篠原ななみ(本誌ライター)
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株式会社ここいーよ(本社:愛媛県松山市、代表取締役:清家佐代)は、本人が残した写真や動画、音声、エピソードなどをもとに、AIが応答を生成するサービス「永活AI」を開発・提供している。公式サイトでは、398,000円(税込)の「スタンダードプラン」と、798,000円~(税込)の「プロフェッショナルプラン」を案内している。
一方、同社は2026年9月3日、余命を告げられた人などを対象に、無償提供の希望者を募集すると発表した。無償提供の対象として想定しているのは、幼い子どもがいて余命を告げられた人、病気などにより将来家族との十分なコミュニケーションが難しくなる可能性のある人などだという。

<生前資料を参照してAIが応答を生成>

たとえば、子どもが成長して進路や仕事に迷ったとき、「父ならどう考えただろう」「母に相談したかった」と思うことがあるかもしれない。永活AIは、そのような場面で、生前の本人が残した資料を参照し、対話形式の応答を生成することを目指している。

同社によると、本人の考え方や価値観に関する資料を登録し、利用時に家族が問いかけると、AIがそれらを参照して対話形式の応答を生成する仕組みだという。2026年9月10日、11日に開かれた「エンディング産業展2026」では、リアルタイム対話のデモを初披露した。一方、AIが返すのは本人の新たな発言ではない。生前資料を参照して生成された応答であり、本人ならどう答えたかを保証するものではない。記録にない内容について誤りや推測が混ざる可能性、将来にわたるサービスの継続性などは、利用前に確認する必要がある。

<開発の背景は「家族へ言葉」を残したいという思い>

「永活AI」の開発を担当した同社の下村俊樹氏は指定難病を抱え、将来、自分の言葉で家族と十分に会話できなくなる可能性を意識したことから、子どもに何を残せるかを考えるようになったという。
指定難病と診断された当時の心境について、下村氏は本誌の取材にこう語った。

「この先、自分の身体がどうなるのかという不安はありました。
しかし、それ以上に考えたのは、子どものことでした。もしこのまま病気が進行して会話ができなくなることがあったら、いま父親として何を残せるのだろう。まだ伝えていないことが、あまりにも多いと気づいたのです」(株式会社ここいーよ・下村俊樹氏、以下・下村氏)

子どもたちにまだ伝えていないことはあまりに多い。親にとっては、いつか話せばよいと思っていたことばかりである。しかし、その「いつか」が必ず訪れるとは限らない。

「子どもが今、必要としている言葉だけではありません。30歳になった時、40歳になった時に、初めて聞きたくなることもあるはずです。その時、自分がいないのであれば、今のうちに考え方や伝えたい言葉を残しておく必要があると思いました」(下村氏)

そんな中、「永活AI」の構想を具体化するきっかけは、余命宣告を受けたがん患者と家族を紹介するテレビ番組だったという。下村氏は、番組に映る家族の姿を見ながら考えた。下村氏の場合は、自身の病気をきっかけに、将来、家族と十分に会話できなくなる可能性を考えると、不安を感じたという。実際に残された時間を告げられた人は、どれほど多くの言葉を胸に抱えているのだろうか、と。

<「永活AI」生前の記録をもとにAIが応答>家族へ言葉を遺す...の画像はこちら >>

(写真:本稿の取材にご協力いただいた「永活AI」開発者の株式会社ここいーよ・下村俊樹氏)

「余命を宣告された方は、治療や生活、仕事、お金など、さまざまな問題に同時に向き合わなければなりません。
その中で、子どもの将来まで見据え、必要になる言葉をすべて準備することは難しい。しかし、“もっと話しておけばよかった”という後悔は、本人にも家族にも残ります。そこを技術で支えることはできないかと考えました」(下村氏)

では、開発者の下村氏自身は、子どもへどのような言葉を残したいのだろうか。

「子どもが将来、自分には価値がないと思ってしまうことがあるかもしれません。そんな時に、『あなたが生まれた日、お父さんは本当にうれしかった。あなたが存在しているだけで幸せだった』と伝えたいです」(下村氏)

下村氏は、AIを通じて人生の正解を教えたいわけではないという。

「私の考えに従ってほしいのではありません。子どもには、自分の人生を生きてほしい。ただ、何を選んでも味方だったことだけは忘れないでほしいのです。私がいなくなった後も、その言葉に立ち戻れる場所を残したいと思っています」(下村氏)

もちろん、親の考えを子どもに押し付けるものにはしたくはない。下村氏は、子どもが自分で人生を選ぶ際に、必要に応じて親の言葉を振り返るための手段にしたいと考えている。

<完成したAIだけが、家族に残るものではない>

永活AIの制作に向けた聞き取りを進めるなかで、本人が初めて言葉にする思いもあるという。
これまで照れくさくて言えなかった感謝。誤解されたままになっていた出来事。家族に心配をかけまいと隠していた気持ち。

「永活AIの制作に向けて自分の人生を振り返る中で、『これは今、伝えなければいけない』と気づくことがあります。制作過程で、残された時間を家族とどう過ごすか考えるきっかけにもなってほしいのです」(下村氏)

自分の人生を振り返る。家族への言葉を見つける。家族もまた、本人に聞いておきたいことを尋ねる。その時間自体が、AIとは別に残る家族の記憶となるというわけだ。

<無償提供とクラウドファンディングを計画>

同社は2026年9月15日付の発表で、応募者への無償提供を支援するため、一般社団法人全国障害福祉事業協会がクラウドファンディングを実施する予定だと説明した。募集段階では、応募者のうち誰が提供対象となるのか、クラウドファンディングの成立が提供条件になるのかなどは確認が必要だ。

公開情報では、応募者全員が無償提供を受けられるか、無償となる範囲や件数、制作後の保守・保存費用などは明らかにされていない。応募内容を確認したうえで、本人や家族の状況を聞き、今後の支援方法を案内するとしているので、詳細は公式サイトで確認してほしい(https://cocoiyo.com/eikatsu-ai/#Section01)。


写真や音声など、個人性の高い情報を扱うため、データ管理も重要だ。同社は、AIであることを明示し、本人または家族・法定代理人の同意を確認するとともに、希望に応じて学習データや会話データの削除に対応するとしている。ただし、本人の死後のアクセス権、未成年の子どもが利用を望まない場合の扱い、サービス終了時のデータ移行など、公開情報だけでは分からない点もある。事業者には、AIの限界とデータの取り扱いについて、利用者に十分説明することが求められる。

永活AIは本人を再現するものではなく、生前の記録をもとにAIが応答を生成する仕組みである。利用を検討する際は、生成内容の限界に加え、無償提供の条件や費用、データの保存・削除、本人の死後のアクセス権、サービス終了時の扱いを事前に確認する必要がある。募集要項と相談窓口は公式サイト(https://cocoiyo.com/eikatsu-ai/)に掲載されている。
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