軽部未帆さんのLIFE STORY
[INDEX-AREA]栄養士の目に映ったケアの現場は…
これまでのご経歴を教えてください。
短大で栄養士の資格を取り、委託給食会社へ就職しました。そこから派遣された先が、この「ちば美香苑」だったんです。
2年ほど勤めましたが出産を機に一度退職し、専業主婦としてしばらく過ごしてから、今度はパートで再雇用してもらいました。正社員に復帰したのは5~6年前です。
Before After 雇用形態 正社員 正社員 業種 食品 短期入所事業 職種 栄養士 介護士 勤務時間 シフト制 シフト制 休日 週2日のシフト制 週2日のシフト制 業務内容 食事づくり、献立作成 身体介助、生活支援勤務地としては、ずっと「ちば美香苑」で働いていらっしゃるということですか?
そうです。なんだかややこしい話でごめんなさい(苦笑)。
栄養士を早々に退職されたのはなぜでしょう?
実は、栄養士自体に大した思い入れがあったわけじゃなくてですね…。そもそも短大で食物栄養学を学んだのも、何か資格を取って手に職をつけてほしい両親の意向と、料理への苦手意識を克服できればいいか程度の私の思惑が合致した、という打算の結果でした。
卒業後もなんとなく流されるままに栄養士の職に就いたものの、是が非でもこの仕事を!といったモチベーションではなかったし、要は向いてなかったのかなぁなんて思ってます(笑)。
「勤務する施設は変えず、介護士へ異業種転職」というのは珍しいお話だなと思いました。何かきっかけがあったのですか?
栄養士として就業中、厨房から施設内の様子がよく見えたんです。介護スタッフも利用者さまもすごく楽しそうで、それが心底羨ましくて仕方なかった。私も「あっち側」に行きたい!という欲求が抑えられなくなって…。
そこで、今の上司でもある副施設長に相談して、派遣元の会社とも話し合い、無事に介護士として受け入れてもらうことができました。
【副施設長さんからコメントをいただきました!】
当時、軽部さんが恨めしそうな顔で私たちを見ていたのをよく覚えています(笑)。その頃、うちで働いていた介護士たちは若い世代が多かったんですね。
私は私で、軽部さんの明るい人柄や高い対人スキルを知るにつれ、狭い厨房内に閉じ込めておくにはもったいない人材だと思っていました。そのため、彼女から「介護士にチャレンジしたい」と聞かされた時は、驚きを感じると同時に嬉しくてたまりませんでしたね。
一度は退職するも再び介護士へ
念願の介護職へ就いてみていかがでしたか?
当初、業務に関してはまったく分からないことだらけで…。短大時代にヘルパー2級の資格を取得していたため基本的な知識は持っていましたが、やっぱり実際に働くのとは全然違うんだと痛感しました。先輩方にはたくさん迷惑をかけてしまったと思います。
それでも「介護の現場は楽しそう」という直感には間違いがなくて、笑顔の毎日でしたね。利用者さまには可愛がっていただいたし、同僚たちとも切磋琢磨しながら充実した時間を過ごすことができました。

結婚・出産を機に、現場から一度離れたとおっしゃっていましたね。
はい。23歳頃に退職し、7年間くらい2人の子どもの育児が中心の生活を送りました。下の子が3歳になった頃、副施設長から「また働かない?」と声をかけていただいて。
退職後もスタッフさんとご縁がつながっていたのですね。
実は主婦時代も、子どもを連れて施設へちょくちょく遊びに来ていたんです。ここに来たら誰かしらが遊び相手になってくれるので、子どもたちのお気に入りの場所でした。私も、気心の知れたスタッフたちと話すことで子育ての気晴らしができましたし。
おじいちゃん・おばあちゃん世代との交流は、お子さんにとっても良い刺激になりそう!
今、子どもは中学生と小学校高学年になりましたが、施設で遊んだ時のことはしっかり記憶に残っているようです。この3年間、コロナ禍で訪問することはできていませんが、ことあるごとに「◯◯のおじいちゃん、元気?」なんて聞いてくるんですよ。
利用者の皆さんも、子どもたちとの交流を喜んでいらっしゃったのでは?
そりゃあもう!介護士に向けるのとは全然違う、200%の笑顔を見せてくれるんですよね。高齢者にとっての「子ども」という存在の大きさや、多世代交流の重要性をしみじみ実感する経験でした。

家庭の事情に合わせて働き方をチェンジ!
現在の働き方を教えてください。
再雇用当初は時短パートでしたが、現在は正社員として働いています。お休みはシフト制で週2日。夜勤には月5~6回入っています。
家庭との両立はいかがですか?
実家に甘えてばかりなので、「両立できてます!」なんて胸を張って言えないんですが…(苦笑)。両親のサポートのおかげで子どもが小さい頃から夜勤に入ることができたし、朝早い時間帯でも安心して出勤できています。当施設にはママさんスタッフが多くいることから「お互いさま」の風土が根付いているのもありがたいです。周囲に助けられてこその今ですね。

これまで働いてきて、一番大変だったことはどんなことでしょう?
やはり、コロナ禍の最中はとても苦しい時期だったなぁと。利用者さまに感染させてはいけないというヒリヒリするようなプレッシャーはもちろん、スタッフにコロナが出てしまった時の人員調整など、毎日が綱渡りのような気分でした。
再雇用前と比べて、業務内容は変化しましたか?
当施設では、特養、ショートステイ、デイサービス、グループホームといった多様な介護サービスを提供しています。私も3年おきくらいに配属先が変わり、ひと通りの部署を経験しました。今年1月からはショートステイ部門に所属しています。

部署異動については、働く人の希望は考慮してもらえるのですか?
もちろんです。特に私は色んなワガママを聞いてもらっていて…。
独身時代は特養にいましたが、復帰直後は子どもの保育園の時間に合わせて働けるデイサービスでの再スタートとなりました。しばらくして離婚することになり、なるべく稼げるようにと夜勤のある入居型施設へ所属を変えてもらいました。ライフステージが変わるたびに働き方を見直しできており、本当にありがたいです。
家庭の事情も遠慮なく相談できる風土があるのは嬉しいですね。
そうですね。

相手の喜びが自分のしあわせにつながる仕事
さまざまな介護サービスに携わってこられて、軽部さんがご自身に最も適性があると感じるのはどちらの現場ですか?
今所属しているショートステイかなぁ。
例えば特養だと定員数が多いため、どうしてもルーティン業務に追われてしまう面があります。その点、ショートステイはうんと人数が減り、一人ひとりの利用者さまとゆっくり向き合える時間が取れるんですね。
それに、ショートの利用者さまは比較的自立度の高い方が多いですから、介護士には身体介助の技術だけでなく、コミュニケーション能力が求められます。「人と話すことが得意」という自分の長所を活かせる楽しさがありますし、ご希望や想いを伺いながらより心地よいケアを実践できることに充実感が得られています。
軽部さんが思う、介護職のやりがいはどんなことですか?
介護士にとって、利用者さんの笑顔は何にも代えがたいやりがいです。喜んでもらえればもらえるほど、もっと相手の求める気持ちに応えたいという意欲が自然と生まれ、自己の成長にもつながりますしね。
それに、相手に喜んでもらうことで、こちらも元気をいただけるんです。「高齢者ケア」と聞くと、大変そう・しんどそう…というイメージが湧きますよね?でも、与えるだけじゃなく、もらえるものも大きいのが介護士という仕事。この魅力がもっと多くの人に伝わるといいなと思います。
相手への思いやりが自分にも戻ってくるというのは、とても素敵な考え方ですね。
私は離婚も経験したし、子育てだってすべてが順風満帆だったわけではありません。けれど、どんなに心が折れそうな時も、くすぶっている負の感情を忘れさせてくれるのが介護の仕事でした。ここに来れば「軽部さんどうしたの、元気ないよ?」なんて声をかけてくださる利用者さまがいたし、スタッフたちがいつも笑顔で私を迎えてくれましたから。
介護の現場は、他者からの支えを実感できる場所だと思います。だからこそ、私も周囲の人たちに何かお返しがしたい。ちっぽけな力かもしれないけれど、いつまでも「初心忘れるべからず」で、真摯にケアへ向き合い続けたいと思います。

介護の現場であなたの笑顔を輝かせて!
軽部さんのこれからの目標を教えてください。
ケアマネの資格取得です。学生時代に取った栄養士やヘルパーの資格が就職に役立った経験から、資格ってやっぱり一生の宝物だなと。特にうちは母子家庭ですし、安定した生活のためにも常に向上心を持って取り組んでいきたいです。
あと、30代後半を迎えた今、夜勤がしんどいなぁと感じることが増えてきて(苦笑)。だんだんと無理が効かなくなってくる年齢ですから、これまでのキャリアを活かしつつ、規則正しい生活を送れる職種へシフトしていければと思っています。
年齢や生活スタイルに合わせて、働き方や環境を変えられるのが介護の世界の魅力ですよね。
本当にそう思います。例えば家庭環境の変化など、本人のやる気や努力だけではどうにもならないことってありますよね。でも、介護業界は融通が効く現場も多いので、一度相談してみたら意外と道が開けるかもしれません。もしも事情があって働くことを諦めている人がいたら、思い切ってチャレンジしてみてほしいです。
最後に、介護職への転職を目指す方へメッセージを。
「介護の仕事は大変だ」なんて言われますが、利用者さまの人生のサポートができる素晴らしい仕事。この世界には、あなたの笑顔を待っている人がいますよ。一緒に頑張りましょう!

撮影:丸山剛史