息子の命を奪った加害者と向き合い続ける
2015年、和歌山県で小学5年生の男の子が刃物で殺害されました。服役中の受刑者からは、今も遺族が望む謝罪はありません。
その後、遺族は手紙のやり取りを経て受刑者と面会しましたが、ある時を境に受刑者からの手紙が届かなくなり、受刑者の親にも手紙を送りますが、1か月以上連絡が取れていません。
加害者との関係を断ってしまえば、望む謝罪や賠償すら得られません。そのため、遺族は今後も「加害者との糸を絶やさない」と話します。
息子の命を奪った受刑者と向き合い続けていく―――
そんな複雑な思いを抱えた被害者遺族を取材しました。
小5男児が10か所以上を刺され死亡 いまだ“納得のいく謝罪”なく…
1冊のスケッチブックを懐かしく見つめる森田悦雄さん(78)。カメラに向かってにっこりと笑う男の子。森田さんの息子で小学5年生だった都史くん(当時11)です。
都史くんは11年前の2015年、和歌山県紀の川市にある空き地で頭や体など10か所以上を刃物で刺され殺害されました。
逮捕されたのは、近所に住んでいた中村桜洲受刑者(当時22)。殺人罪などで懲役16年を言い渡され、服役しています。動機は「近所の悪ガキで迷惑だった」というものでした。
事件から11年が過ぎても受刑者から納得のいく謝罪はなく、約4400万円の賠償金も支払われていません。
「心情伝達制度」で受刑者に思い伝え…手紙のやり取り始まる
(森田悦雄さん)「申し訳なかったということを(加害者から)最終的に聞きたい。それが、したことへの反省につながると思う」
息子の命を奪った受刑者は今何を思っているのか。森田さんは、刑務所を介して受刑者に思いを伝える「心情伝達制度」を使い、初めて気持ちを伝え、その後手紙のやり取りにつながりました。
(中村桜洲受刑者からの手紙)
「本当にごめんなさい。反省しています。刑務所まで会いに来てください」
「誰でもよかった。購入した刃物を使ってみたかった」面会で語られた動機
森田さんは去年12月から2回にわたり刑務所で受刑者と面会しました。
(森田悦雄さん)「これ誰か分かりますか」
(中村桜洲受刑者)「はい。僕が殺した人です。毎日反省しています。取り返しがつかないことをしてしまいました」
さらに事件当時の動機については…
(森田悦雄さん)「なぜ都史くんを殺害したのですか?」
(中村桜洲受刑者)「誰でもよかったです。購入した刃物を使ってみたかったから」
「ここまで話をしてくれるとは」受刑者と向き合う決意新たに
面会後、森田さんは…
(森田悦雄さん)「ここまで話をしてくれるとは思わなかった。いろいろな話をしてくれて、事件当時のことも。確信するちょっと手前まで来ていたけど、きょうは来てよかったなと」
受刑者の思いを知った森田さん。息子の無念を晴らすため、今後も受刑者と向き合っていく決意を新たにしました。
「森田さんに会いたい」最愛の夫を殺された女性からの連絡
そんな中、森田さんに会いたいという1人の犯罪被害者の家族から連絡が入りました。
森田さんの元を訪ねた女性は8年前、最愛の夫が突然殺害されました。
2018年、富山市にある「奥田交番」に男が押し入り、警察官を刃物で殺害。奪った拳銃で小学校の正門前にいた警備員・中村信一さん(当時68)を撃ち殺害しました。
逮捕された元自衛官の島津慧大被告は強盗殺人の罪などで起訴され、一審で無期懲役が言い渡されましたが、高裁で判決を破棄され裁判が続いています。
「よくそんな気になるね」同じ立場の人からも理解されない“加害者との面会”
「事件と向き合い、心から夫に謝ってほしい」。そんな思いから中村さんの妻は2020年1月に勾留中の加害者と面会しました。
しかし、そのことを別の事件の被害者に話すと、不気味がられ今も悩んでいます。
(中村信一さんの妻)「加害者に会いに行くことがなかなか理解されにくい。同じ被害者の方から散々言われたので、『よくそんな気になるね』とか。なぜそこまで言われるのだろう」
「簡単に死刑で死んでもらったら困る」
今後の裁判で死刑判決が出る可能性もありますが、中村さんの妻は加害者には「生きて苦しんでほしい」と話します。
(中村信一さんの妻)「簡単に死刑で死んでもらったら困る。私は死ぬまで抱えていかないといけない、背負っていかないといけない。加害者がそんな簡単に死刑で『これで罪を償いました』と言われても、納得いかないだろうなと思った」
(森田悦雄さん)「同じ目線で話をしたことで、自分がしたことを改めてもらいたい」
(中村信一さんの妻)「森田さんに出会えて本当によかったです。やっぱり頑張ろうって思えるようになりました」
「手紙は親が送ってくれているはず」途絶えた手紙のやり取り
1年以上、順調に受刑者と手紙のやり取りを続けていた森田さん。しかし、今年2月以降、手紙が届かなくなりました。
真相を確かめるため、今年5月、森田さんは再び受刑者に会いに行きました。
(森田悦雄さん)「あなたの手紙を待っていますが、一つも返事が来ていない。どうなっているのですか?」
(中村桜洲受刑者)「手紙は送りました。自分の家にです。手紙は親が送ってくれているはずです」
「心の中にスイッチを入れろ」受刑者の“裏切り”に怒り
大事な手紙をなぜ直接送ってくれなかったのか。森田さんは受刑者に怒りをあらわにしました。
(森田悦雄さん)「私はずっと返事を待っているんですよ。桜洲くんのために協力していこうかと思ったけど、今は裏切られた気持ちです。ちゃんと心の中にスイッチを入れろ」
「受刑者の親が手紙を止めている」
面会後、森田さんは…
(森田悦雄さん)「受刑者本人から手紙を親に託している。託している手紙を、うちに送ってこないのは、(受刑者の)親が手紙を止めている。だから私は怒っているんです。親がどのようにうちに対して対応するのかを聞きたい」
「謝罪や損害賠償について聞きたい」受刑者の親に手紙で質問
受刑者の発言は本当なのか。そうであれば手紙はどうなったのか。森田さんは同じ市内に住む受刑者の親に手紙で質問しました。
(中村受刑者の親への手紙)
「昨年12月から桜洲受刑者と何度か面会をしました。手紙のやりとりをしていましたが、4か月前から手紙がこなくなりました。
「しばらくお時間をください」受刑者の親から1か月以上連絡なし
すると数日後、受刑者の親から手紙が届きました。
(中村受刑者の親からの手紙)
「弁護士に相談しますので、しばらくお時間をください」
この手紙から1か月以上経過しましたが、親からの連絡はありません。森田さんは「今後も諦めず加害者と向き合っていく」と都史くんに語りかけます。
(森田悦雄さん)「都史くん。ずっとお父さんのことを見ておいてな。やり遂げるまで、とことんまで行きたいと思うので」
(2026年8月18日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)

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