介護保険の利用が始まると、ほとんどの場合で担当ケアマネージャー(ケアマネ)が決まり、サービスを利用することになります。ケアマネは基本的に毎月、サービスを利用している本人がお住まいの場所に訪問します。
「ケアマネに訪問されるのがめんどくさい」
そんな声も聞かれますが、実は法律で定められているうえに、利用者の健康状態をチェックする重要な機能を持っています。
そこで、今回はケアマネの訪問について解説し、利用者やご家族がどのように接すると良いのかお話いたします。
法律で明文化されているケアマネの訪問
ケアマネの訪問は、介護保険法指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第十三条十三に明記され、義務付けられています。
一般の方はもちろん、おそらく介護保険を利用されている方も何のこととかよくわからないでしょう。
この法律は人員及び運営に関する基準で、ケアマネが利用者へモニタリングを行う頻度について定めているものです。
モニタリングの頻度については、要介護の方は1ヵ月に1回以上・要支援の方は3ヵ月に1回以上、その方のお住いの場所に訪問して行うことと定められています。
この基準はケアマネだけではなく、利用者についても契約時に説明を受け、モニタリングを受けなくてはいけません。つまり、ケアマネと利用者の両方に課せられた義務なのです。
なお、下記のような特別な事情がある場合はモニタリングを行わなくても良いとされています。
- 月の間中、利用者が入院中の場合
- 入院していた利用者が月末ぎりぎりに退院した場合
- 月の間中、利用者がショートステイを利用した場合
- 利用者が退院直後に直接ショートステイを利用した場合
- 利用者が感染症に罹患したため、訪問できなかった場合
- 利用者の居宅が被災したため、利用者宅に訪問できなかった場合
- 利用者が旅行などの理由で不在だった場合
- 利用者が月の途中で死去した場合
モニタリングで確認すること
では、月1回以上のモニタリングでは、いったい何をするのでしょうか。
まずは簡単にケアマネがどのように介護保険のケアプランを作成するか説明いたします。
ケアマネが行うケアマネジメントプロセスは、介護保険法に基づいて、次のような7つに分けられています。
この中で、モニタリングはどのような位置付けにあるのでしょうか。
モニタリングは、サービスの内容がケアプランに沿って提供されているか、目標に向かって提供されているかといったサービスの提供状況を、利用者に確認していきます。
- 利用者のニーズに対する充足度はどうか
- ほかに必要なサービスはないか
- 利用者本人やご家族の要望に変化はないか
- ケアプランに定めている目標は達成できているか
- 利用者やご家族と、ケアマネや介護事業所が信頼関係を築けているか
- 利用者への援助目標の達成はどの程度されているか
また、サービス提供事業所からの情報をもとに、目標の達成状況を確認します。その際、達成できていなかった場合は、そのサービスの進捗状況を確認し、目標を継続するか変更するかなど検討を行います。達成できていた場合は、新たな目標を設定したうえで、利用者およびご家族に提案を行います。
モニタリングで記録される情報とは
介護保険でのサービス提供を開始した当初のモニタリングでは、利用者やご家族の不安が特に大きいものです。
サービス介入初期のときは、ケアマネはケアプランの評価だけでなく、利用者やご家族の声に耳を傾け、信頼関係を築くことを大切にしています。また、以降のモニタリングやサービス提供においても重要です。
継続して定期的にモニタリングを行うことにより、利用者やご家族から新しい要望や悩みが出てくる場合が多く見受けられます。新たな要望や悩みを課題とし、利用者にとって必要と判断した際にはケアプランへの反映を検討していきます。
また、モニタリングで得られた情報は必ず記録します。アセスメントやケアプランと違い、定められた書式はないためケアマネの事業所によって様式は異なりますが、記録が必要な項目は法律で定められています。
記録する内容は、本人やご家族からの聞き取りだけではなく、サービスを提供する事業所の担当者からの情報もくみ取りながら、利用者の身体状況の変化やサービス実施状況について詳細に記録を行います。また、そのときのケアマネの判断や判断理由についても記録します。
特に以下の項目に関してヒアリングによる詳細内容と評価を記録しています。
ご利用者およびご家族の状態・変化 利用者の身体状況や健康状態の変化に加え、ご家族の気持ちの変化や利用者とご家族との関係性の変化 サービスの実施状況 ケアプランに沿ってサービスの提供が実施できているか。また提供しているサービスが計画や目標に合っているかを評価します。その際、自立支援や重度化防止の観点から検討し、現在のプラン内容のまま継続で良いか、変更が必要かを判断するため、作成当初のケアプラン内容と利用者やご家族の現在のニーズにズレが生じていないかの評価します。 援助目標の達成状況「サービスの実施状況」で確認した内容をもとに評価を行います。仮に目標が未達成であったとしても、達成に近づいていると判断されれば、達成するまで同じ目標を継続することも可能です。
ほとんど進捗が見られない場合は、設定した目標が高すぎたと考えられるため、目標を修正する必要があります。その場合、どの段階まで達成できていたのか過去にさかのぼって記録を確認し、目標を検討します。
サービスの見直し 高齢である利用者の身体状況・健康状態は絶えず変化します。身体状況や健康状態、利用者・ご家族のニーズに合っていないサービス提供を続けることは、ケアマネ・利用者双方にとってデメリットでしかありません。①から③のチェックを終えたあと、ケアマネは必要に応じてサービスの見直しを実施する必要があります。一連の流れを記録することで、モニタリング完了となります。
居宅介護支援のアセスメントとモニタリングに関する記録は、契約期間はもちろん、契約が終了しモニタリングが終了していても、2年間は保存する義務があるとても重要な記録でもあります。
ケアマネには素直に何でも話してOK!
モニタリングがケアマネにとって重要であることはご理解いただけましたでしょうか。
では月1回ケアマネが訪問してきたときに何を話したらいいでしょうか?
答えとしては、そのとき感じていることを、素直にすべてお伝えいただければと思います。
例えば、次のようなことが挙げられます。
- デイサービスのお迎えの時間を調整してもらいたい
- ヘルパーさんにこんなことをお願いしたい
- 訪問看護師さんにこんなことを聞いてみたい
- デイサービスの●●さんはすごく親身になってお話を聞いてくれる、ヘルパーさんのこんな気遣いがうれしい
- リハビリをしてくれる人の声掛けで元気がでる
- これからのお金のことが気になっている
- 最近できた楽しみ
介護サービスのことだけでなく、利用者やご家族の今の状況や、経済的な心配事など、何でも相談していただいて良いのです。
介護保険とは一見関係ないような内容でも、ケアマネはその方の生活を支えるために、自身でできる範囲で協力することを仕事としています。
さまざまな話を聞いたうえで、そこにどんな課題があるのか、その課題を解決するためにはどのような資源が必要なのかを検討し、提案するのです。
ケアマネだけで対応が難しい場合は、地域包括支援センターなどとも協力しながら課題の解決にあたっていきます。本人やご家族の望む場所での生活を支えるためには、モニタリングのときにどのような生活を送っているのかお話いただくことが必要です。
もし、ご自身で意思疎通が難しい方は、ご家族からその方の今までの生活について確認を行いながら、もし本人が意思を表明できたならこんなふうに言うのではないか、こんな選択をするのではないかと皆で考えながらその方の生活を支えていきます。
ただ、ケアマネは万能ではないことも大きなポイントです。
そんな相談をできるのがケアマネなのです。ぜひ素直に相談できるようケアマネを信頼していただければと思います。