前通り」などです。今回の改定からは、紙巻きたばこだけでなく新たに加熱式たばこも対象に含まれることになりました。

 市がここまで厳しい措置をとる背景には、「ポイ捨て」問題があります。禁止区域内で市が毎月実施している吸い殻の計測では、少ない月でも200本、多いときには300本ほどが確認されており、マナーの改善が喫緊の課題となっていました。

 しかし、7月1日から始まったこの取り組みで、初日の午後3時半時点で実際に2万円を徴収されたケースは「ゼロ」でした。口頭による勧告(注意)が2件あったのみです。

 実は、この過料徴収には段階的なプロセスが設けられています。禁止エリアを巡回する指導員が違反者を見つけた場合、いきなり「2万円を払いなさい」となるわけではありません。

 指導員2人~5人で巡回
  ↓
  ↓路上喫煙を発見
  ↓
 口頭による勧告
  ↓
  ↓従わない
  ↓
 書面による命令
  ↓
  ↓従わない
  ↓
 過料2万円

 このように過料の適用へと進む仕組みです。

建設費だけで2000万円…“共存のための環境整備”に莫大なコスト

【20倍にUP】路上喫煙の過料「2万円」 姫路市の狙いは“排除”ではなく“共存” タバコによる巨額税収と健康増進のバランスどう取る?
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 高額な過料を設定する一方で、姫路市美化業務課によると、この施策の狙いは「2万円を徴収するかどうかより、喫煙者に対して強いメッセージを出すことが目的。喫煙者を排除したいわけではない

吸いたい人は喫煙所へ、と促したい」ということです。

 吸いたい人には適切な場所を提供し、吸わない人との快適な分煙環境をつくる“共存”こそが本来の目的だからです。

 そのため姫路市では、過料引き上げと連動する形で、今年4月にJR姫路駅の北側に公設の喫煙所を新たに設営しました。ルールだけを厳しくして吸う場所をすべて無くしてしまえば、ルール違反者が増えるリスクがあるためです。

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 しかし、こうした「共存のための環境整備」には、自治体側に莫大なコストという重い負担がのしかかります。

 姫路市が今回設置したタイプの公設喫煙所は、建設費だけで約2000万円が投入されています。さらに、日々の掃除やメンテナンスといった維持管理のために、今後は年間約300万円の費用がかかる試算です。

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 同様の動きは大阪市でもみられます。大阪市では過料こそ1000円に据え置かれているものの、現在は全域で路上喫煙が禁止されており、その代わりに街中に186か所以上もの喫煙所を整備しています。

 大阪市の場合、これらの建設や維持、清掃員の人件費などを含めた今年度の路上喫煙対策の予算21億円が計上されています。

 自治体にとって、喫煙所の確保と維持は非常に労力とコストがかかることとなります。

「たばこ税」年間300億円の歳入も…

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 これほどの巨額な費用を投じてまで自治体が喫煙所を整備する理由の一つに、「たばこ税」という貴重な自主財源の存在があります。

 今年度の見込みをみると、姫路市では約39億円(予算)、より規模の大きい大阪市では年間約300億円もの歳入がたばこ税によってもたらされる見通しです。

 これらは喫煙所の整備だけに使途が限定されているわけではなく、地域の様々な公共サービスに広く使える一般的な財源となっています。タバコの販売数自体は年々減少傾向にあるものの、税率自体が引き上げられてきたため、自治体の税収としてはここ数年ほぼ横ばいを維持しています。

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 神戸学院大学・中野雅至教授は「自治体や国としては、医療費削減などを考えれば、喫煙者を減らしたい部分もあるが、一方で喫煙者は権利もあるし巨額の財源という面もある。その“バランス”をとり続けている」と話します。

 健康増進や医療費抑制のために喫煙率を下げたいという本音と、貴重な財源を手放したくないという本音の間で、国も自治体も常に複雑な舵取りを迫られているのが実情です。

 「吸う人」と「吸わない人」の双方が不快な思いをせず、安全に共存できる街づくりに向けて――。姫路市の「過料2万円」という一石が社会にどのような変化をもたらすのか、今後の効果と運用の推移に注目が集まっています。

(2026年7月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『記者プレゼン』より)

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