異食とは、食べ物ではない物を口にしてしまう行為で、認知症の方にみられる行動の一つです。認知症ではない人にとっては理解の難しい症状と言えるでしょう。
そこで今回は、認知症の方が異食をしてしまう理由と防止策、そしてそれでも異食してしまったときの対応方法についてお話します。
異食をしてしまう原因
そもそも、認知症の方はどうして異食してしまうのでしょうか。
それは、認知機能の低下により食べられないものを「食べ物である」と誤認してしまうことに起因します。
異食をしてしまいやすいケースには大きく2つあります。1つはお腹が空いているケース、もう1つは他にすることがなく、食事に意識がいきやすくなっているケースです。
①お腹が空いている
お腹が空くこと自体は誰にでもあります。ですが、認知症の場合は、満腹中枢がうまく機能しなくなるため、いくら食べても満足できず、通常よりも空腹を感じやすいと言われています。そして、空腹感がある中で手に取る物が食べる物かどうかを正しく認識できないため、食べ物ではない物も口にしてしまうのです。
②食事以外にすることがない
お腹が空いていない場合でも、他者とのかかわりやすることがないと食事に頭がいきやすくなります。
この流れがわかると、異食をしないためにできることがわかります。目につき、手の届く範囲の場所に口にすると危ない物を置かないようにするか、場合によっては鍵のかかる場所に収納することも必要なことです。
異食を防ぐには?
認知症の方が食べ物ではない物を口にしていたら、どんな物であっても止めようとするかもしれません。しかし、止めることによって認知症の方への対応が難しくなることがあります。
そのため、口にしている物が健康上害がないのであれば、黙認することも対応の一つです。
また、声をかける理由がなくても一言で良いので何度も声をかけ、気にかけていることを伝えます。そして、何かしないといけないことや好きなことをしてもらえる時間をつくって他のことにも目がいくようにするのです。
異食してしまうと危険なもの
どんなに気をつけていても、異食が起きてしまうことはあります。そこで最後に、異食が起きたときの対応について危険の内容に分けて考えていきます。
のどに詰まってしまい窒息の危険性がある次のような物には注意が必要です。
- ティッシュ
- トイレットペーパー
- ハンカチ
- おしぼりなど
これらの物を口にしているのを見かけたら、すぐに口の中を確認し、急ぎ取り除くことが必要です。
また、食道や消化器を傷める危険がある物は以下の通りです。
- ボタン電池
- 画びょう
- 釘
- ホッチキスなど
生命にかかわるまで至ることは少ないですが、放置すると危険です。疑わしいようであれば、レントゲン検査をして確認することが必要です。
そして、殺虫剤や漂白剤などは中毒症状を起こす可能性があるので、これらは事前対策として先に書いた鍵のかかる場所に保管しておくことで防ぐことができます。
なお上記に当てはまらない物や判断に迷う場合、財団法人日本中毒センターの中毒110番(電話072-727-2499)で、24時間365日対応しているので問い合わせると良いでしょう。