老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことを指しています。
ここでいう高齢者とは65歳以上の方を指しており、高齢の夫婦や親子、兄弟などのどちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となるケースとなります。
今回は老老介護の意味や老老介護をしていくうえで必要なことなどについてご説明させて頂きます。
老老介護の現状
老老介護をしている方はいったいどれくらいいるのでしょうか?
2023年7月、厚生労働省の「2022(令和4)年国民生活基礎調査」により、同居して介護する世帯のうち、介護を高齢者が担う「老老介護」を行っている割合が63.5%を占めることが明らかになりました。これにより、調査が始まって以来、はじめて「老老介護」の割合が6割を超したことになります。
さらに、介護する側もされる側も75歳以上の後期高齢者同士である場合の割合も35.7%であり、前回の調査(33.1%)より2.6ポイント上昇しています。団塊の世代が75歳を迎える2025年には、後期高齢者の割合が全人口の約18%となりますので、さらに「老老介護」の割合は増えていく見込みです。
老老介護が起きる要因としては、次のようなことが考えられます。
- 平均寿命が延び、介護を必要とする期間が長くなっている
- 核家族化により同居家族が減少し、高齢者夫婦のみで介護をすることになる
- 施設への入所を希望してもなかなか実現できない
身近に若い世代の家族がいなかったり、施設への入所を希望してもなかなか実現できないなどの状況が考えられるかと思います。
老老介護の課題とは
老老介護の課題は、体力面、精神面の両方で介護者を追い込んでしまう点にあると考えられます。
例えば、身体介護は日常生活全般に必要なものですが、特に食事や排せつ・入浴、移動・移乗の介助は非常に頻度が高いため、介護を担う高齢者の方の体力を消耗することになります。
また、要介護者の状態によっては一日中介助が必要なこともあり、介護者が休息や睡眠を十分にとることができない可能性も考えられます。
さらに、介護は子育てなどとは異なり、終わりの見えない状況が続きます。しかも、介護に追われて外出や人と会話する機会が減少し、ストレスを発散する場すらなくなってしまう可能性もあります。
そして、そんな老老介護を行ううちに、いつしか介護者の健康にも悪影響があることも少なくありません。老老介護では、介護者自身に疾患や持病があることも多いのですが、自身の体調が優れなくても、「介護があるから」と受診を先延ばしにしたり、自身の必要な薬を飲み忘れたり、通院を中断してしまうケースも多く見受けられます。
うまく介護できていれば良いのですが、非常に危うい橋の上を歩いている状況が続くことになります。
老老介護で活用できるサービス
介護認定された方であれば、介護保険の制度を活用しながら、介護負担を最大限減らすようにしていくように考えることが必要です。しかし、介護保険はあくまでも介護を受けられる方のサービスになるので、介護者の負担を軽減することはできません。そこで、介護保険外のサービスを知ることがポイントになります。
私の勤務する町田市を例に挙げると、要介護認定の方がいる世帯向けに次のような支援事業を行っています。
各項目で利用できる条件は異なりますが、例えば②については、対象者が65歳以上のひとり暮らしまたは高齢者世帯で、要介護1~5の認定を受けている方を介護される方になります。介護している方が調理がどうしても苦手な場合は、この制度を活用することにより最大で週5食まで利用可能となっています。
また、そのほかに介護認定の有無にかかわらず、次のような事業もあります。
私自身も以前③寝具乾燥消毒事業を利用したことがあります。この事業は失禁などにより寝具の清潔が保てない方に対し、快適な生活を続けていただくため、寝具の乾燥・消毒又は丸洗いを行う事業です。
寝具の洗濯は大仕事です。利用者の使用している敷き布団・掛け布団・毛布各1枚を対象に、乾燥・消毒を年6回、丸洗いを年1回行ってくれるので、老老介護をされている方にとってはメリットが大きいのではないでしょうか。
町田市を例に挙げていますが、このような事業は各市区町村でもあるので、ぜひお住まいの市区町村の窓口や包括支援センター、担当しているケアマネージャーさんに聞いてみてください。
まとめ
老老介護にネガティブな印象を受けられる方が多いかもしれませんが、避けて通れないことも事実です。今後日本では、2070年には総人口の約39%にあたる約3500万人が65歳以上となると推計されています。
日本における少子高齢化の動きは今後も継続されていくことから、老老介護は今後増加していくと考えられます。老老介護だけではなく、介護による離職やヤングケアラーなど、さまざまな課題が増えていくかもしれません。
私たちもいつ老老介護をすることになるのかわかりません。そのときになって困らないためにも、事前の備え、介護が必要になったときの相談場所をあらかじめ確認しておくことが大切です。
また、介護が必要になったときにどのような生活をしたいか元気なうちに考えておくと、いざ老老介護に直面したときに困らないかもしれません。
ぜひ皆さんもお元気なうちにできる備えを少しづつ検討され、最初の一歩は簡単なもので良いので、行動に移してみてください。
