Adobeが提供している生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で、2024年3月末から「構成参照」という新たな機能を使えるようになっています。「テキストから画像生成」モジュールで利用でき、既存の画像を参照させることで狙い通りの出力結果を得やすい機能です。


【目次】

“安全性” がアピールされている「Adobe Firefly」

「Adobe Firefly」は提供スタートから1年を迎え、現在はWeb版のほか各種のAdobeアプリにも組み込まれはじめています。新たな「構成参照」の機能が発表された時点で、「Adobe Firefly」を用いて生成された画像は65億枚以上にものぼるそうです。

狙い通りの結果が得やすくなる、アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で使える新機能『構成参照』を解説
2023年11月には、Adobe Firefly Image 1 Model(左)からAdobe Firefly Image 2 Model(右)へと進化同社が提供するクリエイティブ生成AIモデルファミリーについては、「安全に商用利用できるよう設計」されていることが特に強くアピールされています。「Adobe Firefly」の生成AIモデルのトレーニングには、「Adobe Stock」などのライセンスドコンテンツと、既に著作権が失われたパブリックドメインのコンテンツが使用されました。

現在の画像生成AIは本当に「誰でも簡単に」使える?

「Adobe Firefly」は、例えばテキストを入力するだけで瞬時に画像を生成できたりと、AIならではの便利な機能を備えています。とはいえ、従来の「Adobe Firefly」は出力結果にばらつきも多く、イメージ通りの画像を生成したい場合にはプロンプト(AIへの指示)の試行錯誤が必要で、個人的には「偶発性の高いサービス」といった印象でした。

つまり、「このような画像を生成したい」と考えても、かなり使いこなさないと望むような結果は得られず、「簡単」と言って良いのか難しいという感想です。そのような使い方よりも、何度も試してみて「偶然にできた何となく良さそうな画像」を採用するという、ある意味でAIに振り回されるワークフローのほうが多かったのではないでしょうか。


これは、コンピューターによるグラフィックデザインが登場したばかりの頃の状況、さらには「パソコンを使うこと」が批判されがちだった内容にも似ているように感じます。決してネガティブなとらえ方ばかりでなく、見方を変えれば新たな1つのスタイルであり、新たな “制作・創作” の定義とも考えられます。

一方で「Adobe Firefly」で利用できるようになった「構成参照」は、より正しく使用者のイメージをAIに伝え、望み通りの結果を得られやすくする機能です。「追加学習」のようなものと言い換えると分かりやすいでしょう。

偶然に頼らず狙い通りの構図の画像を生成

具体的には、既存の画像を参照テンプレートとして使うことで、同じレイアウトでの複数の画像バリエーションを生成できます。例として、部屋の写真やスケッチをアップロードして「生成」ボタンを押すと、基本的な構成は参照画像と一致させたまま、部屋を丸ごと再デザインできることが挙げられています。


狙い通りの結果が得やすくなる、アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で使える新機能『構成参照』を解説
参照画像と輪郭や深度を一致させる機能で、どのくらい一致させるかの度合いは「強度」という設定によって段階的に変更が可能です。

「Adobe Firefly」には「構成参照」のほかに、「スタイル参照」の機能もあります。そちらは参照画像を取り込んでプロンプトに適用し、スタイル(視覚的な特徴)を似せる機能です。「構成参照」と「スタイル参照」を組み合わせることで、さらにイメージ通りの生成結果に近づきやすくなります。

狙い通りの結果が得やすくなる、アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で使える新機能『構成参照』を解説
これらの機能の参照テンプレートには、自前の画像をアップロードしたり、あらかじめ用意されているギャラリーから任意のものを選んだりできます。

狙い通りの結果が得やすくなる、アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で使える新機能『構成参照』を解説
ギャラリーに用意されている道の画像を参照して、川の画像を生成した例* * * * * * * * * *

「構成参照」を使うと、かなり強力に “同じ構図の画像” が生成されます。
ざっくりとしたラフを用意して、生成AIで仕上げるといった使い方もこれまで以上に実現しやすそうです。

ただし、生成AIに関しては「自分の作品が勝手に学習に使われる」という心配がつきまとい、抵抗を持つクリエイターが多いことでしょう。参照テンプレートには「自前の画像」をアップロードして使えますが、それが本当に「自前」なのかは分からず、議論の余地がある機能とも言えそうです。

アドビ株式会社
URL:https://www.adobe.com/jp/creativecloud.html

2024/04/19

狙い通りの結果が得やすくなる、アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版で使える新機能『構成参照』を解説